能登の名物和菓子、三角山の「おだまき」さん

2016.02.04 更新

石川県能登地方に伝わる「おだまき」は、表面に糸の束のように均等なスジが入った郷土の銘菓です。昭和39(1964)年創業の和菓子司「たにぐち」の「おだまき」は、郷土の味に新しい時代の味をプラスし、地元の定番商品となっています。郷土の和菓子を一躍ヒット商品にした名店のこだわりと、色彩豊かな「おだまき」が誕生した秘話を取材してきました。

▲5種類の「おだまき」。真ん中から時計回りに、粒あん、いちじく餡、よもぎ餡、くるみ味噌餡、能登栗餡(秋限定) 1個120円(税込)

手作りのぬくもりが伝わる佇まいと愛らしい色合い

並ぶとまるでひな壇のような華やかさも漂う「おだまき」。最初に「おだまき」を誰が作ったのかは歴史的資料がないため不明だそうですが、旧志雄町(しおまち)では昔から各家庭で作られ親しまれていた餅菓子でした。

「たにぐち」の先代は、この土地らしい和菓子として「おだまき」に着目し、当店の看板商品へと育てあげます。

これぞ元祖の「おだまき」はほんのり甘いもちもちの白い生地が特徴で、中には甘さ控えめのつぶ餡がたっぷりと入っています。噛むほどに甘みが滲んでくる生地は、餅粉ではなく能登コシヒカリ100%の米粉で作られており、これを一口食べれば、昔から地元の人に親しまれ愛されてきた風味が伝わってきます。
▲ひとつひとつ手作り。先代から続く白い生地の「粒あん」は不動の人気です
▲中にはたっぷりのつぶ餡が入ります

いちじく餡の「おだまき」の誕生が「おだまき」の歴史を変えた!

受け継いだ「おだまき」に、新しい時代の味をプラスしたのは二代目の谷口義則(たにぐちよしのり)さん。能登らしさを意識して生み出した「おだまき」のお味は、粒あん、いちじく餡、よもぎ餡、くるみ味噌餡の定番4種類と季節限定1種類の常時5種類。

元来はつぶ餡の入った白色のものだけでしたが、お祝いごとや年末年始の御菓子としても人気が根付いていた「おだまき」に新風を吹き込んだのは、2005年の押水町(おしみずまち)と志雄町の2町合併がきっかけでした。

地元の新聞記者から合併記念の御菓子を作れないかと依頼された谷口さんは、最初は断っていたものの、あまりに粘り強く来る記者にある日「隣の押水町の特産品はいちじくだから、いちじく味の『おだまき』でも作ればいいんか」と半ばなげやりに答えたところ、明日までにぜひ作ってほしいと言われてしまい、しぶしぶいちじく餡の「おだまき」を制作。「紅白になると縁起もいいかな」と生地はピンクに仕上げたといいます。

新聞で発表した紅白の「おだまき」は百貨店からも声がかかる程の大反響を呼び、「おだまき」の売り上げは一気に5倍に。限定商品だった紅白の「おだまき」はお客さんの希望に応えるようにレギュラー商品となりました。
▲アイデアマンの店主・谷口さん

いちじく餡のお味は和菓子ながらもフルーティーで、いちじくの深い甘みが口に広がります。日本茶だけでなく、紅茶やハーブティーにも合い、懐かしい味ながらも新鮮な味わいです。
▲フルーティーないちじく餡の「おだまき」 1個120円(税込)

次々生まれたふるさとの味

いちじく餡の「おだまき」の人気を受け、その後も土地の食材を使った新しい味を試行錯誤しながら作っていった谷口さん。よもぎ入りの生地、黒米生地にくるみ味噌餡入り、柚子や栗など季節の果物などを使った餡入りと、あっという間にオリジナル「おだまき」を生み出し、5種類を揃えました。
▲弾力がありながら歯切れのいい米粉の生地は、どの餡にも邪魔することなく豊かな風味が広がります

「ずっと一色だけの名物だった『おだまき』に新しさを加味してゆくのは楽しかったですね。5色並ぶと金沢の五色生菓子みたいで見た目にも華やいでいいですよね」。

生地によもぎの入ったつぶ餡入りの「おだまき」は、食べたとたん口いっぱいによもぎの香りが広がり、生地からもしっかりと和の味わいが楽しめます。
▲よもぎがたっぷり練り込まれた米粉生地に包まれるつぶ餡

珍しいお味は、黒米入りの生地にくるみ入りの味噌餡が入った「くるみ味噌餡」。美しい赤紫の生地はコクがあり、絶妙な甘辛さのくるみ味噌餡にはくるみがたっぷりと粒で入っています。
▲赤紫が美しい黒米入り生地の「くるみ味噌餡」1個120円(税込)

甘辛さのあとにはつぶ餡が食べたいな…といくつも頬張ってしまうのも、5種類のテイストの魅力。季節によって限定で登場する能登栗(秋)、金沢柚子(冬)、さくら(春)、苺(春)、冷やしずんだ(夏)にもその時期必ず味わいたい季節の味が詰まっています。

「おだまき」の名前の由来

昔、志雄町には「ちょま」という草が沢山生えていました。ちょまの茎からは麻糸ができるため、鎌倉時代にはちょまから糸をたくさんつくって束にして、家の軒先にぶら下げていたといいます。その糸の束を巻いたものを「おだまき」と呼ぶようになり、その形を真似た御菓子として「おだまき」が生まれ、いつしか郷土菓子として親しまれるようになりました。
▲ひとつずつ手で分けた餅を「千筋板(せんすじばん)」に押しあてて麻糸のようなスジをつけながらのばしていきます
▲店内に絶えず並ぶ「おだまき」5種
▲「おだまき」の三角形と谷口の名前がデザインされたロゴが目をひきます

お盆もお正月も休みなし。いつでも食べてもらえるようにと年中無休、売り切れたらすぐに追加を作りだすという徹底した提供の心で、いつでも会いにいける美味しさを守ってくれています。

ここへ来たら必ず会えるふるさとの味は、帰省したらその足で買いにくる方も多く、地元の人々にとっては変わらぬ味で迎えてくれる優しい和菓子でもあるのです。能登に来たら迷わず味わってほしい「おだまき」。能登のやさしさをお土産にしたい人にもぜひおすすめです。
中乃波木

中乃波木

東京に生まれ、幼少期はインドネシア、芦屋と移り住む。13歳の夏に母と二人で能登に移住したことから能登の原風景に魅了される。美大卒業後、広告制作会社amanaに入社。アシスタントを経て独立後2007年に写真集「Noto」を出版(FOIL刊)。2010年より季刊誌「能登」にてフォトエッセイ大波小波を連載中。写真家としての活動を軸にイラストレーター、ライター、ムービーカメラマンとしても活動している。(編集/株式会社くらしさ)

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