いちばん大阪らしい「うまいもの」、美々卯の「うどんすき」

2016.02.29 更新

登録商標「うどんすき」。魚介や鶏肉、四季折々の野菜を大阪の食の要「ダシ」で食べる。加えて具材によってさらにダシがさらにうまくなって、それをあますところなく「うどん」でいただく。最も大阪らしい食べ物といっても過言でない「うどんすき」を大阪・船場の「美々卯本店」へ食べに行く。

大阪が生んだ偉大な鍋物「うどんすき」

「うどんすき」は昭和5(1930)年、店主の薩摩平太郎、妻キクによって完成した、まことに大阪らしい鍋物だ。
その「うどんすき」の店「美々卯」。船場には大阪ガスビル北西裏の「本店別館」、北御堂西裏の「本町店」とあるが、今回は総本山ともいえる御霊(ごりょう)神社裏の「本店」へ。
近代名建築の大阪ガスビルや御霊神社を見ながら到着。
▲大阪ガスビル
▲御霊神社。この都会の喧噪からひっそり逃れた神社の裏に「美々卯本店」がある
▲お地蔵さんが隣にある本店別館
▲幕末の医師で「適塾」を開いた緒方洪庵ゆかりの地でもある
▲「うどんすき」で有名な「美々卯」だが、元は蕎麦屋だった。その証左か本店には蕎麦のショーウインドウが

さて「うどんすき」。
まず大阪の味覚の肝心要であるダシを徹底的に極める。
まず高知のソウダカツオと北海道の利尻昆布で朝から2時間かけてダシを取る。そこに九州・枕崎のカツオ節で香りを加える。そのためにこのカツオ節は毎朝削る。
▲うどんすき一人前3,500円(税別)

具材は四季折々の海山のうまいもの。「天下の台所・大阪」ならではのフレッシュな食材。種類も豊富だ。
車エビ、ハマグリ、アナゴ、鶏肉、椎茸、里芋、ダイコンなどなど。
アナゴや椎茸はきっちり下ごしらえしている。アクが出て出汁が濁らない配慮だ。
うまいものを最高のダシに入れて食べるのだが、その際いろいろな具材から旨みが出てよりうまくなる。それをうどんに吸わせて食べる。うまいものをさらにうまく、余すところなくいただこうという、まことに大阪らしい発想だ。
▲この季節、オプションの「かき」「蟹」「河内鴨」も追加できる。店長おすすめで蟹(1,020円・税別)と河内鴨(1,520円・税別)を注文
ステンレス製のゴツい専用鍋。直径40センチはあろうか、IHコンロにセットされ、そこに自慢のダシをたっぷり注ぐ。
ダシが煮たってくると、まずうどん。「いきなり」と思うが、このうどんが煮てもコシがなくならないように完璧に計算されてつくられている。
仲居さんがハマグリ、鶏肉、湯葉、アナゴ…と丁寧に鍋に入れてくれる。ちょうど具材の半分だ。
ハマグリや椎茸、アナゴ、湯葉という順番で食べた頃、生きた車エビが塗りの箱に入れられて出てくる。
エビが跳ねないように頭の下を持って、お腹の方からダシに入れてしばし。美味極まれり。

がんもどき、ダイコンもそろそろイケる。
蟹はこのように「しゃぶしゃぶ」。楽しいな、おいしいな。
河内鴨はツクネともにネギとミツバで。うどんすきの「鴨ネギ」バージョンと洒落込んでみる。
さてうどん。ここでさらにネギ、モミジおろし、ショウガの薬味をのせると良い。薬味の具合も完璧でダシを飲みながらうどんを食べる。
ちなみにうどんの追加は無料(実際は初めの量でお腹いっぱいになるのだが)。
▲湯飲みも爪楊枝立ても「うさぎ」が意匠に使われている。気分がほのぼのとする
谷崎潤一郎や藤田嗣治など文人に愛された「うどんすき」。この店のいいところは、昔ながらの地元船場の贔屓筋から大企業の役員、普通の会社員、OLの女子会、町内会老人会の宴会まで、実に幅広い客層に愛されていること。
2階は大小宴会が出来るので、わざわざグループで「うどんすき」を食べに大阪に来るのもいいかと。
江弘毅

江弘毅

編集者。京阪神エルマガジン社時代に雑誌『ミーツ・リージョナル』を立ち上げ、12年間編集長を務める。著書『街場の大阪論』(新潮文庫)、 『「うまいもん屋」からの大阪論』(NHK出版新書)、『飲み食い世界一の大阪』(ミシマ社)など、主に大阪の街や食についての著書多数。最新刊は7月15日発売の『濃い味、うす味、街のあじ。』(140B)。編集出版集団 140B取締役編集責任者。

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