なめろう発祥の地・南房総千倉で味わう地産地消。創業明治2年「大徳家」を訪ねて

2016.02.03 更新

なめろうと言えば、千葉・房総の郷土料理ですが、今や全国どこでも食すことができる一品。そのシンプルな調理方法から、料理サイトでも多数のレシピが紹介され、もはや家庭の味になりつつあります。でも考えたら、本場のなめろうを食べたことがない…。ということで、明治2(1869)年創業、5代にわたり南房総の食文化を継承する「大徳家」さんに伺いました。

大徳家外観
▲漁師町・南房総千倉で140余年。創業明治2年の「大徳家」。歴史を感じる店構え

豪快な漁師料理、なめろう

そもそも「なめろう」は、上総・安房(今の千葉県南部)の漁師さんが獲れたての鮮魚を不安定な船上で調理するために考えられたと言われています。それが「皿をなめるほど旨い」ことから「なめろう」と名づけられたのだとか。
「今から140年以上前、その漁師料理を初めてお店でふるまったと言われているのが大徳家です」とは、5代目大徳家店主、栗原和之さん。創業当時から伝わる伝統的な料理法の「なめろう」は、今でも店の一番人気です。真アジ、真イワシなどその日に獲れた新鮮な地魚を使った「なめろう」、伝統の料理法を見せていただきました。
大徳家内観
▲「料理法と言ってもいたってシンプル。味噌と薬味を入れて粘りがでるまで叩くだけ」と大将
なめろう材料
▲まずはおろした真アジを粗く刻みます
材料を刻む
▲そこに刻み生姜とシソの葉、ネギとお味噌をのせて。お味噌はどんなものでもOKだそう
材料を叩く
▲ここからが本番。とにかく粘りがでるまで叩くべし叩くべし!早くて包丁が見えない…
材料を叩く
▲だんだんと包丁が重くなってくるそう。それでもまだまだ叩きます
なめろう、まな板
▲最後はまな板にへばりつくほどの粘りが。包丁でこそげとってお皿にのせます
なめろうできあがり
▲彩りに菜の花を添えて!皿に盛った時の美しさも大切な要素

なめらかで粘り気たっぷり!濃厚な旨み

なめろう
待ちに待った本場の「なめろう」(1,000円・税抜)。一口食べてみるとすごい粘り!そして濃厚な旨み。いつも食べている味と全く違います。「アジのたたきに味噌を入れるだけなら、それは味噌和え」と大将。一番の違いはやはり叩き方なのだそう。まだ旨みが出ていない鮮魚を、これでもかと叩くことで、強制的に旨みを引き出す。細かく刻むのが目的ではなく、粘りが出るまで叩いたものがなめろうなのです。
「よく皿までなめるからなめろうと言いますが、それは粘りが強く皿にこびりついてしまうから」。なめたいほど旨い、のほかになめないと食べられないという意味も込められていたんですね。
なめろう
▲まずはそのまま。一口食べただけで、口の中に広がる旨みと粘り。素材が新鮮なので臭みは一切ありません
なめろう
▲次にお醤油をつけて。叩くことで塩の浸透圧をあげ、やや強引に旨みを引き出す。科学的にも納得の調理法なのでした
なめろう
▲お酢をつけて。生酢をつける「酢なめろう」は勝浦以北の食べ方なのだとか。お醤油やお酢をたすことで、味の変化が楽しめます
お酒
▲濃厚な味に合うのはやっぱり日本酒…。というわけで一献。お魚料理に合うようにと造られた大徳家オリジナルラベル(1合700円・税抜)。スッキリとした味わいです

つづいての郷土料理、さんが焼

さんが焼
▲さんが焼(1,200円・税抜)
千葉の古い方言には、「○○の家」のことを、「○○が」という訛りがあるそう。
したがって「さんが」というのは「山の家」という意味なんだそうです。つまり「なめろう」を山の家で食べられるようアワビの殻につめて蒸し焼きにしたのが「さんが焼」の始まりと言われています。こちらはどんなお味でしょうか。
さんが焼
▲ネタは「なめろう」と同じ。叩き終えた「なめろう」をシソを敷いたアワビの殻につめて焼くだけ
さんが焼
▲見た目は鶏肉のように淡白に見えますが、中には旨みがぎっしり。何もつけずにいただいても、十分すぎるほど深い味わい
さんが焼
▲材料は同じなのに、また違った風味と味。お酒が進みます…(手酌)

黒アワビ、鯨、マンボウ!地産地消の味を丸ごと

千倉は、黒潮の流れ込む栄養豊富な漁場。南房総の豊富な魚介類が集まっています。「もともとこのあたりは、手漕ぎ舟で東京湾を渡り農産物や海産物を江戸へ届けていた歴史のある土地柄。今でも東京から遠い千葉県南部を上総、陸でつながっている北部を下総と言うのは、房総半島の方が海路で江戸に近かったからなんです」。アジやイワシはもちろん、上等な黒アワビ、運が良ければマンボウや鯨も味わうことができます。
アワビ
▲千倉ブランドの黒アワビは赤ちゃんの顔くらいの大きさ!浅瀬で獲れる分、身が厚いのが特長。磯の香りがたまらない…。天然アワビ姿づくり(100gあたり1,800円・税抜)
鯨味噌和え
▲運よく鯨も堪能!和田浦漁港の調査捕鯨で獲れたツチクジラを酒蒸しし、甘みそで味をつけた鯨の味噌和え。白髪ネギをたっぷりのせて。旨すぎる!(1,000円・税抜)
鯨刺身
鯨刺身
▲鯨のお刺身。こちらはシャリシャリと凍ったままルイべでいただきます。馬刺しのような赤身は、溶けかけをいただくのが通(1,200円・税抜)
寿司
▲本日のメインディッシュ、おまかせ握り(カニ汁付き)。天然ブリ、アナゴ、地アジ、カンパチなど新鮮なネタを地元米と「大徳家」の井戸水で炊いたシャリでいただきます(3,000円・税抜)
寿司
寿司
▲獲れたものをすぐにふるまうから“早(はや)寿司”と言うのだそう。厚焼き玉子は、創業当時の味そのまま
千倉には日本で唯一料理の神様をまつる「高家(たかべ)神社」があり、平安時代の宮中行事を再現した包丁と箸のみで魚をさばく「庖丁式」には、多くの料理関係者が訪れるそう。舌の肥えた人が集まる土地柄なだけに、発展した食文化が根付き花開いたのですね。
たかべ神社の絵
▲高家神社の包丁式の図。宮司さんも店を訪れるそうです。お参りしたら料理がうまくなるかも!?

伝統の味を守り、伝え、繋いでいくこと

実は栗原さん、南房総なめろう研究会の会長さん。南房総なめろう研究会は、南房総の郷土料理である「なめろう」と「さんが焼」を全国へ広めるために2009年に発足し、30軒以上の飲食店や宿泊施設が参加して合同キャンペーンやレシピ開発に取り組んでいます。
大徳家店主・栗原さん
▲会長は、なめろう発祥の「大徳家」店主である栗原さんに、と白羽の矢がたったのだそう
なめろう
▲会員は同じ調理法で「なめろう」を作り、そのうえで独自にアレンジ。伝統を守るだけでなく、発展させていくための活動を続けています
「南房総は魚介類だけでなく、水産加工品や農産物の宝庫。地産地消ならぬ、千葉県産ならではの千産千消で、訪れた人を笑顔にしたい」と思いを語ってくれた栗原さん。地のものをその地で食べるからこその新鮮な美味しさ、たっぷりと堪能しました。

最後に、一足早く春が訪れる南房総で、とっておきの一品をいただきました。
菜の花の寿司
▲春の訪れを告げる菜の花の握りをサービスで。思わず笑顔(^^)
平間美樹

平間美樹

某広告代理店で情報誌・Webサイト等の広告企画・制作を経て独立。現在、企画制作会社CLINK(クリンク)を運営し、結婚・進学・就職・旅行など幅広い分野で企画・ライティング活動中。テニス・フラ・猫にハマる日々。 テニス観戦でグランドスラムを達成するのが目下の目標。

※本記事の情報は取材時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。最新の情報は直接取材先へお問い合わせください。
また、本記事に記載されている写真や本文の無断転載・無断使用を禁止いたします。
PAGE TOP