「鉄道博物館」。まるで大人の思い出再生装置
埼玉県の大宮にある「鉄道博物館」は、鉄道の博物館としては日本最大級の規模を誇る。2007年にオープンして以来、話題の施設としてテレビでもたびたび取り上げられているのはご承知のとおり。いったい何がすごいのか。半日かけてじっくりと見学してきた。

「鉄道博物館」へはJR大宮駅から埼玉新都市交通ニューシャトルに乗っていく。ひとつめの鉄道博物館駅(旧・大成駅)で降りて1階の改札を出ると、もうそこが「鉄道博物館」の入口だ。
改札から博物館の入口までは、「プロムナード」と呼ばれる展示ホールになっていて、「D51形式蒸気機関車」の先頭部や修学旅行用電車「なかよし号」が出迎えてくれる。


1階ホールの「ヒストリーゾーン」に所狭しと並ぶ往年の名車両
鉄道博物館は、「ヒストリーゾーン」をはじめとして5つのゾーンに区分されているが、各ゾーンが1階と2階にまたがっている場合もあってわかりにくいので、むしろ階で分けたほうが見てまわりやすい。
・1階=「ヒストリーゾーン」「シミュレータホール」
・2階=「鉄道歴史年表」「模型鉄道ジオラマ」「コレクションギャラリー」
・3階と屋上=展望デッキ
この記事でも1階から順に紹介していく。
時間がない人は「ヒストリーゾーン」だけを見ていくとよいだろう。
「ヒストリーゾーン」には、旅客用機関車の名作といわれる「C57形式蒸気機関車」のほか、ボンネットスタイルの先頭部が印象的な特急「とき」、日本初の新幹線車両「0系新幹線電車」など、日本の鉄道史を彩る名車の数々が並んでいる。






展示されている車両は、蒸気機関車や電気機関車、気動車のほか、機関車に牽引される客車や貨車もあり、バラエティに富む。車両によっては車内に入ることもできる。





100年近くにおよぶ鉄道博物館の歴史
1911(明治41)年、鉄道院(のちの国鉄)総裁の後藤新平が、鉄道に関する資料の収集・保存を関係者に命じたのが始まりで、1921(大正10)年に東京駅北口前の高架下に初代の「鉄道博物館」が開業した。
この初代は2年後の関東大震災で被災し、一時閉館に追い込まれるものの、1925(大正14)年に東京駅の神田駅寄りの高架下で改めて「鉄道博物館」として再開する。
しだいに所蔵品が増えたことを受けて、1936(昭和11)年には万世橋駅(現・マーチエキュート神田万世橋)の前に移転し(2代目)、戦後に「交通博物館」と名を変える。
しかし、この「交通博物館」も手狭となり、国鉄から管理を引き継いだJR東日本はJR創立20周年記念事業として大宮に「鉄道博物館」を新設することを決定した。
つまり現在の「鉄道博物館」は3代目である。
「ヒストリーゾーン」では、日本最初の鉄道(新橋~横浜間)を走った「1号機関車」のように、前身の鉄道博物館から展示され続けている貴重な車両を見ることもできる。



感動!寝台列車用の「20系」に遭遇
なかでも寝台特急「あさかぜ」の客車「ナハネフ22形式客車」の前では目が釘付けになってしまった。
この車両は、寝台列車用の客車「20系」のうちのひとつであり、「20系」はその青色の車体から「ブルートレイン」の愛称で親しまれた。
ずばり「ナハネフ22形式客車」ではなかったかもしれないが、1985年8月12日、小学4年生だった私は、当時住んでいた下関から群馬の祖父の家に行くために、「20系」で編成された寝台特急「あさかぜ」に乗って東京に向かった。なぜ日にちまでわかるかというと、翌朝、列車の窓からたくさんのヘリコプターが北へ飛んでいくのが見え、それが日航機墜落現場の御巣鷹山に向かうものだったとのちに知らされたからである。



いまはなき「あけぼの」に涙あふれる
ヘミングウェイではないけれど、もはや「何を見ても何かを思い出す」という心持ちになり、思わず涙がこぼれそうだ。

200系新幹線など新しめの車両も展示



「シミュレータホール」では京浜東北線や山手線の運転体験ができる

子どものころから乗り慣れている「209系(京浜東北線)」の列に並んだ。
私の前の少年は王子~上中里間だったので、私は上中里~田端間を受け持つこととなった。
操作するハンドルはひとつで、手前に引くと加速し、奥に押すとブレーキがかかる。ディスプレイにはリアルタイムの運行速度と田端駅までの距離が表示される。
上中里を出ると上り坂なので一気に加速させた。やがて田端駅に近づくと下りになるので早めにブレーキをかけた。が、ブレーキを強くかけすぎてしまい、正しい停車位置から168メートルも手前で止まってしまった……。

「C57蒸気機関車」が回転しながら汽笛を鳴らす!
「C57形式蒸気機関車」の置かれている転車台は、12時と15時に回転の実演を行なう。回転の最中には汽笛を鳴らしてくれるので、ぜひその迫力ある音も聞いていただきたい。

2階の「鉄道歴史年表」は実物資料や模型が充実
実物資料や模型なども展示されていて、読まなくても“見て”楽しめる年表となっている。



またもや個人的な思い出で恐縮なのだが、通っていた高校の最寄り駅だった京浜東北線の与野駅の模型が展示されていたのには心底驚いた。駅舎の設計が東京の郊外駅の典型なのだそうだ。

「模型鉄道ジオラマ」は25メートルプールなみの大きさ
25×8メートルという巨大なジオラマのなかに総延長1,400メートルのHOゲージ(在来線=縮尺1/80、新幹線=縮尺1/87)の線路が敷かれ、最大20編成までの鉄道模型が所狭しと走りまわる。
1日8回、スタッフの説明付きの「解説ショー」も行なわれる(1回約10分)。




「コレクションギャラリー」に膨大なお宝が集合


3階「ビューデッキ」と屋上「パノラマデッキ」は“生”新幹線の見学スポット
どちらも東北・上越・北陸新幹線の線路と隣接しているので、間近で“生”の新幹線を見ることができる。親切なことに新幹線が通過する時刻表も設置されている。



お腹が空いたら、食堂車で料理を食べよう
「鉄道博物館」には1階に「レストラン日本食堂」、2階に「レストランTD(ティーディー)」という2つのレストランがある。どちらも高崎線や川越線の線路に面していて、走る列車を見ながら食事をすることができる。
「レストラン日本食堂」は、国鉄の食堂車を経営していた「日本食堂」の名を冠しているとおり、昔の食堂車で提供していたメニューをとりそろえている。
ちなみに「レストランT D」の「T D」は食堂車の略号。





おみやげは本でも模型でもお菓子でも
1階はお菓子や博物館のノベルティグッズが中心。2階は鉄道関連書籍や図録のほか懐かしのプラレールを販売している。




この日は13時から閉館の18時まで5時間かけて見学したが、各展示のディテールをじっくり見るにはまったく時間が足りないと感じた。2度3度と足を運ぶ価値のある博物館だと思う。
鉄道博物館
埼玉県さいたま市大宮区大成町3-47
[開館時間]10:00~18:00(最終入館17:30)
[休館日]火曜、年末年始
[入館料]一般1,000円、小中高生500円、幼児(3歳以上未就学児)200円(すべて税込)
048-651-0088
【該当施設および閉鎖時期】
模型鉄道ジオラマ:2016年9月5日(月)~2017年7月中旬頃
てっぱくひろば :2016年7月5日(火)~2018年夏頃まで
ラーニングゾーン:2016年10月初旬頃~2017年4月下旬頃まで

大塚真
編集者・ライター。出版社兼編集プロダクションの株式会社デコに所属。近年編集した本は、服部文祥著『アーバンサバイバル入門』、『加藤嶺夫写真全集 昭和の東京』シリーズの「4江東区」「5中央区」(ともにデコ)ほか。ライターとしては『BE-PAL』(小学館)などで執筆。
また、本記事に記載されている写真や本文の無断転載・無断使用を禁止いたします。
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