盛岡「神子田朝市」で食べ歩き。じんわり染みる「ひっつみ」で朝ごはん!

2016.03.24 更新

まだ薄暗い朝から談笑が始まる盛岡市の「神子田(みこだ)朝市」。盛岡近郊の生産者などが集まって、季節の野菜や果物、魚介や乾物類、お惣菜に餅やだんごなどを店先に並べている。おいしい出合いを探しにいつもより早起きして出かけてみた。

▲岩手県の素朴な家庭料理「ひっつみ」を入れた汁(写真提供:小池聡)

朝ごはんにぴったり、ひっつみ汁

まだキリリと冷える早朝5時30分。眠い目をこすりながらも、どこかワクワクしながら訪れた「神子田朝市」。盛岡市近郊の生産者をはじめ、鮮魚店、惣菜店、乾物店、団子屋、コーヒー店、食堂なども出店していて賑わっている。年間300日以上も営業し、最近では観光客にも人気のスポットだ。

お盆や正月の節目、週末などはかなりの賑わいだが平日はとても穏やか。特に冬の間は生鮮野菜も減るため、店主も自分のペースで店を開ける。
▲やたら目立つ「噂のひっつみ」のノボリ(写真提供:小池聡)

着いた時点ですでにお腹はぺこぺこ。起きたばかりの胃袋にやさしい食事を求めていると、「ひっつみ」のノボリが見えてきた!「ひっつみ」とは小麦粉を練って伸ばし湯がいたものをしょうゆ汁で食べる岩手県の伝統料理だ。伸ばした生地を“ひっつめて”汁に入れるので「ひっつみ」と呼ばれるようになったそう。
▲茹であがったばかりの「ひっつみ」(写真提供:小池聡)

そんな岩手県の素朴な家庭料理「ひっつみ」を神子田朝市で食べられるのが「木偶の坊(でくのぼう)」だ。早速、ひっつみ汁を一杯頼んでみる。カウンターの向こうでは、ちょうど真ん丸の小麦粉生地を手早く伸ばして茹でていく最中だった。
▲店主の藤原ハル子さん(左)と、生地作り担当の髙橋仁志さん(右)の2人で切り盛りする(写真提供:小池聡)
▲大きめの油揚げがひっつみ汁の味のきめ手

待つこと数分。茹でたての「ひっつみ」を野菜たっぷりの汁に入れた一杯を出してくれた。具材はニンジンやゴボウを薄くささがきしたものに干しシイタケと油揚げ。
▲朝の胃袋をやさしく目覚めさせてくれる。1杯税込400円(写真提供:小池聡)

肉は入っていないけれど、煮干しで取ったダシと油揚げの香ばしさが味に十分な深みを醸し出している。そして、薄く伸ばした「ひっつみ」はコシがあってもっちりしながらも、決してもったりとせず喉越しがいい。

「二日酔いの人とか通勤時の朝食に立ち寄っていく人も多いですよ」と藤原さん。この優しい笑顔と「いってらっしゃい」の声で見送られるなら、1日を元気に始められそうだ。

ところで、気になっていたのはノボリに記された「噂のひっつみ」という名前。その真相を伺うと「ふふ……」と意味深な返事が。その真相はぜひ現地で!店主とのなにげない会話も神子田朝市の楽しみなのだ。

おいしい珈琲で、キリっと目覚める!

優しい一杯でお腹も温まると、食後のコーヒーが飲みたくなってくる。そんな気持ちを見透かすように、「木偶の坊」の隣にはコーヒー店が!神子田を訪れる人に朝の1杯を差し出す「マドカ珈琲店」だ。
▲紙コップだけど、味わいは本物。1杯税込150円のコーヒーは、深煎りすぎず浅すぎず、程よい加減で、思わず「ほうっ」と深呼吸

「マドカ珈琲店」のコーヒーは買い物客だけでなく、店主たちにとっても心落ち着かせる一杯。コーヒー豆の量り売りもやっているというからお土産にも良いかも。
▲コーヒーの香りに誘われて立ち寄る人が多い。奥にいるのがマスター

「ここは元気なお母さんたちが、一番のウリだから」とマスター。自分はいいから、これを撮りなよと指差したのは「マドカ珈琲店」の看板だ。
▲茶目っ気あふれた看板は、神子田朝市の常連客だったという南部絵馬師・故鐙庵(あぶみあん)さんの作品

「うろばん、じゃないよ」と念を押された通り、これは右から読むのが正解。どこか飄々とした招きネコが愛嬌たっぷり。店のトレードマークだ。

緩やかな会話で、ぶらり歩きの楽しさも増す

お腹もいっぱいになり、持ち帰りの一品を探して巡る。盛岡はリンゴの産地。まだまだ春先までリンゴが並ぶ。「まんず、ほら食べてみて」と勧める盛岡美人のお母さんたちは、朝からとにかく元気だ。
▲60代はまだ若手という店主たち
▲みずみずしくて甘味あふれる盛岡リンゴ。一袋税込150円と、お手頃価格だ

だんごや餅を売る「松月菓子店」。盛岡の串だんごは砂糖が入ったみたらしではなく、生醤油だけで味をつけたシンプルなもの。盛岡の人々は「やっぱりこれでなくちゃ」と口をそろえる。
▲桜もち、ゆべし、しょうゆだんごなど。どれも早朝に作った手づくりのもの
▲しょうゆだんご5本入り 税込220円

盛岡市近郊の「浅沼養鶏場」の新鮮な卵を使った手作りシュークリームと厚焼き玉子が人気の「フレッシュ吉田」さん。
▲温かいメニューもいっぱいの「フレッシュ吉田」
▲人気の厚焼き玉子(税込400円)と手作りシュークリーム(5個入り/税込400円)
▲朝市のあちこちに据えられた薪ストーブ。ここに集まるとお客も店主も自然に会話が弾む
▲毎年3月中旬以降は地元産の野菜も並んで、より賑やかになる

朝市をひと巡りする間に、だいぶ日も昇ってきた。「春のお彼岸の後は採れるものが増えるから、店ももっと賑わうよ」「またおいで」。そんな声に見送られると、早起きして良かったなあと思える。素朴でおいしい盛岡の味と大らかな店主とのやりとりが楽しい「神子田朝市」。盛岡へ観光に来た朝は、ぜひ早起きの幸せをたっぷり味わってほしい。
水野ひろ子

水野ひろ子

岩手県在住フリーライター。行政や企業等の編集物制作に関わる傍ら、有志とともに立ち上げた「まちの編集室」で、ミニコミ誌「てくり」やムック誌の発行をしている。(編集/株式会社くらしさ)

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