松江の名店「川京」で「宍道湖七珍」を食す!

2016.02.25 更新

宍道湖(しんじこ)は島根県東北部に位置する、全国で7番目に大きな湖です。海水と淡水が混ざり合う汽水湖で、季節ごとに海水の混じり方が異なり、多様な生態系を生み出します。地元松江では、宍道湖で獲れる特徴的な魚介類を「宍道湖七珍(しんじこしっちん)」と親しみを込めて呼び、多くの人に食べられています。

▲早朝、あちこちでシジミ漁が始まる

宍道湖を代表する七つの味覚「宍道湖七珍」

宍道湖は島根県の観光名所のひとつで、絶景の夕日は「日本の夕日百選」に登録されています。そんな宍道湖、実はグルメの宝庫でもあるのです。
▲宍道湖の夕日。手前に浮かぶ嫁ヶ島が幻想的

中でも宍道湖のシジミは漁獲量全国一位を誇ります。島根県人にとって「シジミ汁」は食卓に頻繁に登場する家庭の味です。大粒の宍道湖産シジミは「大和(やまと)シジミ」としてブランド化されており、ぷりぷりの身を味わうことができます。

シジミの他にも豊富な魚介類が獲れますが、宍道湖を代表する七つの味覚、スズキ、モロゲエビ、ウナギ、アマサギ、シラウオ、コイ、シジミを「宍道湖七珍」といいます。地元の人は頭の文字をとって「スモウアシコシ」と覚えます。これを知っていれば島根ツウ!

宍道湖七珍の創作和食が楽しめるお店「川京」

島根に来たら、ぜひ味わって頂きたい「宍道湖七珍」。しかしながら貴重なため、食べられる店は限られています。今回は、味はもちろん雰囲気もオススメの松江の老舗「川京」をご紹介します!
▲通り掛かったら思わず足を止めてしまう、味のある外観

松江城から徒歩8分、老舗の和菓子屋や旅館などが点在するエリアに店を構えて46年目の「川京」。地元の常連さんに親しまれていそうな雰囲気が、外観からも漂います。
▲店の軒先に「宍道湖七珍」料理の手書き看板が

「川京」の名物は「宍道湖七珍」料理。季節によって食べられる品目が違いますが、一年を通して提供しているので「郷土料理が楽しめる」店として観光客にも人気です。

店に入ると、威勢の良い声でご主人と女将さんが迎えてくれました。カウンター15席のみの昔ながらの雰囲気。この日は開店時間から予約客で「本日の受付終了」の看板が出ていました。
▲「鰻のタタキ」など聞き慣れないメニューの札が掛かっており、興味をそそられる

「おまかせ郷土料理コース」で宍道湖七珍をじっくり堪能

注文する前に「宍道湖七珍を食べに来たのですが…」と切り出すと、「おまかせ郷土料理コースB」(税抜3,980円)を勧められました。「宍道湖七珍」を含む松江の郷土料理が順序よく、ちょうど良いペースで出てくるというご主人オススメのコースです。

つきだしで山陰名物「板わかめ」の炙りが出てきました。(枝豆・ホタルイカの干物付き)山陰出身者には懐かしの味です。
「板わかめ」とは、わかめを水洗いして板状に干したもの。パリパリとした食感でそのまま食べられます。おやつとして食べたり、ご飯に混ぜてもおいしいです。

そして次に出てきたのがこちら。身がたっぷりの松葉ガニと、アワビのような食感が特徴的な赤バイ貝です。こんな大きなバイ貝は生まれて初めてで感動しました。
▲冬のこの時期でないと食べられない組み合わせ

お次はいよいよ「宍道湖七珍」のひとつ、ウナギ料理。「川京」のご主人が開店当初に考案した創作料理「鰻のタタキ」です。白焼きにしたウナギを細かくたたき、ニンニク、生姜、トンブリなどの薬味で秘伝の味付けをした逸品。ウナギの旨みとマッチして箸が止まらなくなる美味しさで日本酒にも良く合います!これを目的に店を訪れるファンが全国にいるのだとか。
▲「川京」名物のひとつ、鰻のタタキ

「宍道湖七珍」2品目は「おたすけシジミ」。ぷりぷりのシジミにとろみのある出汁がかかった、五臓六腑に染み渡る優しい味。品名の「おたすけ」とは、シジミに含まれるオルニチンが肝臓を助けることから来ているとか。出汁は最後の雑炊のために取っておきます。
▲「おたすけシジミ」山陰の正月の味「赤貝(サルボウガイ)」も入っている

次に日本海で獲れた旬の魚、サザエなどのお刺身がやってきます。日本海と宍道湖、両方の味覚を堪能できるなんて贅沢です。
▲イモガツオに島根・津和野産のゆず胡椒を添えて

島根の地酒や、宍道湖にちなんだカクテルも一緒に楽しむ

コース料理紹介の途中ですが、ここで「川京」のもう一つの自慢をご紹介。それは島根の地酒です。島根県全域の地酒が10種類以上取り揃えてあります。
隣の席に座っていた東京からの観光客の女性も、好みの地酒が見つかったようで「明日、お土産に買って帰ります」と、上機嫌でした。

一方、お酒が飲めない方にはこちらがオススメ。「宍道湖の夕日カクテル(税抜500円)」。宍道湖の夕日のような淡いオレンジ色のノンアルコールカクテルです。
▲味と色が3回変わる楽しいカクテル

松江藩士が愛した粋な逸品「すずきの奉書焼き」

「宍道湖七珍」3品目は松江の代表的な郷土料理「すずきの奉書(ほうしょ)焼き」。奉書(ほうしょ)とは、奉書紙(和紙)のことで、その名の通り、すずきを和紙で包んで蒸し焼きにした料理です。
▲お皿からはみ出すほど大きなすずきの奉書焼き

ここで「川京」の名物ともいえるご主人のパフォーマンスが始まりました!「すずきの奉書焼き」の誕生秘話を、拡声器を使ってお客さんに説明してくれます。
▲なぜか拡声器でしゃべるご主人は外国人観光客のために英語も練習しているのだとか

気になる「すずきの奉書焼き」の誕生秘話はこちら。

江戸時代、7代目の松江藩主・松平治郷(通称:不昧公)が宍道湖のほとりを通り掛かったところ、漁師たちがなにやら美味しそうなものを食べているではありませんか。

お殿様が「わしもそれを所望したい」と言うと、漁師は「いえいえ、これはたき火にすずきを投げ入れたもの。灰のついたままお殿様に差し上げるのは滅相もございません」と言う。そこでお殿様のお供の者が気を利かせて、さっと懐から奉書紙を取り出し、それですずきを包み、漁師たちがたき火で焼いて献上したのが「すずきの奉書焼き」のはじまりです。
▲ふっくらとしたすずき。自家製のタレにつけていただく

奉書紙で包むことで、すずきのクセが取れてうま味が残るのだとか。身がふっくらしていて、感動のおいしさ。ぽん酢風味の自家製タレに、もみじおろしとネギたっぷりでいただきます。

宍道湖産すずきは市場に出回ることが少なく、ほとんど地元の人しか食べない正真正銘の郷土料理。すずきは「出世魚(しゅっせうお)」なので、地元では結婚式などお祝い事の席で縁起を担いで食べる文化があります。

アットホームな雰囲気の中、お客さん同士の会話もはずむ

「すずきの奉書焼き」のパフォーマンスで、すっかり和やかな雰囲気になった店内。こぢんまりした店内なので、初対面のお客さん同士で会話がはずみました。新しい出会いは旅の醍醐味のひとつ!観光客を楽しませたいという、ご主人の心意気が嬉しいですね。

そして「宍道湖七珍」4品目。いまの時期、「川京」でいただける七珍は4品なので、この日の最後は、高級魚でもある宍道湖産シラウオの天ぷら。シラウオの旬は2~4月と短いので、食べたい方はこの時期を狙ってください。
▲シラウオとセリの天ぷら。ふわふわのシラウオがサックサクの衣に包まれています

そしてシメの一品には、先に登場した「おたすけシジミ」の出汁を使った「シジミ雑炊」。ほっこりと温まって食事が終了しました。食べ終わった後も、女将さん自家製のお漬物でお茶を飲みながら、居合わせた他のお客さんとおしゃべりに花が咲き、気付いたら3時間半も経っていました!

馴染みの常連さんから、外国人観光客にまで幅広く愛され、親しまれている「川京」。予約をして、じっくりゆっくり松江の郷土料理を楽しんでみませんか。素敵な女将さんと、面白いご主人との触れ合いも心に残ります。
▲七品揃った宍道湖七珍料理。お品書きに決まりはなく、店ごとに創意工夫されている(写真提供:公益社団法人島根県観光連盟)
賣豆紀有加里

賣豆紀有加里

島根県在住のグラフィックデザイナー。島根県の観光情報サイト、フリーペーパーなどでライターも務める。山陰のおいしいもの・楽しいこと・素敵な場所を発掘するのが趣味。(編集/株式会社くらしさ)

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