京都でいただくかき氷/小池隆介のかき氷あっちこっち食べ歩きVol.9

2016.05.13

東京でかき氷を食べ歩くようになってから、帰郷した京都の町で出会ったかき氷はどれも東京とは異なる歴史を感じさせられるものばかりで、そのレベルの高さにずいぶん驚かされた。京都のかき氷は何か違う。東京と違う何かがある。そんな京都のかき氷の魅力をご紹介しようと思う。

▲「祇園 NITI(にち)」の杏仁 1,200円(税込)

老舗から生みだす、新しい美味しさ。
「二條若狭屋 寺町店」

京都には和菓子屋が提供するかき氷が多数ある。京都の町の長い歴史と同様に、京都のかき氷にも長い歴史がある。
和菓子屋さんのかき氷の多くは梅雨が終わる頃に始まり秋のお彼岸の頃に終わるのが一般的で、「冬にかき氷なんてとんでもない」という声も聞こえてくるようだ。そんな中、老舗の和菓子屋で季節の手作りシロップを提供しているという噂が伝わってきたのは2年ほど前のことだ。「二條若狭屋 寺町店」では、歴史をつなげる和菓子屋の若夫婦がかき氷の魅力に魅せられ、気品のある様々なかき氷を提供している。
▲彩雲(さいうん)1,512円(税込)

この店の名物メニューは、四季折々の味を楽しめる5種類のシロップが添えられた「彩雲」というかき氷だ。

添えられるシロップは夏ならスイカやキウイ、冬ならりんごや柚子など果物の旬に伴って移り変わって行く。ふんわり大きく盛られたかき氷だが、一つ一つのシロップを味わったり、二つのシロップを混ぜてみたりと楽しんでいるとあっという間に無くなってゆく。
やがて氷の中からは小さくカットされたフルーツがコロコロと現れ、新鮮なフルーツの食感を味わううちに完食。氷が足りない場合は追加氷も可能だというのが嬉しいではないか。シロップが残ってしまうとものすごくもったいないような気がする、というかき氷好きの気持ちを、よく理解してくれているようで実に嬉しい。

クリスマスの時期にはツリーをイメージした「レアチーズ氷」を提供し、2月にはチョコレートのかき氷を提供。最近ではイベントの時期にかき氷を出すことも珍しくなくなってきたが、「二條若狭屋」の人気の秘密は若女将のこだわりの強さだ。

「いい品が入らなかったので、提供をやめました」「どうしてもこの素材が使いたかったので、無理して入れてもらってます」

若女将が放つ言葉は、一言一言丁寧ななかに強さがある。ここに来てくれた人には本当に美味しいものを食べてもらいたいという強い気持ちが、若女将に妥協を許させないのだろう。
▲寺町ショコラ(冬期限定)1,080円(税込)

そんな若女将の想いが表現されたかき氷の一つが 冬季限定の「寺町ショコラ」だ。
世界中のパティシエに愛されるフランスヴァローナ社のチョコレートをふんだんに使ったチョコレートの氷を削って作る、ここでしか味わえない濃厚なかき氷。器やネーミングにもこころをくばり、特別な人のために用意されたような贅沢なかき氷だ。
▲いちご氷 1,458円(税込)

また、旬のいちごをほぼ1パック使うという「いちご氷」は3月下旬~5月のゴールデンウィークまでの提供で、多くのファンが心待ちにしているかき氷だ。いちごだらけのビジュアルがインパクト大で、写真を見るとどうしても食べたくなってしまう。

京都という町は古い町であると同時に、いつも新しい人が訪れる町でもある。一期一会の人にも、常連の人にも同じご馳走を。若女将のこだわりは、訪れる人皆に気持ちの良い感動を与えてくれるだろう。

祇園の空気に包まれて。「祇園NITI」

祇園の真ん中で天然氷のかき氷を提供している「祇園NITI(にち)」は、おそらく京都で一番最初に天然氷を通年提供したカフェだ(天然氷が入手できない場合は純氷でかき氷を提供)。お茶屋の風情を残す町屋には、静かな大人の空間が用意されている。

今や観光客で年がら年中ごった返す京都市内一番の観光地・祇園。表通りから一筋入ったところに静かに佇むこの店は、夜はバー・昼はかき氷と軽食を提供している。ここに訪れる人はかき氷を味わいに来ると同時に、京都・祇園の本来の空気を味わいたいと思ってやってくる人も少なくない。
隠れ家のような小さな落ち着いた店舗には、粋なしつらえのかき氷機がカウンターの奥に据え置かれていて、カウンターの横にはきれいに整えられたつぼ庭が見える。祇園の雑踏から抜け出して、心地よい空間で落ち着いてかき氷を食べることができるのだ。
▲淡雪(季節の果実・写真は柿)1,200円(税込)

季節の果物を主としたシロップに果物の実を添えた「淡雪」は、あえてあっさりと仕上げ、天然氷を思う存分堪能してもらおうという思惑のかき氷。もう一種類、モンブランやアップルパイのようなケーキをイメージして作り上げるかき氷も提供していて、こちらも季節に合わせてメニューが変わってゆく。
▲モンブラン 1,200円(税込)

祇園から小径に入り、引き戸を開けて入るちょっと身が引き締まるような瞬間と、自分の為に削られてゆくかき氷を眺めている時間が僕は好きだ。大人だけの隠れ家のようで、京都に来たなあ、と実感できる店だと思う。

リサイクルの新しいカタチ。「お茶と酒 たすき」

洗練された町家の並ぶ通りを歩いて行くと、大きな窓から店内の賑わいが垣間見れるひときわ美しい町家が現れる。ここは、自分が使わなくなった大事な品物を、持ち主を開示して次の欲しい人に繋げるという新しいカタチのリサイクルショップ「パスザバトン京都祇園店」だ。

この店に併設された「お茶と酒 たすき」では、富士山の天然氷を使ったかき氷を通年で提供している。かき氷や料理が盛り付けられる食器やグラスもほとんどが一点もののアンティークで、気に入ったものがあればその場で購入が可能という面白いスタイルの飲食店だ。
ガラスが多く使われた店内は、細かく仕切られているが全てを見渡すことができ、窓からは白川の流れや川沿いの木々を眺めることもできる。提供されているかき氷は、抹茶とほうじ茶、それから期間限定の旬のかき氷だ。この店では「お茶を通しておもてなしの心を伝えたい」というコンセプトを掲げ、お茶の選定に関して随分力を入れているということなので、お茶のかき氷を味わってみたい。
▲抹茶みつ 練乳付 1,100円(税込)

運ばれてきたかき氷は薄羽を何層も重ねたようなビジュアルで、美しい盆やおしきに器を重ね、大事に大事に運ばれてきた。この器なのだが、注文した客の雰囲気に合わせて選んで盛り付けるのだという。
「女性は花のように、男性は殿のように。」その人の好きそうな雰囲気を考えながら盛り付けてくれるというのがなんとも嬉しいではないか。お客の顔を見て、その人のためだけにつくってくれる。流れ作業の提供が多い昨今の状況で、目を合わせてその人のことを考えてくれる時間を取ってくれることがこの店のおもてなしのひとつだろう。
▲焙じ茶みつ きな粉練乳付 1,100円(税込)
京都にいったら思い切り「おもてなし」してもらいたい。そんな願いを叶えてくれる3店で、特別なかき氷を楽しんで来てほしいと思う。
小池隆介

小池隆介

かき氷のフードイベント『かき氷コレクション』実行委員会代表。かき氷専門ガイド本『かきごおりすと』の編集・発行者。一般社団法人日本かき氷協会代表。日本中のかき氷を食べ歩いて取材し、日本古来の食文化で伝統食でもあるかき氷を広く伝える為に活動。かき氷にとどまらず、氷雪業(氷の卸しや販売、製造)全体にも精通している。

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