一歩一景を誇る大名庭園「栗林公園」で朝粥を食べながら、花々が咲き誇る庭園を眺める

2016.03.20

香川県高松市にある「栗林(りつりん)公園」は、フランスで最も権威あるガイドブックに「わざわざ訪れる価値のある場所」として最高評価の3つ星に選定された庭園。国の特別名勝に指定されている庭園の中で最大の広さを誇ります。1年を通じて四季折々の花でもてなしてくれるなか、桜が咲く春は花の種類が多くて人気ですが、今回は一足先に梅の咲く季節に訪ねました。

▲栗林公園の一番の眺望ポイント「飛来峰(ひらいほう)」。池、建物、橋などの配置が巧みに計算されている

海外からわざわざ訪ねる価値のある庭園は、心豊かになる壮観な世界!

空気が澄み切った早朝に、高松駅からバスで10分。「栗林公園前」のバス停で降りて「栗林公園」へ。開門時間前に訪ねたら、すでに入り口前で何人も開園を待っていました。一歩足を踏み入れると、江戸時代の大名に会えそうな立派な庭園が目の前に広がり、一瞬にして心が洗われます。

「栗林公園」のメインルートは入り口から南側の「南庭」をめぐるルートで、所要時間の目安は60分。しかし今回は、「朝粥」を食べながら楽しめるという「花園亭(はなぞのてい)」が最初の目的のため、まずは所要時間目安40分の「北庭」から散策します。
▲年中通して花々がバトンタッチしながらもてなしてくれる。1月は梅の花が迎えてくれた
▲園内どこを歩いても見える花や鳥、魚が泳ぐ池。生き生きとした道を歩くと心が豊かになる
▲さりげない植物と建物のバランスが良く、風景のどこを切り取っても絵になる

夏には約1,000株ある蓮の花が湖面を覆う「芙蓉沼」や、江戸時代に鴨猟を行っていたという「群鴨池(ぐんおうち)」、137種、約3,750株の花しょうぶが植えられている「花しょうぶ園」に順々に出会えます。

そんなにたくさんの蓮や花しょうぶがあるの!?と驚きつつ、もっぱらのほほんと散歩。朝日のキラキラとした木漏れ日。バッと一斉に飛び立つ鴨。ヨガをする地元の人。愛しさが湧く一つ一つのシーンに自然と笑顔になります。
▲木漏れ日の中を羽ばたく鴨

いよいよ茶屋「花園亭」へ。離れの優美な茶室「泛花亭」で「朝粥」をいただく

北庭を回って良い運動になったし、お腹が空いた!ということで、「栗林公園」の入り口側にある茶屋「花園亭」に「朝粥」をいただきに。
▲香川県の特産品の販売や、食事を楽しむことができる「花園亭」

この茶屋で食べるのかな?と思いきや、お店の人が「どうぞこちらへ」と、離れの優美な茶室「泛花亭(はんかてい)」にご案内してくれました。中は庭園を一望できる特等席。こんな風光明媚な場所で食べられるなんて!
▲花園亭の離れの茶室「泛花亭」

机の上に並ぶ料理も美しくて一目惚れ。この日(2016年1月12日)は煮しめ、焼き魚、サツマイモの甘煮、蕗の佃煮、お漬物、そして香川県名産「醤油豆」や「和三盆」も添えられています。四季折々の香川の食材を少しずつ楽しませてくれるのが嬉しい。
▲「花園亭」の「朝粥」(税込1,300円)

しばし見とれているとメインの「おかゆ」が出てきました。艶やかに炊かれたおかゆの上に、丁寧に練られた梅肉が添えられています。「桜が咲くシーズンは、桜の花の塩漬けを添えますよ」と、「花園亭」の大谷雄子さんが話してくれました。
▲手前左から時計まわりに、おかゆ、煮しめ、サツマイモの甘煮、焼き魚、しょうゆ豆、蕗の佃煮、和三盆、お漬物
▲「朝粥」のメインのおかゆ。丁寧に練られた梅肉が効き、次の一口が欲しくなる逸品

「朝粥」は茶室で行われる「朝茶事」という由緒正しい茶事

それにしてもなぜ白ごはんでなく「おかゆ」?
聞くと「もともとこの茶室で『朝茶事(あさちゃじ)』という茶会を開き、おかゆを食べていたんです。その様子を見た一般の人から食べたい!と言われることが続いたので、どなたでも食べられるようにしたんです」と大谷さん。

なるほど!由緒正しい茶事だったんですね。ありがたみが増してきます。料理はいずれも滋味深い味わい。食材を重んじる心が伝わってきて、口に運ぶ度に心豊かになります。

「栗林公園は県外からお越しになる人が多いので、香川県の旬の食材を使っています。冷凍のものは一切使いません。桜が咲く時には菜の花や蕗など、その時期にとれる香川の美味しい食材を使っています。通年出すのは『おかゆ』と『醤油豆』と『和三盆』。和三盆は香川県産のさとうきびからできたものです」と大谷さんが教えてくれました。
▲狸の姿が愛くるしい「和三盆」。食後の口直しにいただく

「一歩一景」を誇る大名庭園「栗林公園」の世界は深い!

心ゆくまで「花園亭」で朝粥と景色を楽しんだ後は、「栗林公園」のメインルート「南庭」を巡ります。「栗林公園」の深さを感じるため、私が頼ったのが無料で案内してくれる「ボランティアガイド」。東門でガイドさんがいたら予約していなくても案内してくれますし、いなくても少し待てば案内をし終えたガイドさんが戻ってきます。
▲120人ほどいるというボランティアガイド

もちろんガイドさんがいなくても、園内マップを入り口でもらえ、園内の所々に説明を書いた立て札が置かれているので、目に見えている風景の意味を知ることができますが、ガイドさんに案内してもらうと、より興味深いお話を聞くことができます。

それではいよいよスタート!建物内から景色を眺めるだけでなく、庭の中を歩きながら空間の展開を楽しみます。

歩き始めると早速ガイドさんが「この松は『鶴亀松』と言うんです。松の下にあるのは110個の石を組み合わせて亀の形にしていて、上にある松は鶴が舞っている形に剪定しています」と教えてくれました。
▲「鶴亀松」。下の石は約110個の石を組み合わせて亀を表現し、上の松は羽ばたく鶴を表現している、縁起の良い松

続けて、「この松は江戸時代から手入れされ続けている『箱松』です。箱のような形をしているでしょう」と言われ、「栗林公園の池の色は1色ではなく、青色と緑色が入り混じって表情があるんです。池の中央にある小さな岩。何気なく置かれているように見えますが、この岩も意味があります」と、あますことなく解説をしてくれます。
▲江戸時代から300年以上にわたり手入れをし続けている「箱松」。栗林公園の庭園を毎日10人以上の庭師が手入れをしているそう
▲緑と青のグラデーションが表情を描く。眺めていて飽きることがない栗林公園の池

また、栗林公園にはいろんな例えを彷彿させるユニークな形の石がたくさんあります。それらは、2代藩主頼常公が、貧しい民の救済策として、めずらしい石や木を持ってきた者に食料などを与えたからといわれているんだとか。
▲自然に生まれた石の形を活かしたつくばい。一つの庭園のように見える
▲獅子が後ろを振り向いている姿に似ていることから「見返り獅子」と呼ばれる石も

疲れてきたところで、「掬月亭(きくげつてい)」で小休止。歴代の藩主が使用したといわれる茶室で、お茶菓子やお茶を楽しむことができます。今は香川を代表する料亭「二蝶(にちょう)」が運営しています。
▲「掬月亭」は室内から3方の景色を見渡せる造り
▲歴代の藩主は、池に舟を浮かべて移りゆく庭の風景を楽しんだそう。その藩主が見た景色を今でも楽しむことができる
▲煎茶とさぬき名物の和菓子「献上栗」
ガイドさんにお勧めの季節はいつですかと尋ねると「あらゆる時。春・夏・秋・冬。そして朝でも昼でも夕暮れでも。一瞬一瞬違う絵を描き、楽しませてくれるよ」と深みのある声で教えてくれました。その上で「桜の咲く時期にまた来てください。桜はもちろん、栗林公園のあちらこちらにいろんな花が咲くんです。多くの種類の花を景色と一緒に楽しむことができますよ」と添えてくれました。
▲桜の季節の栗林公園(Photo by坂口祐)
▲栗林公園の桜は、香川の桜の開花を知らせる目安になっているそう(Photo by坂口祐)

16世紀後半から続く庭園は、何度も訪ねてゆったりと過ごすことに価値がある場所でした。なお、「栗林公園」は4~9月までは朝5:30オープン、開園時間が遅い12~2月でも7:00オープン。「花園亭」の朝粥も朝7:00から楽しめるので、香川で過ごす1日を切るスタートにぴったりです。
黒島慶子

黒島慶子

醤油とオリーブオイルのソムリエ&Webとグラフィックのデザイナー。小豆島の醤油のまちに生まれ、蔵人たちと共に育つ。20歳のときに体温が伝わる醤油を造る職人に惚れ込み、小豆島を拠点に全国の蔵人を訪ね続けては、さまざまな人やコトを結びつけ続けている。 (編集/株式会社くらしさ)

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