鉄なべ餃子発祥、バラエティー豊かな「八幡ぎょうざ」を、とくと味わう

2016.04.14 更新

宇都宮、浜松と並び日本三大餃子と言われるのが、北九州市八幡(やはた)の「八幡ぎょうざ」。博多で人気の「鉄なべ」スタイルも、実はココ八幡で生まれたもの。八幡エリアでは、58店舗ある餃子店で色んな種類の餃子が提供されているのです!

日本三大餃子の一つ、「八幡ぎょうざ」とは

1901年(明治34年)に官営八幡製鐵所が誕生し、工業都市として発展した北九州市八幡地区。そこで肉体労働が激しい製鉄マンが好んで食したのが、安くてスタミナたっぷりの料理。「八幡ぎょうざ」もそのうちの一つです。正直言って、宇都宮や浜松と比べ知名度が低い「八幡ぎょうざ」。特徴って何なんでしょう…?
今回はそんな質問にたっぷりお答えいただくべく、八幡ぎょうざ博士、「八幡ぎょうざ協議会」の原田昌憲(まさのり)さんに案内していただきました!
▲お手製の「八幡ぎょうざ帽子」が素敵!原田さんです!
JR八幡駅でお会いするなり、いそいそと「八幡ぎょうざ帽子」をかぶってくださった原田さん。八幡ぎょうざのPR活動をボランティア(!)で行う「八幡ぎょうざ協議会」の方です。(そして、2010年より毎年開催されている「全国餃子サミット」へ八幡ぎょうざ代表として参加する「八幡ぎょうざ協和国」の初代大統領でもあります!)
各地でみられるご当地グルメの協議会ですが、こちらは民間任意団体。だから58ある餃子店も、協議会に加盟しているわけではなく、あくまで協議会が任意で紹介するというスタンス。簡単に言えば、八幡ぎょうざを愛するがゆえに、本当にボランティアで活動している方々です。
…八幡ぎょうざ愛が溢れまくっています。

博士に聞く八幡ぎょうざアレコレ。
八幡ぎょうざの魅力って何ですか?

さて、そんな八幡ぎょうざ愛溢れる原田さん。
「少なくとも北九州では、多分僕が一番餃子食べてますよ」とのこと。
聞けば日本全国の餃子も、有名どころはだいたい食べていらっしゃるとか。その上で、「やっぱり八幡ぎょうざが一番!」と言わしめるその理由は何でしょう…?
▲教えてください!八幡ぎょうざ博士
まずは、鉄なべ餃子の発祥の地であること。
鉄なべに餃子を乗せるスタイルは、八幡西区折尾で1958年(昭和33年)に開業した「やまとぎょうざ 鉄なべ」が発祥なんです(今は「やまとぎょうざ 本店鉄なべ」として黒崎に移転されています)。当時八幡は、鉄鉱石などの原料取引が始まることにより、中国大陸と密な関係が構築されていました。当時の店主・宇久温子(うくはるこ)さんが、中国人が営む中華料理店で餃子を食べてその人気ぶりに感激して。その後日本人の口に合うように試行錯誤を繰り返し、いわゆる家庭料理の餃子を作りました。そして、画家であったお兄さん(桜井啓博氏・さくらいけいはく)が、銀座で鉄板に乗ったスパゲッティを食べたことを温子さんに話し、よりアツアツを食べてもらうために餃子にも鉄板を使用したのが始まり、ということです。

---ほうほう。では、鉄なべはやっぱり八幡製?

かと思えば、そうではないんですよ~。温子さんのご主人が知っていた京都の鋳物屋さんに特注したそうです。当然といえば当然ですが、餃子が乗るサイズの鉄なべが無くて。今と同じ直径18cmの鉄なべ皿を作ってもらったそうですよ。
▲現在の「やまとぎょうざ 本店鉄なべ」の鉄なべ。餃子5個がちょうど一列に入る直径18cmの大きさで作られています
そしてもう一つはバラエティー豊かなこと。
八幡ぎょうざには大きく分けて4つの系統があります。

1.鉄なべ系餃子
アツアツの鉄なべに乗せてそのまま出すスタイルの餃子。

2.中国本土系餃子
鉄なべ餃子のルーツにもなった中国系の餃子。肉厚の皮とジューシーな具が特徴の餃子の総称。

3.ラーメン系餃子
中国本土系餃子から派生した餃子。水の替わりににラーメンなどの豚骨スープを使って焼くスタイル。

4.お母さん系餃子
古くから餃子を食べていた八幡エリアでは、家庭でもたくさんの餃子が作られてきました。そんな家庭で作られているような餃子の総称。

これら4つの系統に加え、手羽餃子やスープ餃子、竹炭を使ったクロ餃子などもあります。

---すごい!これらすべてを総称して「八幡ぎょうざ」なのですか?

そうですね。「八幡ぎょうざ」とは、物資が乏しい戦後の貧しい時代に少ない材料でも美味しく食べられた、いわば庶民派の料理。「鉄なべ餃子」発祥の地として脚光を浴びることも多いのですが、多種多様に進化した餃子すべてが「八幡ぎょうざ」であると思います。

うう~。話を聞くだけでお腹がぐぐ~っと…。
原田さん、早くお店に行きましょう!!

数々の賞を受賞した優しい味わい
お母さん系餃子「ママの餃子」

▲JR八幡駅から車で10分程度。女性好みのおしゃれなお店です
最初に伺ったのは、お母さん系餃子、その名も「ママの餃子」。
餃子専門店とは思えない赤と黒を基調としたおしゃれなお店です。
お店に入ると、笑顔の素敵な藤本さんご夫妻が迎えてくださいました。
優しい笑顔のご夫婦にあたたかみのあるおしゃれな店内…。奥には最大30名が入れる個室もあります。
▲店主である藤本美加さんとご主人。とても仲の良いご夫婦です
▲店内はシックな造り。餃子以外ももちろん楽しめます
▲店内奥にある個室。テレビもあるのでスポーツ観戦などにも○!
実はこちら、お母さん系餃子というほんわかした雰囲気からは想像しがたい輝かしい受賞歴を持つお店。
2010年BQ食KING (小倉BQ食KING実行委員会主催)
→BQ部門グランプリ受賞
2011年八幡ぎょうざ鉄人バトル2011(八幡ぎょうざ協議会主催)
→グランプリ受賞
2011年地元飯バトル(公益社団法人日本青年会議所九州地区主催)
→優勝
店内には賞状やトロフィーが飾られていました。
これは否が応にも期待してしまうというもの!
さっそく焼きぎょうざと手羽ぎょうざをいただきま~す。
▲焼きぎょうざ1人前8個500円(税込)※写真は2人前
まずは焼きぎょうざを!
割と小さめの餃子ですね…ぱくりっ!

…何これ!!甘----い!!
芸人さんのネタのようですが、きっと食べたら言ってしまうハズ。
何ですか、この甘さは!野菜の甘みでしょうか?

「甘いでしょう?子供さんでもパクパク食べられるんですよ」と藤本さん。
中身は挽肉にキャベツ、ニラと少量のしょうがとニンニク。
タレをつけなくても野菜の甘みだけで十分美味しいです!

伺うと、この甘さの秘密は野菜の切り方。キャベツの葉の部分は大きく、芯の部分は細かく千切りに。出来立てが美味しいのはもちろんですが、冷めても野菜の苦みが出ないそうです。

約10年前、従業員の娘さんが家で出された餃子を食べて
「ママ(藤本さん)の餃子が一番おいしい!」と言ってくれたのが店を出したきっかけ。
今では餃子がメインの店として地方発送も行っており、地元の方をはじめ、全国にファンがいる人気店に。

手羽ぎょうざは、丁寧に骨を抜いた手羽肉に餃子の餡がたっぷり!こちらもおすすめです。お土産用の冷凍餃子は21個入1,296円(税込)で、地方発送にも対応してくださいますよ!
▲手羽ぎょうざ1本250円(税込)

ラーメンと一緒に食べるべし!
ラーメン系餃子「福龍ラーメン」

▲中央町商店街の真ん中にあります
次に訪れたのは、ラーメン系餃子の店「福龍ラーメン」。
1965年(昭和40年)創業の老舗ラーメン店です。
驚くのはその価格!ラーメン490円(税込)、餃子は5個230円(税込)というリーズナブルさ。取材に訪れたときは店主である古川さんが、丁寧に丁寧に餃子を仕込んでいらっしゃいました。

餃子は、挽肉を使用するのではなく、肉を包丁切りでミンチに仕上げているのだそう。中の野菜はキャベツ、白菜、ニラ、玉ねぎ、ニンニク、ショウガ。
あっという間にバットにたくさんの餃子がきれいに並びました。
▲バットに美しく並ぶ餃子と笑顔が素敵な古川さん
15時間煮込んだ白濁の豚骨スープでパリッと香ばしく焼き上げます。
焼き上げる時のスープの香りがたまりません!
▲ジュワワ~ッ!香ばしく焼けたスープの香りが、もう…!
「どうぞ!」と出された餃子は香ばしく焼き上げたキツネ色。見た感じはパリッとしていますが、皮のもちもち感もあります!豚骨スープの甘みが皮にしみているようで、皮がもっちりしていてほんのり甘い感じです。古川さん曰く、スープで焼き上げることで香ばしく味に深みがでるのだとか。

こちらの餃子は、しっかりとした濃い味ではなく、主張しすぎない優しい味わい。ちょうどラーメンと一緒に食べるとぴったり、という感じです。
主役のラーメンを立てるような女房役、“良妻”餃子ってところでしょうか。
優しい味わいにほっこり心も和まされます。
▲焼き餃子5個230円(税込)、8個350円(税込)
テーブルにはおろしニンニクやニンニク醤油漬け、辛子高菜などの調味料があるので、アクセントがほしい方は、餃子のタレに入れて食べるのも美味しいですよ。
個人的にはニンニク醤油漬けが好みでした!
▲ニンニク醤油漬けを添えて。醤油にじっくり漬け込んでいるので、あまり臭みはありませんよ

最後は鉄なべ餃子発祥の店
鉄なべ系餃子「やまとぎょうざ 本店鉄なべ」

▲黄色い暖簾と看板が目印
さぁ、最後は「鉄なべ餃子」発祥の「やまとぎょうざ 本店鉄なべ」へ。
店内に足を踏み入れると、U字型にしつらえられた黄色のテーブルが目に入ります。注目すべきは、テーブルの上。鉄なべを置く鉄板があらかじめテーブルに貼られているんです。
▲U字型テーブルの中にキッチンがあります
鉄なべ発祥の歴史は先ほど原田さんに伺った通り。
現在では店主・温子さんの長男である宇久知紀(とものり)さんが、この店を切り盛りしています。餃子が作られる様子は実に見事。ここで働いて20年くらい、というスタッフのお母さんが、丸い飴のような生地を一つ一つ伸ばし、餃子の皮を作り上げていき、その横で、これまた見事な手つきで知紀さんが具を包んでいきます。聞けば1日に1,500個ほど作るそうで、土日は焼き上げだけで忙しく、具を包む時間もないのだとか。
▲みるみるうちに出来上がっていく餃子
▲具は、豚と牛のタタキと豚ミンチ、キャベツ、ニラ、長ネギと小ネギに少しのニンニク。ラードなど動物性油脂は一切使用しません
鉄なべの上に餃子を乗せ、そのままコンロの上に。火をつけ、餃子を焼き上げていきます。
▲コンロにズラリと並ぶ鉄なべ。知紀さんが一つ一つ加減を確かめながら焼き上げていきます
焼きあがったらテーブルの鉄板の上に。テーブルの鉄板には火は入っていないので、触っても大丈夫。鉄なべが冷めにくく、アツアツのまま餃子がいただける嬉しい仕組みです。
▲アツアツの餃子を原田さんと「いただきま~す!」
餃子は、平たく小ぶりで食べやすいサイズ。
…ん~!!これは美味しい~!!
こちらも野菜の甘みがあり、これは1人前ペロリと食べられます。
皮はもっちりと厚めでクセのない優しい味わい。
取材時、隣のお客さんが2人で5人前食べていましたが、なるほど納得!
▲焼餃子10個540円(税込)
知紀さんが「これもおすすめだよ」と言ってくださったのが「スープぎょうざ」540円(税込)。一口スープをすすると、滋味溢れる何とも深い味わい!
トゥルンとした餃子がこれまた合います~。これも美味しい~!
色んな味わいが詰まっているのに、ちゃんと味が一つにまとまっていて、何だか体に染み渡る感じ。二日酔いなどにも効きそうです!

「このスープ、美味しかでしょう?」
と笑う知紀さんがスープの秘密を教えてくださいました。
この魔法のスープ、豚と鶏のガラで炊いたスープに、さらにニンジンや玉ねぎ、大根、ニンニクなどの野菜を加え10時間炊くそう。豚と鶏のガラで煮込んでも白濁しないのは、丁寧に丁寧に灰汁取りをされているからだとか。
スープの深い味わいは、こんな手間暇からでているのですね~。半世紀以上も人気を保ち続ける理由がわかる気がします。
▲スープぎょうざ540円(税込)※餃子6個入り

店名「やまとぎょうざ」に込められた思い

こちらの店名は「やまとぎょうざ 本店鉄なべ」。冠に付けられた「やまとぎょうざ」には何の意味があるのでしょう…?

これには温子さんが「鉄なべ餃子」を作った歴史に理由がありました。
そもそも、中国から来た餃子という食べ物が珍しかった時代。温子さんはこの美味しい食べ物をみんなに食べさせたい!という思いで、日本人の口に合うよう試行錯誤の上、和風の餃子を作り上げます。
時は1958年(昭和33年)、何と関門トンネルの開通、東京タワーの竣工と同じ年でした。戦後の高度成長期の日本において、やまと(=大和)と名付けた温子さん。餃子が日本の家庭の味として定着したのは、温子さんの功績もあるはずだ、と八幡ぎょうざ協議会の原田さんは言います。

今や定番メニューとして食卓に並ぶ餃子。
家族でわいわいと、歓声を上げながらホットプレートで焼いたり、手作りの場合は餡を自分で包んだりするのも楽しさの一つ。餃子は、家族が思わず笑顔になる、楽しく食べる料理です。
日本のあちこちで溢れている、その食卓のあたたかな景色こそが、温子さんの望んでいたものだったのかもしれません。

八幡ぎょうざも、また然り。八幡という地に残る製鉄文化

2015年7月、官営八幡製鐵所関連施設が「明治日本の産業革命遺産」として世界文化遺産に登録されました。名実ともに製鉄の町として広く知られるようになった八幡、最近は観光客も増えたそうです。日本の産業を躍進させてくれた製鉄、そしてその時代があったからこそ生まれた「八幡ぎょうざ」。まだまだ色々な味わいや種類の異なる餃子が、八幡エリアの餃子店で提供されています。そして、いずれの餃子にも根底には「安くて、美味しい」という鉄なべ餃子誕生当時の思いが引き継がれています。ぜひ、一度訪れて色んな餃子を食べ歩いてみてください。

※残念ながら八幡ぎょうざ協議会の原田さんは、2016年3月で協議会を離れていらっしゃいます。
桑野智恵

桑野智恵

フリーの雑誌ディレクター/ライター。福岡生まれ、福岡育ちの博多女。3つの出版社を渡り歩き、雑誌編集歴20年弱。食育アドバイザー、フルーツ&ベジタブルアドバイザー。

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