「甲州みそ」を伝える老舗の“発酵兄妹”から味噌づくりを教わる!
味噌は、昔はどの家庭でも“手前味噌”として手づくりされていたもの。この手前味噌文化や食を通した交流を広めていくために、山梨県甲府市にある創業明治元年の「五味醤油」の若き後継ぎ兄妹が、蔵の敷地内に食の体験スペース「KANENTE(カネンテ)」を2016年2月にオープンさせました。意外と簡単に、しかもほとんど手ぶらでできてしまうという味噌づくりを体験してみました。

そもそも甲州味噌ってどんな味噌?
狭い盆地で斜面が多く米の収穫が少なかった甲府では、麦を裏作として育てることで米麹と麦麹を合わせて味噌をつくるようになったと言われています。

甲州味噌の味は、さっぱりした関東や東北の米味噌に似ていて、そこに九州の麦味噌の甘みがミックスされてしつこくないのにまろやかという印象。甲府の郷土食にほうとうがありますが、このほうとうのベースになっているのが実は甲州味噌なんです。
甲州味噌造りを体験!

「KANENTE」という名前は、建物の建つ地元の金手自治会に由来します。甲府のまちに根ざして発展していくようにという意味を込めて命名したそう。

「KANENTE」では、エプロンと三角巾(帽子)さえあれば手ぶらで来てお味噌がつくれてしまいます。
「昔はどの家庭でも手づくりされていたので、実は失敗もほとんどなく味噌はつくれます。『KANENTE』での味噌づくりは材料も全部用意していて、煮大豆に麹と塩を混ぜるだけなんですよ」と洋子さん。
混ぜるだけ?本当にそんな簡単にできてしまうのか、早速つくってみたいと思います。
その前に日本各地の味噌の種類や、原材料の話など“発酵兄妹”から簡単なレクチャー。兄妹の息のあった掛け合いで場も和みます。

それではいざ味噌づくりスタート!まず、用意されたボウルに2種類の麹を入れてよくほぐしていきます。細かく砕くと麹のとてもいい香りがしてきます。よくほぐれたら、今度はボウルに塩を入れてよく混ぜます。


両手の手のひらで擦るように麹を砕き、全体的に麹と塩が一体になるようにしていくのがポイントだそう。麹をずっと触っていると手がしっとりとしてきました。独特な触り心地です。ここまでが下準備。
自分で味噌を仕込む時には、大豆を煮てすりつぶすという作業が一番始めにありますが、「KANENTE」での味噌づくりでは、その工程をあらかじめ事前にしてくれています。

麹と塩を混ぜたボウルに煮大豆を入れ、手でつぶしながら混ぜていきます。塩麹と大豆を混ぜる時は、手のひらの下の部分で押しつぶすように混ぜて今度はそれをお団子にします。味噌玉にするのは容器に入れる際に空気を抜いて詰めるため。

たくさんの味噌玉ができました。ここまできたら、もう終盤です。麹の仕込みから、ここまでで大体30分ほど。
続いて、できた味噌玉を保存容器の底に「えいっ!」と投げつけていきます。ほんとうに投げつけるんですよ。ここでも空気ができるだけ入らないようにするために、めいっぱい投げつけるそう。



参加者のみなさんと会話したり、夢中になっていたら50分ほどであっという間に仕込むことができました。ほんとにこねて混ぜるだけ。下準備がされているからこそですね。
といっても、できあがるのはまだこれから先。仕込んだ保存容器は持ち帰ってなるべく温度変化のない冷暗所で保管します。甲州みそは半年以上じっくり寝かせて赤味噌にして完成です。そう、味噌づくりには待つ楽しみもあるんです。

味噌を仕込んでいる間、“発酵兄妹”のアドバイスや食や地域の面白い話もあり、参加者同士の会話がうまれるきっかけにもなっていました。仲のよい友人同士、お一人での参加の方もいましたが、終始和やかな共同作業ができました。最後はみんなでお茶やコーヒーを飲みながら世間話に花が咲きました。
「KANENTE」では10:30~、14:00~、19:00~の1日3回の手前味噌づくり教室を随時開催しています。平日の夜、仕事帰りに味噌づくりというスタイルがもしかしたら定着していくかもしれません。
食のワークショップスペース「KANENTE」(五味醤油株式会社)
山梨県甲府市城東1-15-10
[ワークショップ開催時間]10:30~12:00、14:00~15:30、19:00~20:30(要予約)
※ホームページのワークショップカレンダーをご参照ください。
[定休日]不定休
055-233-3661
味噌屋だからこそできる役目
これまでは、呼ばれれば県外まで味噌づくりワークショップをしに出向いていた2人ですが、実際に味噌をつくっている場所に来てもらうことも必要だと考えるようになったと言います。

「味噌屋で味噌を買うのは敷居が高いと感じている人が実際多いんです。だったら味噌屋に来るきっかけの敷居を低くしようと考えたんです」と仁さん。
さらに次のようななんとも潔い答えが!
「麹も五味醤油で造って販売していますが、味噌屋や麹屋が必要ないくらい世の中に自家製が広がればそれはすごいことですよね。そうなったら潔く歴史に幕を閉じます」

“発酵兄妹”が手前味噌や昔ながらの発酵を通した暮らしの営みを伝え発信しているのは、味噌屋の自分たちだからこそできることで、味噌や発酵の文化を、世代を越えて伝え守っていきたいと思っているからでした。

食べるものを自分でつくることで、今までなかった“食や食文化への感心”が生まれてくるかもしれません。特に発酵食品には「待つ」という時間の経過が、できた時の喜びに拍車をかけます。
皆さんも気軽に味噌づくりやこれから企画される食の体験をしに、「KANENTE」に来てみませんか? Let's 手前味噌!

土屋誠
山梨の人や暮らしを伝えるフリーマガジン『BEEK』編集長、アートディレクター。山梨を拠点に、編集やデザインで地域やモノゴトを伝える仕事をしています。本屋さんが好きなので、休みができたらもっぱら本屋に出没。2児の父としても奮闘中。(編集/株式会社くらしさ)
また、本記事に記載されている写真や本文の無断転載・無断使用を禁止いたします。
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