酸味と甘みのバランス抜群の苺、「女峰」のイタリアンフルコースを堪能。パスタやお肉とも相性バッチリ!

2016.02.08

日本中で甘味の強い苺が増えるなか、「酸味」を大切にした珍しい品種「女峰(にょほう)」。後口が良く、お菓子作りや料理にも向くと評判の「女峰」を全品に使ったコース料理を出すレストランが香川県小豆島にあると聞き訪ねました。それはパスタともお肉とも相性抜群でした!

訪ねたお店は、瀬戸内海に浮かぶ「小豆島」のイタリアンレストラン「Ristrante FURYU(リストランテ フリュウ)」。東京や兵庫のイタリアンレストランで経験を積んだ山形県出身の渋谷信人シェフが、イタリアン食材に恵まれた島「小豆島」に移住し、2011年の夏にお店をオープンさせました。
▲生産者に寄り添い、食材の美味しさの可能性を広げる渋谷信人シェフ。気さくな人柄で話も弾みます

使う食材のほとんどは小豆島で生まれたもの。今回取材した苺「女峰」のほか、オリーブやアスパラなどの農家に加え、漁師や養豚家など小豆島の生産者に寄り添い、食材の良さを活かす料理を作って食材の可能性を広げています。

2月に提供する「女峰」のコース料理(前日までに予約)は、まさに「FURYU」らしい試み。
▲「女峰」コースの料理例(左から前菜、メイン、パスタ)

生まれて初めて体験する美味しさ。女峰のフルコースをいただきます!

取材時に出していただいた料理は「女峰とかんきつ 魚介のマリネ」、「女峰とモッツァレラの冷製カッペリーニ」、「オリーブ牛ロースト 女峰のソース」の3品。「通常のコースメニューには、苺の使い方として代表的なデザートも出しています」と渋谷さん。

苺を生のまま使う「マリネ」はギリギリ想像できるけれど、「パスタ+苺」や「牛肉+苺」の味は全く想像できません。

それでは早速未知の料理をいただきます。まずは出される順番に準じて「女峰とかんきつ 魚介のマリネ」から。旬の高級貝「タイラギ」と「ハリイカ」をグリルし、苺「女峰」と柑橘「スイートスプリング(温州と八朔の交配品種)」と有機野菜を合わせた一品です。
▲前菜の「女峰とかんきつ 魚介のマリネ」。旬のタイラギとハリイカ、スイートスプリングに、カブ、ディルとイタリアンパセリを添えて

全ての食材がプリッとした心地よい食感。口に入れると柑橘と女峰もプチプチッ!ジュワッ!と弾け、あえたオリーブオイルと合わさりながら、酸味と甘み、爽やかで柔らかさのあるソースとなり、タイラギやハリイカの品のあるうまみにアクセントを与えてくれます。

続いてパスタへ。優しい味わいで、苺がパスタやチーズと合います。
▲女峰とモッツァレラの冷製カッペリーニ

「『苺ミルク』が定番なだけあって、乳製品と苺は相性が良いんですよ。さらに『女峰』は酸味も甘みも旨みがあってトマトと近いんです。パスタではトマトソースが定番なので、そう考えると苺とパスタも相性が良いというのもわかりやすいですよね」と渋谷シェフ。

なるほど!トマトと同じ考えならイメージがぐっと広がります。白と赤の色合いもきれいです。

最後にメインの「オリーブ牛ロースト 女峰のソース」。
▲オリーブの果肉を混ぜた飼料を食べて育った「オリーブ牛」に、「女峰」のソースをかけて

女峰が口の中でトロッジュワッと広がり、「オリーブ牛」を包み込みます。煮詰めて濃厚になった女峰の甘みと酸味は、オリーブ牛の深い味わいとバランスが良く、味に立体感を与えます。

「お肉に苺を合わせるのはイタリアでは定番です。他にもフォアグラに添えたり。日本でも苺を加熱した苺ジャムは定番ですよね。加熱することによって香りも立ち、トロリとした食感になるんです」と渋谷シェフは話します。

こんなに苺がいろんな料理に使えるとは…。

こういったコース料理にまで展開できるのは「女峰」だからだと渋谷さんはいいます。「酸味があるので食材とバランスを取りやすい。それにつぶれにくいので生のまま使えば形が綺麗で、加熱をすれば柔らかくなる。とても使い勝手の良い食材です」
▲酸味と甘みのバランスが良い「女峰」。形も色もきれい

食材と向き合いながら今日の仕上がりを決めていく

せっかくなので調理中の厨房にもお邪魔させていただくことにしました。女峰を切ってフライパンで炒め、オリーブオイルやバルサミコ酢を入れてさらに加熱。「オリーブ牛」のローストにかける苺ソースづくりです。
▲苺を炒めると、厨房中に甘い香りが広がる
▲苺とオリーブオイル、バルサミコ酢を合わせ、ブレンダーにかけたパスタソースが絶品
▲切った苺やスイートスプリングの味見をしては、「今日は甘味が強いなぁ」と、合わせる食材や味付けを決めていく渋谷シェフ

実は、年中通して「FURYU」にはメニューがありません。デザートやコーヒー、魚や肉料理を足すかを伺う程度。「オープンからずっとシェフのお任せのみよね」とシェフの奥さんが笑います。それもそのはず。食材は自然の中でできるもの。その時々で食材の生産状況も味わいも変わります。当日の料理は、当日入る食材と向き合わないことには始まらないのです。


小豆島産いちご「女峰」のフルコース
[提供期間]2016年2月5日(金)~3月1日(火)

<ランチ> 税込2,800円
・女峰のサングリア(食前酒orノンアルコールドリンク)
・オリーブ牛ローストビーフと女峰とバルサミコのサラダ仕立て
・女峰とモッツァレラの冷製カッペリーニ
・女峰のセミフレッド
・自家製パン
・食後のお飲み物

<ディナー> 税込5,400円
・女峰のサングリア(食前酒orノンアルコールドリンク)
・女峰とかんきつ 魚介のマリネ
・女峰とモッツァレラの冷製カッペリーニ
・オリーブ牛ロースト 女峰のソース
・女峰のセミフレッドとクレープシュゼット
・自家製パン
・食後のお飲み物

※コース内容は多少変更になることもありますのでご了承ください。

30年かけて格段に美味しく、大きく、美しくなった貴重な苺「女峰」

この酸味がある品種「女峰」のほとんどが香川県産。今回は小豆島で「女峰」を栽培する生産者を訪ねました。
▲「小豆島いちご部会」に所属し、「女峰」を育てる藤原充浩さん

「小豆島と豊島から出荷する苺は『女峰』のみ。小豆島では『女峰』が品種登録された30年前からずっと育て続けています。『女峰』は栃木出身の品種で、かつては西の『とよのか』東の『女峰』と呼ばれるくらい東日本中心に全国各地で育てられていた品種でした。しかし、当時の『女峰』は今よりさらに酸味が強く、小さく、形がいびつになりがちだったため、全国の苺農家は『女峰』をやめて『甘く、大きく、収穫量の多い』地域ブランドの苺を各地で作るようになりました」と苺農家の藤原さんは教えてくれます。

「女峰」は今では全国シェアわずか1%程度だそう。小豆島と豊島では、あえてみんながやめていく「女峰」がより美味しくなるように研究し続けてきたといいます。
▲ミツバチがせっせと働いて受粉させている

「『女峰』は果肉が固く傷みにくいという、島から出荷するという点ではありがたい特徴があるんです。30年前に小豆島で苺栽培が始まった時、様々な品種を栽培したなかでその特徴がある『女峰』でいくと決断し、翌年からは『女峰』のみ育てています」

以来、農業試験場やJA、大学の先生の力を借りながら栽培方法を改良し続けてきたそう。そして、今では「小豆島いちご部会」の生産者は全員が「高設栽培」という栽培方法をとっています。
▲「高設栽培」は高い位置からイチゴがぶら下がっているので「空中栽培」とも呼ばれる

この方法だと実が土と接触しないため、衛生的で、傷みもでません。また、実の表も裏も日光が当たり、完熟出荷をしやすくなったと藤原さんは話します。さらに、温度、日照、二酸化炭素などを計る、いろんなセンサーがビニールハウス内に設置され、コンピュータで制御し、苺の生育にとって最適な環境を作り出していました。

聞けば聞くほど出てくるこだわり。

「かつて女峰を育てていた人が僕たちの『女峰』を見ると『女峰とは思えん』と驚きますよ。『女峰』のように酸味と甘みのバランスを大切にした品種は珍しいですし、先ほどお伝えした通り果肉が固く、傷みにくいので流通しやすい。果形も色も綺麗なので、取り扱いたいという要望が増えていて、今は生産が追いついていない状態です」
▲葉をとり、摘花、摘果をして、美味しく、大きく、より甘い苺にしていく

酸味と甘味のバランスが良い「女峰」ですが、なかでも「FURYU」で「女峰」のコース料理を出す2月は特に旨みが強いそう。

「寒いとゆっくり育つので甘みが強くなります。甘みと酸味が合わさることで旨みが強くなって、味わい深い苺になります」

そう言って渡してくれた「女峰」を筆者もパクり。確かに味が濃く、適度な酸味があるので後口もすっきり。これは美味しい!と笑みがこぼれます。
「女峰」のフルコースは、小豆島の苺農家の真面目な取り組みと、料理に合いやすい品種選び、そしてその良さを生かす料理人あってこそ。

「『女峰』のコース料理は、これまで『小豆島いちご部会』のみなさんだけに特別に出していましたが、『こんな使い方があったとは!美味しい!』と生産者さんが喜んでくれて、要望に応えてこの2月から初めてお店のメニューとして出すんですよ。特に2月は海もキラキラとしてきれいなんです。きれいな景色を眺めながら、小豆島の美味しさを楽しんでほしいですね」と、渋谷シェフ。
苺「女峰」の美味しさと景色の良さを楽しみに、ぜひ小豆島へ!
黒島慶子

黒島慶子

醤油とオリーブオイルのソムリエ&Webとグラフィックのデザイナー。小豆島の醤油のまちに生まれ、蔵人たちと共に育つ。20歳のときに体温が伝わる醤油を造る職人に惚れ込み、小豆島を拠点に全国の蔵人を訪ね続けては、さまざまな人やコトを結びつけ続けている。 (編集/株式会社くらしさ)

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