湯葉~透けるほどの薄さの中に、積み重ねた歴史と真心を味わう

2016.01.13

薄く美しきもの、その名は湯葉。大陸より海を渡りて一千二百余年。様々な料理文化が育まれてきた京の都で愛され続けてきた食材だ。淡白ながらも奥深い、湯葉の世界へ、いざ。

湯葉の歴史は古い。約1200年前に最澄が中国から仏教・茶・ゆばを持ち帰ったのが起源と言われている。
天台宗・比叡山は延暦寺山麓の坂本に、こんな童歌が残る。
「山の坊さん何食うて暮らす、ゆばの付け焼き(ゆばの蒲焼)、定心坊(お漬物)」…
淡白でくせが無く、他の食材を邪魔しない湯葉は、宮廷料理や精進料理など、どんな料理にも重宝された。
そして現在。高級懐石から庶民のおばんざいまで広く愛される湯葉を、気軽に、そしてディープに味わえるお店を紹介する。

嵐山を街ブラしながら、
味わう湯葉スイーツ

1軒目に紹介するのは、「嵯峨とうふ 稲」。桜や紅葉シーズンには満員電車のような賑わいを見せる嵐山にあり、天龍寺や竹林の道などもほど近い。
観光地だけあって、気軽に食べ歩きができるメニューは大人気。店頭で販売している「湯葉ドーナッツ」(税込200円)は生地にたっぷりの湯葉が練りこんである和スイーツ。しっとりした生地は、ふんわりと大豆の香りが鼻に抜け、食べ飽きしない優しい味だ。
「ゆばソフト」(税込300円)は、宇治抹茶ソフトとのミックスを頂いた。くみあげ湯葉をミキサーにかけ作ったゆばの甘みと、濃厚な抹茶の苦味が絶妙にマッチ。歩き疲れて乾いたのどを潤してくれる。
本格的に湯葉ランチが食べたい!という方は店内にて「手桶くみあげ湯葉御膳」(税込1,620円)を。国産大豆を自社で搾り、お店で手作りするくみ上げ湯葉をたっぷり頂くことができる。
手桶に入った湯葉はほの温かい豆乳をまとい、口にいれた瞬間に濃厚な旨みが広がる。何層にもなった薄い湯葉はシャクシャクとした食感が心地よい。ポン酢とかつお出汁の2種類で楽しめる。
▲湯葉を食べ終えた豆乳には、お好みでポン酢か出汁を入れて、豆乳スープとして味わって
スイーツ片手に嵐山をぶらり歩くもよし、窓際の席で景色を眺めゆるりと湯葉を味わうもよし。観光地にありながら、リーズナブルな価格設定も魅力のお店だ。

湯葉への深き愛ゆえに。
専門店だからこその絶妙食感

続いて紹介するのは、東寺から徒歩10分ほどに店を構える湯葉専門店「湯葉に」。創業明治38年(1905年)、老舗の湯葉専門店だ。
「湯葉に」の湯葉は、専用の土窯の工房で作られる。早朝6時頃~昼過ぎまで、全てが手作業。その日の気温や素材の様子と相談しながら、一枚一枚丁寧にくみ上げさらして行く。
▲昭和の初期から使っているという石窯。燃料におがくずを使う昔ながらのスタイルで、湯煎を全体にまわして加熱している
「私のおじいちゃんが、二三(にぞう)って名前で。だから“湯葉に"の“に"は、にぞうの“に"なんです」。と、工房とお店を切り盛りする三代目の勝田恵美子さん。
幼ない頃より湯葉の工房が遊び場で、おがくずの燃える匂いと、できたて湯葉の甘い香りに包まれて育った勝田さん。創業者である二三さんが食べさせてくれた湯葉の美味しさが、今も湯葉を作り続けている原点になっているそうだ。
「うちの湯葉はどこよりも薄いんよ。だってそのほうが美味しいでしょ」。

料理に合わせて無理に大きくしたりせず、歯応えと旨みがベストに味わえるサイズで湯葉を作るのだそうだ。

これぞ「湯葉 七変化」。
驚きのバリエーションを味わう

運ばれてきたのは「梅御膳」(税込3,200円)。ランチにおススメの気軽なもの、と思いきや、このボリューム!とろみ湯葉、湯葉の天ぷら、湯葉刺身をはじめ、和え物、煮物、吸い物、デザートにいたるまでこれでもか、という湯葉づくし。
サクサクにあがった香ばしい湯葉の天ぷらは、くみ上げた湯葉を整形する際にでた端切れを揚げたもの。
「せっかくこんなに美味しいのに、使わへんのはもったいなくて」とはじめた料理が大好評で、今ではおみやげでも販売している。
シャキシャキの歯ざわりと風味をダイレクトに味わえる湯葉刺し。
豆腐のような白いかたまりは、湯葉を作る行程で出る「ええとこいちばん」。チーズのようでいて、クセのない濃厚な旨みが凝縮している。
〆はピカピカご飯に「湯葉の佃煮」。佃煮といえど、山椒がピリリと効いたさっぱり味。ご飯と共にかみ締めれば、そこはかとない余韻が口の中に広がる。
「始まりと終わりの印象が肝心」と勝田さん。提供される料理の順番も綿密に計算されていて、「湯葉を堪能した」感でいっぱいになった。
薄い皮膜の中にこめられた、歴史と技と愛情。奥深き湯葉の世界、ぜひその舌で確かめてみて。
妙加谷 修久

妙加谷 修久

京都市在住の旅行系ライター兼ディレクター。全国各地に足を運び、旨いモノを食べ、温泉に浸かる日々。ここ京都を中心に、知っているようで知らない「日本のイイトコロ」を紹介します。日本酒好きが高じて利き酒師の資格を取得しました。

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