ぷるるん食感にやみつき!福井の冬の名物「水ようかん」を巡る旅

2016.02.05 更新

冬になると福井に登場するもの…それは「水ようかん」。え?冬に水ようかん?と思うなかれ。お正月にはこたつに入って家族みんなで水ようかんを食べる、それが正真正銘の福井スタイルなのだ。気づいたら一人で一箱全部食べてしまった…なんてことも福井ではよくある出来事の一つ。今回はぷるるんと口どけなめらかな水ようかんを求めて福井県内を巡る旅に出かけてみた。

「水ようかん」と言えば…誰もが答える有名店

最初に訪れたのは昭和12(1937)年創業の「えがわ」。福井では誰もが知る有名な水ようかんの老舗である。
県内で7割ほどのシェアを誇っており、毎年11月になるとスーパーやコンビニなど福井県内のいたるところに「えがわ」の水ようかんが並ぶ。
▲これが「えがわ」の水ようかん(670円・税込)赤く縁取られた箱が印象的

今回は「えがわ」の工場にお邪魔し、実際に作っているところを見学させていただく。
午前9時。店頭の奥の通路を抜け2階に上がると、すでに作業場は熱気を帯びていた。
▲福井市内にある「えがわ」のお店。併設されている工場では毎朝5時くらいから作り始める

水ようかんの材料はざらめ、黒糖、寒天、あずき餡の4つ。
シンプルだからこそ、材料は全国から最高のものを取り寄せている。特に黒糖は製糖されたばかりの「特等品」を沖縄から直接仕入れており、素材へのこだわりの強さをうかがい知ることができる。
▲黒糖は水ようかんのかくし味!社長いわく、サトウキビの収穫に影響がでないか、台風の時期は沖縄の天気が何よりも気になるのだという

水ようかんづくりは、これらの材料を大釜の中に入れて煮込むことから始まる。一つの大釜で作ることができる水ようかんは約500箱分。年末年始は最も忙しい時期となり、1日に約1万5000箱も作るそうだ。
▲約100度の温度で1時間かけて煮込む

寒天をなめらかに溶かすためにしっかりと丁寧に煮込んだ後は、液状の水ようかんを複数の鍋に移し替える。ここからはひたすら冷ます作業となる。この温度調節が特に重要で、人肌程度に冷めるまでの間しっかり攪拌させないと、あんこの部分と寒天の部分が分離してしまうのだ。すべての鍋が均等に冷めるよう、細心の注意を払いながらまんべんなくかき混ぜていく。これらはすべて手作業だ。
▲長い柄がついた大きな柄杓のようなものでひたすら混ぜる
▲真冬でも業務用の大型扇風機をフル稼動させ、温度調節を行う
▲50度以下になったところで容器に流し込み、ここからさらに1時間くらいかけて固めていく
▲しっかり固まったら食べやすいよう3cm×5cmの大きさにカット。これもひと箱ずつ手作業で行われる

約3時間かけてようやく完成!特別に出来立てを試食させていただくと、ぷるるんとした寒天の食感は噛む必要がないほど柔らかく、なめらかな舌触りで喉をするりと通り抜ける。なるほど、子供からお年寄りまで好まれるのも納得出来る。甘さ控えめの中にも黒糖の風味が感じられる上品なお味だ。
▲ひと切れずつ木べらですくっていただくのが福井流

今でこそ、紙箱に入ったものが並ぶようになったが、昭和30年頃までは漆塗りの木箱に入れられた水ようかんが一般的だったそうだ。冷蔵庫のなかった時代は廊下や軒下に置いて冷やし固めていたらしい。
▲漆塗りなので水分に強く、液状の水ようかんを流し込んでもまったく問題ない

「水ようかん」といえば俳句では夏の季語にもなっているほど。そもそも、なぜ冬に水ようかんを食べるのだろうか?

社長の江川正典さんに聞いてみたところ、
京都に奉公に出た丁稚(でっち)が、正月に里帰りする際に土産として持ち帰ったという説や保存料などを一切使わないので日持ちがせず気温が低い冬に食べられるようになった説など諸説あって断定はできないそうだ。
▲「この水ようかんの歴史をこれからも受け継いでいきたいね」と、社長の江川正典さん

まぁいずれにせよ、美味しければすべて良し!「子供」「両親」「祖父母」の三世帯が同じ屋根の下で暮らす大家族が多い福井では、水ようかんは単なる食べ物ではなく世代を越えたコミュニケーションツールなのだということを、透き通った水ようかんを眺めながらしみじみ思うのであった。

香ばしいコーヒーの風味が漂う絶品水ようかん

水ようかんといえばお茶と一緒にいただくイメージが強い中、コーヒーと水ようかんの見事なコラボレーションを生み出したのが「清雲堂」だ。
▲「清雲堂」は鯖江市内にある創業110年の老舗和菓子屋さん

こちらの水ようかんはあっさりとした風味を出すために、黒糖ではなく白砂糖と赤砂糖(きび砂糖の一種)を合わせたものが使われている。

「水ようかんとお茶はもちろん合うのですが、意外にコーヒーとの相性も抜群なんです。うちの水ようかんはもともとあっさり風味だったので、コーヒーを入れるとバランスのいいコクが生まれるんじゃないかなと思い、5年前から作り始めました」
というのは店主の柳本昌之さん。
▲これがコーヒー味の水ようかん(389円・税込)。雪景色を表現したパッケージがかわいらしい

通常の水ようかんよりも色は濃い目。甘さは控えめながらもしっかりとコーヒーの風味を感じることができる。コーヒーゼリーのように思われるかもしれないが、こちらの方がほんの少し弾力がある分食べごたえもある。

コーヒー味の水ようかんは清雲堂の店頭をはじめ、鯖江市内のスーパーでも販売されている。
販売期間は11月~翌2月末までと少し短め。だからこそ何としても一度は味わっておきたい。
▲笑顔が素敵な4代目の柳本昌之さん

白?緑?洋菓子屋さんが生み出したまったく新しい水ようかん

福井には県内だけでも約200種類の水ようかんが存在すると言われているが、「小豆色ではない真っ白な水ようかんがある」という衝撃の情報をキャッチ!
坂井市にある「ニュアージュ・リーブル」(以下、ニュアージュ)を訪れた。
▲えちぜん鉄道「三国神社」駅から徒歩3分。レンガの屋根が目印のおしゃれなお店

「ニュアージュ」はケーキや焼き菓子が有名な洋菓子店だが、地元スーパーの依頼で3年前から水ようかんを作り始めた。

長年洋菓子を手がけてきた経験を活かし、普通の水ようかんとはちょっと違った新しいものができないだろうか、という思いから生まれたのが「白い水ようかん」である。
▲やさしい乳白色が印象的な「白い水ようかん」(561円・税込)。フランスのチョコレートを意識したパッケージはコントラストが鮮やか!

小豆の皮を取り除き、美味しさの一番凝縮された部分のみ使う「ニュアージュ」の水ようかん。例えるのであれば、お酒でいう「大吟醸」のような製法が近いのかもしれない。

「白い水ようかん」は白あんとかくし味に生クリームが入っており、一口食べてみるとミルキーでババロアのような食感と和三盆のやさしい甘さを楽しむことができる。絹のようにキメが細かく、口の中でなめらかに広がっていく食感はこれまで食べた水ようかんとはまったく別物。このまま本当にとろけてしまいたいくらい幸せを感じる味だ。

「ニュアージュ」では「白い水ようかん」だけでなく、抹茶の水ようかんや、福井の名産「とみつ金時」を使った水ようかんも作っている。
▲濃い緑色が印象的な「抹茶の水ようかん」(561円・税込)。京都産の抹茶がふんだんに使われている
▲福井県あわら市で作られた「とみつ金時」を使った「さつまいもの水ようかん」(561円・税込)。濃厚だがくどくない甘さでやみつきになる
▲左から「白・抹茶・さつまいも」。販売先のスーパーでは即完売になるほどの人気だ

しかも、これだけではない。さらに話をうかがうと、もう一つ特別な水ようかんがあるとのこと。

「毎年2月後半くらいになり水ようかんの販売終了が近づくと、一番最後に『桜色の水ようかん』を作るんです。これこそ期間限定中の限定商品(笑)春を待ちわびる桜色で福井の冬を締めくくることができたらいいなという思いから作っちゃいました」と、店主の出蔵智樹(でくらともき)さん。

なんともニクい演出が女心をくすぐる。2月末にまた買いにいかなくては!
▲「白い水ようかんはブルーベリーソースと合わせても美味しいんですよ」と、出蔵さん。

これらの水ようかんは坂井市のスーパー「iza(イーザ)」で購入可能。「ニュアージュ」の店頭では予約分のみの販売となる。1日に作ることのできる量が限られているため、早めのご予約がおすすめだ。

もう我慢できない!今すぐ食べたいあなたにはこちら

ここまでご紹介した水ようかんは、ほとんどが店頭で販売されているものばかり。
今すぐ食べたい!しかも、年中食べたい!そんな方にぜひおすすめしたいのが「極(きわみ)」だ。
お店はJR鯖江駅の目の前!毎日夕方になると、地元の学生達でごった返すほど、人気のだんご屋さんだ。

身体にやさしいおやつを食べてもらいたい!という思いから、すべて手作りでオリジナルのだんごを販売している「極」。水ようかんはだんごと同様、5年前にオープンした当初からの人気メニューだ。

小豆と寒天、そして沖縄黒糖と焚黒糖という2種類を使い、毎日丁寧にコトコト鍋で炊きながら作っている。余計なものは一切入っていないため日持ちはしないが、その日作ったものなら年中お店で出すことはできる。ケーキほど甘すぎず、さっぱり食べられる水ようかんなら、食欲が落ちる夏場もきっと美味しく召し上がっていただけるはず、と年間通して水ようかんをお店で出すようになったそうだ。
▲ミネラルが多く、少し塩分が感じられる沖縄黒糖(右)と、まろかやな焚黒糖(左)をブレンド。同じ黒糖でも食べ比べるとまったく味が異なる
▲これが「極水ようかん」(210円・税込)良心的な価格が嬉しい

「極」の水ようかんを表すとすれば「つるん」ではなく「ちゅるるん」という感じ。すぐに口の中に入れないと滑り落ちてしまいそうなほどみずみずしい。

口当たりはとても軽いが2種類の黒糖を合わせているせいか、甘さやコクにも深みがあって食べ出すともう止まらない。
▲水ようかんにはコーヒーがおすすめ。「極」では和菓子に合う珈琲豆を専門店から取り寄せている

駅に近いという場所柄、「極」には旅行客も多く訪れる。水ようかんに馴染みのない県外の方も「極」の水ようかんを一口食べるとその美味しさに感動し、「地元に送ってほしい!」と言われることも珍しくないのだとか。水ようかんが苦手な人も、「極」の水ようかんをぜひ一度試していただきたい。
▲「持ち帰り用の水ようかんも販売しています!」と店長の水野留美さん。こちらは12月~翌4月中頃までの販売だ。(600円・税込)
たかが水ようかん、されど水ようかん。お店によって味や材料にも違いがあり、食べ比べてみるとそれぞれのこだわりを感じることができる。

今回ご紹介したのは福井の水ようかんの中でもほんの一部にすぎない。
県内にはまだまだ知る人ぞ知る水ようかんもきっと存在するはず。
冬の福井に訪れたときは、あなた好みの水ようかんを探してみてはいかがだろうか。
石原藍

石原藍

ローカルライター。 大阪、東京、名古屋と都市部での暮らしを経て、現在は縁もゆかりもない「福井」での生活を満喫中。「興味のあることは何でもやり、面白そうな人にはどこにでも会いに行く」をモットーに、自然にやさしく、心地よい生き方、働き方を模索しています。趣味はキャンプと切り絵と古民家観察。

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