青森「煮干しラーメン」・元祖の店から注目の進化系まで食べ歩きの旅

2016.03.31 更新

日本全国、様々なラーメンがありますが、本州の最北端・青森には意外と知られていないご当地ラーメンがあります。それは「煮干しラーメン」。近年、煮干し独特の風味にハマる「ニボラー」や「にぼ中毒」といった人種が現れるほど、注目されつつある「煮干しラーメン」を調べてきました。

「煮干しラーメン」の元祖、「濃厚煮干し系」を確立した「たかはし中華そば店」

青森県でも、弘前市を中心とした津軽エリアは「津軽ラーメン」と呼ばれる「煮干しラーメン」激戦区です。その代表格はなんといっても「たかはし中華そば店」。
▲「たかはし中華そば店」の中華そば 税込650円

麺は中太のちぢれ麺が使われており、スープは見ての通り煮干しの粉末が見え隠れするほど濁っています。煮干しをメインに4~5時間も煮込むというスープに麺を絡ませて勢いよくすすると、煮干しの独特な風味が味覚を強烈に刺激します。
▲煮干しの粉末が浮かぶスープ

「たかはし中華そば店」は、平日の昼時でもほぼ満席になるという人気ぶり。弘前市内はもちろん、青森県内だけでなく県外からの観光客も郊外にあるこのお店を訪れます。津軽エリアにはここで修行して独立したラーメン店も多いようです。
▲たかはし中華そば店。この距離からすでに煮干しの香りが漂う

また、「たかはし中華そば店」は「激にぼラーメン」という煮干しの味と香りを強く押し出した「濃厚煮干し系」を確立したラーメン店でもあります。

魚介系スープで「激にぼ」の金字塔とも呼ばれる「たかはし中華そば店」は、支店を出さないというポリシーがあるため系列店はありませんが、「たかはし系」と呼ばれる類似店が現れるほどその人気は絶大。

青森に来たのであれば、「たかはし」の煮干しラーメンは一度経験すべき価値のあるラーメンです。

女性に人気のラーメン店「緑屋」

地元女性「ニボラー」に人気のラーメン店といえば、弘前の城東地区にある「緑屋」。食堂を開いていた祖父の代から製法をほぼ変えていないという「手打ちラーメン」は「煮干し」がベースで「鶏ガラ」や「豚骨」などの出汁がバランスよく引き出された逸品です。
▲「緑屋」の手打ちラーメン 税込700円

あっさりしていてそれでいて深みのある味わいのこのラーメン。女性に人気の理由は、自身も女性である店長が、女性好みの味づくりや店づくりを手掛けているから。店長の阿部知子さんは小さいころから看板娘として働き、10数年前から厨房に立つようになり、お店を切り盛りしています。
▲「緑屋」店長の阿部知子さん

阿部さんは味を確かめる意味もあり、自分の作る「手打ちラーメン」を毎日実食しているといいます。「自分で毎日食べられるラーメンじゃないと提供できない」と阿部さん。伝統を引き継ぎつつ、女性だからこそのこだわりが人気の理由なのかもしれません。
▲化学調味料はほとんど使わず、昔ながらの製法にもこだわりをみせる

進化する「煮干しラーメン」を提供する「R camp」

青森県では全域にわたって「煮干しラーメン」が主流。と、特徴を挙げるのは弘前市出身でラーメン研究家の石山勇人(はやと)さん。「たかはし中華そば店」を全国で好きなラーメンベスト5圏内にいつも挙げています。津軽エリアを中心に青森県内100店舗以上の「煮干しラーメン」店舗を取材し、食べ歩いた経歴を持ちます。
▲ラーメン評論家の石山勇人さん

「『煮干し』と何かの掛け合わせを謳う進化系がさらに増えていくのでは」と話す石山さんに、新たに注目するお店を紹介してもらいました。弘前市の中心街にあり、店長はアパレル業界から転身して始めたという異色の経歴を持つ「R camp(アール キャンプ)」というお店です。
▲まるでカフェのような外観の「R camp」。のれんがない
▲「R camp」店長の岩渕大樹さん

「R camp」のラーメンの特徴は煮干しと「鶏白湯(とりぱいたん)」の掛け合わせのスープ。まろやかな鶏白湯に煮干しがバランスよく、何回食べてもまた食べたくなるようなクセになる味わい。軟骨を練り混んだ鶏団子や糸唐辛子といったトッピングに進化系の片鱗を感じます。
▲「濃厚鶏白湯煮干ラーメン」 税込750円

鶏白湯と岩渕さんとの出会いは、居酒屋を始めようと勉強するため上京した時のことでした。東京でラーメンの種類の多さに驚いたことがきっかけで、次第にラーメン店を目指すようになり、その過程で「鶏白湯」と出会うことになりました。「誰も作ったことがないようなラーメンにしたかった」と当時を振り返ります。

開業して5年。煮干しを濃くしたり鶏肉を変えたりと、試行錯誤は続いているそう。まだ理想とするラーメンにはたどり着いていないと言いますが、確実に理想に近づいていると力強く語ってくれました。
▲人気メニューの洋風ラーメン「SAKURA」 税込850円。「ラーメンというよりパスタのよう」と女性に人気

なぜ青森に煮干し文化が根付いたのか

石山さんによると、津軽には煮干しではなく「焼き干し」が浸透していたといいます。江戸時代にルーツがあったとされる「津軽そば」の出汁に使われていたというのが、煮干しより強い磯の風味が特徴な「焼き干し」。製法は干したイワシを焼いて香ばしくするというもので、煮干しとの大きな違いは頭と内蔵を丁寧に取り除いているという点だそう。
▲干したイワシの頭と内臓を切り取って焼き上げるという「焼き干し」

津軽そばといえば、つなぎに大豆をすりつぶした呉汁(ごじる)を使うそばの方がクローズアップされることが多いのですが、この「焼き干し」で取る出汁が時代を経てラーメンにも使われるようになったのです。

主流だった「焼き干し」が何をきっかけに煮干しに代わっていったのか…正確な理由は解明されていないようです。昭和30年代に津軽湾でイワシの不漁が続き、「焼き干し」が値上がり、高級食材となったことも原因の一つと言われています。

また、「煮干し」が安く市場に流通し始める時代になりました。一匹一匹丁寧に頭と内臓を職人が取り除く「焼き干し」が安い「煮干し」に代わり、現在では、「焼き干し」だけで提供しているラーメン店は青森県内でも一桁しかないということです。

こうしたさまざまなラーメンを巡るだけでも旅ができそうな津軽エリア。一説によれば一人当たりのラーメン店の数は全国でも常に上位で、消費量も多い青森県。2014年度の総務省の家計調査では、インスタントラーメンの消費量は全国1位だそう。ラーメンを愛する津軽人が足しげく通うからこそラーメン文化が栄えているんですね。
▲各店のスープには津軽ラーメンの歴史が詰まっている。そう感じながら飲み干しました。ごちそうさまでした
くどうたける

くどうたける

東京でウェブライターを経験し、2012年に青森へ移住。地域新聞や地域の情報を発信するお仕事をいただきながら、田舎でせっせと暮らしてます。(編集/株式会社くらしさ)

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