ブランド岩牡蠣「春香」はなぜ築地で最高値がつくのか?答えは生産地の綺麗な海にあった!

2016.04.28 更新

ここ数年多くの人で賑わうオイスターバー。中でも人気の岩牡蠣「春香(はるか)」は、間違いのない品質と味が評価され、築地市場では牡蠣の中で最も高値で流通するそう。例えば東京にある「グランド・セントラル・オイスター・バー&レストラン」では、「春香」は1個730円(税別)。他産地の牡蠣は大体450円(税別)から630円(税別)です。そんな「春香」の産地、島根県の隠岐諸島にある中ノ島の「海士町(あまちょう)」では、清らかな海を目の前に、刺身に寿司、フライやグラタンなどで「春香」を堪能することができます。

島根県本土から北へフェリーで3時間余。日本海に浮かぶ隠岐諸島の一つ、中ノ島「海士町」の玄関口「菱浦港(ひしうらこう)」に辿り着きました。魚も喜びそうな美しい海を目の前に、「春香」への期待が膨らみます。

「春香」を食べられるオススメの食事処は、寿司屋「八千代」とレストラン「船渡来流亭(せんとらるてい)」。「八千代」は菱浦港から徒歩8分、「船渡来流亭」は菱浦港にある「キンニャモニャセンター」内と、いずれも食べに行きやすい立地です。

寿司屋「八千代」で「春香」の刺身と寿司に舌鼓

まずは寿司屋「八千代」へ。「春香」が旬の3~6月初めの間は、海士町で採れたばかりの「春香」を“生”で食べることができます。料理が運ばれてきてまず目についたのが牡蠣の刺身。大きな殻に、ぷりんっとした立派な身が乗っています。こんなに堂々たる牡蠣は初めて!一切れずつ自家製タレにつけて、つるりと口の中へ。
▲岩牡蠣「春香」のお刺身(1つ1,000円~・税別)。外面はつるっ、内面はとろりとしている

張りのある身をコリッと噛むと、牡蠣の身が舌の上をとろけていきました。なんて品のある柔らかな味わいでしょう!食べるほどに味が深まっていき、最後にほろ苦さが出てきて、味をまとめあげていきます。口の中で変わりゆく豊かな味わいに感動!

「春香」は私がこれまで味わった牡蠣より表面に張りがあり、洗練された甘みと旨みがあります。クリーミーな舌触りも別格でした。しかも「春香」に添えられている柑橘が効いたタレが、これまた「春香」と相性抜群なんです!
▲お箸で持っているのが「春香」、その右隣が「ヒラメの白子」、さらにその右隣が「シマメイカの肝の醤油漬け」の軍艦巻(いずれも1貫200円・税別)。ほかのネタ含めてどれも最高に美味しかった!

続いて、地元の人が一押しする牡蠣の軍艦巻きを、一口で丸ごとパクリ。なめらかで濃厚な牡蠣が、粒の立ったお米とほぐれあっていきます。クリーミーな食感と品のある甘みがたまりません。この軍艦巻きは「八千代」オリジナル。「春香」を初めて生産し、海士町で試食会をしたときに、八千代の店主が提案したら好評でメニューになったそう。生産者も一押しする絶品です。
▲「八千代」の店主。誇りを持って「春香」を提供している

心もお腹も満たされて大満足した私に、「この島に来たらやっぱり『春香』や。これはもう間違いない」と店主が自慢げに話してくれました。とはいえ海士町で採れた魚を使ったお刺身もお寿司も美味しかった!海士町の海の恵みはすごいですね。

一年中「春香」を採れたての美味しさで出す「船渡来流亭」

そして翌日は「船渡来流亭」へ。こちらでは素材の鮮度を保つ急速冷凍技術を使い、1年を通じて「春香」など海士町の海の幸を楽しませてくれます。
▲「春香」を中心に、様々な海士町の海と山の幸が盛り込まれている「コロニー定食スペシャル」(2,100円・税込)

この日は「春香」をお刺身やカキフライ、グラタンで提供していました。うーん、どれも美味しそう!せっかく海士町に来たのだから!と、結局全て注文(笑)。
▲「春香」が入ったグラタン(1,030円・税込 ※サラダ付)。春香とホワイトソースのとろりとした食感が相性良い

グラタンはホワイトソースのクリーミーさと、「春香」のとろりとした食感が一体となって、舌の上で滑らかにとろけていきます。そして「春香」の上品な苦みがアクセントをつけ、食べ応えのある味わいに。
▲「春香」の海鮮フライ盛り合わせ(1,350円・税込)※牡蠣フライのみの場合、3個で(1,350円・税込)

そして、私が「船渡来流亭」で一番驚いたのは「カキフライ」。クリームコロッケのように、サクッと香ばしく揚がった衣をかじると、サクットロッとした食感と、品のある濃厚な味わいに感動!一気に「春香」が舌の上をとろけました。品のある甘みがじわりじわりと増してきて、深く洗練された味わいに感銘を受けました。

築地で絶大なる信頼を得る、海士町の岩牡蠣

この美味しさの秘訣を知りに、「春香」の生みの親の一人、大脇安則さんを訪ねました。
▲左が「春香」の生みの親の一人、大脇安則さん

「春香」を育てる「海士いわがき生産株式会社」は海士町の入り口「菱浦港」から約10km離れた場所にあります。一段と美しい海の中で「春香」は育まれていますが、この海の美しさこそが、「信頼」を得ている秘訣。

実は牡蠣で“あたる”というのは、海にいる大腸菌やノロウイルスなどの悪い菌を、牡蠣を通じて体内に取り入れてしまうから。人々の生活から離れた「春香」を育てる海は美しいため、毎週1回行う県の検査で引っかかったことは1度もないそう。
▲「春香」の養殖場。なお「春香」は、「安全でおいしい」を兼ね備えた産品を島根県知事が認証する「美味しまね認証」でも認定されている

「春香」という名前で出荷できるのは、隠岐の海域で牡蠣の養殖の許可を得ている範囲内のうち、水質検査の基準(大腸菌群数70/100cc以下)をクリアしている場所でとれたもののみ。さらにノロウイルス、ビブリオ菌、大腸菌、等々が、生食用牡蠣としての衛生基準をクリアし、加えて「海士いわがき生産株式会社」が独自で設けている安全管理、衛生管理基準を満たしているものだけです。

ここまで品質を管理しているため、「春香」は全て“生食用”で出荷しているといいます。通常“生食用”で出荷される牡蠣は、紫外線で殺菌した殺菌海水で過ごした後に出荷されるのですが、「春香」が育つ海はもともと綺麗なため、その工程を踏む必要もありません。さらに、紫外線ではノロウイルスを殺菌できないので、生で牡蠣を食べる時にはやはり育つ海の美しさが重要なのです。
▲「春香」の赤ちゃん。生育状況で分別しながら3年かけて育てていくそう
▲大脇さんたちは海の中のすべての「春香」の生育状況を把握しているそう

しかも、「春香」は全国の岩牡蠣養殖の初事例。そこに安心安全で事故がない実績、そして生産者の人柄が加わり、築地で得た確固たる信頼が「春香」のブランドを作り上げました。平成14年から本格的に出荷し始めてからずっと、牡蠣の中で最も高い値で流通するほど評価を得ているのです。はるばる東京から養殖の様子を見に来る卸売業者や仲卸業者、飲食店の人も後を絶ちません。
▲牡蠣の出荷作業は、海士町に移住するIターン者の受け口にもなっているそう

今回取材をして、「春香」の美味しさは、海士町の美しい自然に感謝して、最高の岩牡蠣を真摯に追求する姿勢から生まれている、そう実感しました。全国のオイスターバーでも食べられる「春香」ですが、海士町で美しい海とあったかい人に触れながら食べると格段に美味しいもの。

海士町の海の美しさや、自然の豊かさ、そして温かな生産者の人柄が凝縮された「春香」をぜひ食べに行ってみてはいかがですか?
黒島慶子

黒島慶子

醤油とオリーブオイルのソムリエ&Webとグラフィックのデザイナー。小豆島の醤油のまちに生まれ、蔵人たちと共に育つ。20歳のときに体温が伝わる醤油を造る職人に惚れ込み、小豆島を拠点に全国の蔵人を訪ね続けては、さまざまな人やコトを結びつけ続けている。 (編集/株式会社くらしさ)

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