自分でも作れる伝統「津軽こぎん刺し」を体験!暮らしの知恵がおしゃれアイテムに

2016.02.18

女性を中心に人気が高まっている「津軽こぎん刺し」。女性向け通販サイトではさまざまな手芸キットが販売されているほか、あの「ほぼ日手帳」でも取り扱われ話題を呼んでいます。そんな「津軽こぎん刺し」を、発祥の地・青森県弘前市で体験し、その歴史に触れてきました。

▲さまざまなグッズが販売され人気が高まっている「津軽こぎん刺し」グッズ

「津軽こぎん刺し」とは?

「津軽こぎん刺し」とは、布に絵を描くように刺しゅうする刺し子技法の一つ。その歴史は古く、津軽地方に伝わる「モドコ(津軽弁の「基っこ」が起源)」と呼ばれる幾何学紋様が描かれるのが特徴で、主に寒い冬の防寒と補強のための刺繍として使われていました。近年では雑貨や小物にも使われるようになっています。

弘前市では、物産店や道の駅といった店舗でこの「津軽こぎん刺し」を気軽に購入することができます。代官町にある雑貨店「green」では、おしゃれなアイテムの一つとして、「津軽こぎん刺し」が豊富にそろっていました。
▲店内の中心に並べられる「津軽こぎん刺し」の小物
▲8アイテム、7パターンの色をそろえている「green」。しおり486円、印鑑ケース2,484円、ピンブローチ972円、ブックカバー5,400円(すべて税込)

「津軽こぎん刺し」のルーツを探る

「津軽こぎん刺し」のルーツは津軽の気候風土にあります。寒冷地のため木綿の栽培に不向きだった津軽地方では農民に木綿の着用が禁止され、農民は木綿の代わりに入手できた麻布で、この地の長く厳しい冬を越す必要がありました。木綿の糸であれば手に入ったため、目が粗く保温力が低い麻布の目を埋めるように糸を刺し、保温力と強度を補うように工夫したのが「津軽こぎん刺し」の始まりです。

この厳しい生活の中から生まれた知恵と工夫に、「女性ならではの美しさを見せたい」という気持ちが合わさり、その技術を競いあうように「津軽こぎん刺し」が発展していきました。
▲「津軽こぎん刺し」が刺繍された麻布のハンテンのレプリカ

今でも「津軽こぎん刺し」は、農業といった本業をもつ女性たちの副業や生活の合間の内職として作られていると話すのは、「弘前こぎん研究所」の成田貞治さん。
▲弘前こぎん研究所の成田貞治さん

研究所では「津軽こぎん刺し」の伝承を目的に、その歴史の研究や商品づくりを行っています。現在70人ほどの刺し子さんがそれぞれのペースで主に自宅などで作業を行い、一つずつ手作業で刺しているといいます。
▲刺し子さんの作業の様子
▲弘前こぎん研究所で購入できるグッズの一部。ブックカバー2,700円、ポーチ2,808円、印鑑ケース1,944円(すべて税込)

一針一針に集中。津軽こぎん刺しを体験!

見て楽しむほか、市内では「津軽こぎん刺し」の刺し子体験ができる場所が何カ所もあり、最近では県外からも観光客が体験に訪れるケースが多くなっているといいます。そこで今回は、百石(ひゃっこく)町にある手芸店「しまや」で体験をしてきました。

弘前は手芸店が多いと解説するのは、店長の横島卓児さん。農家の多い青森では、農閑期となる冬の間に家の中で「津軽こぎん刺し」のような手芸を内職として行う需要が今でも背景にあるようです。
▲地元のお店らしく充実した津軽こぎん刺しのコーナーがある「しまや」
▲飾られてある図案は地元の作家が作ったという基礎模様

今回作るのは、「津軽こぎん刺し」で作られたくるみボタン。所要時間は約1時間。こんなかわいいくるみボタンが自分でも実際に作れるのだろうか。不安だ。
▲くるみボタン

体験は、布と糸の色、図案を選ぶことから始まりました。一番簡単で一番迷う作業かもしれません。伝統的な色の組み合わせを選ぶか、意外性のある組み合わせを選ぶか…。とても悩ましい。隣の人がどういうものを選ぶのかも気になってしまいます。
▲布と糸を選ぶことができるのも「津軽こぎん刺し」の楽しみ
▲初心者でも丁寧にレクチャーしてもらえます

一針目をどこに置くかの説明が始まりました。布の伸びの方向を見て、布の中心となる場所を決め、布目の数を数えて…。意外と難しい。さっそく刺す方向を間違えてしまいましたが、やり直しができるとのことで一安心。修正を施し、再スタートです。
▲一針目からいきなり間違える…

「一針目を刺せればこっちのもんだ」と思ったものの、そう上手くはいきません。図案と手元を何度も見比べ、頭の中で「いち、に、さん」と繰り返します。布目を数えながら、タテ糸を一・三・五と奇数にひろって織り目に刺していくのが「津軽こぎん刺し」。ゆっくりと一針一針進めていきます。
▲すこしずつ出来上がっていく

半分以上刺すと柄が浮かび上がってきました。図案と手元をにらめっこしなくても次に刺す場所もなんとなくわかるようになり、ようやく余裕も生まれてきました。

そんな余裕ができるようになった頃には完成。小さな図案だけど最後の一針を刺す時のやり遂げた感は大きく、もうすでに愛おしい私の初めての作品。そして出来上がったものをボタンプレス機にセットし、黙々と作業していた体を解放するように力を込めてレバーを押すと、くるみボタンになりました!
▲「ガシャン!!」と勢い良く押し込みボタンプレス!
▲完成したマイくるみボタン

見本と比べると荒さが目立ちますがそれも愛嬌。とにかくかわいい自分の刺した「津軽こぎん刺し」。完成したくるみボタンはゴムやリボンを付けて、髪飾りや手帳のバンド、ピンを付ければブローチにもなります。1時間弱の体験でも、「津軽こぎん刺し」の奥深さと一針一針出来上がっていく楽しさにすっかりはまり、体験後も頭の中では布目を静かに数え続けていました。

スタバにも津軽こぎん刺し?

刺し子による保温や補強の必要がなくなった現代でも、しおりや名刺入れなど日常の中にあるさまざまなシーンに彩りを与える「津軽こぎん刺し」。地元では授業で「津軽こぎん刺し」を体験させる学校もあり、その手仕事は地元の人にとっては身近な存在なのです。
▲弘前市内の地面のこぎん刺しの模様。日常の空間にも「津軽こぎん刺し」がある(弘前駅前の広場)

また、スターバックスコーヒーが2015年4月にオープンさせた「弘前公園前店」には、「津軽こぎん刺し」があしらわれたソファが置かれ、歴史ある建物と見事に調和した美しい店内が話題となっています。
▲スターバックスコーヒー弘前公園前店
▲「津軽こぎん刺し」が使われたソファがならぶ店内

「津軽こぎん刺し」は、今も津軽地方で形を変えて受け継がれ、生活の中に残っていました。この一針一針が、見知らぬ人の生活の中で刺されたものだと想像すると、その人たちの生活や受け継がれてきた伝統を感じます。

身に着けたりインテリアとして飾ったりするだけでなく、実際に自分で刺して作る楽しみもある「津軽こぎん刺し」。生地や糸の色、そして模様のパターンを変えると、その数、何百、何千種類。自分好みの逸品を見つけに弘前へ訪れてみるだけでも、価値はあるかもしれません。
くどうたける

くどうたける

東京でウェブライターを経験し、2012年に青森へ移住。地域新聞や地域の情報を発信するお仕事をいただきながら、田舎でせっせと暮らしてます。(編集/株式会社くらしさ)

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