まるで昔話の世界!冬の「大内宿」で江戸時代からのこる町並みを歩こう

2016.02.28 更新

福島県の会津若松の南に位置する下郷町(しもごうまち)。ここに、江戸時代の宿場町の姿を今にのこす「大内宿(おおうちじゅく)」があります。茅葺屋根の家が並ぶ町並みは、まるで昔話に出てきそうな世界。今回は大内宿めぐりの見所と、大内宿名物「ねぎそば」を紹介します。

福島県の会津若松駅から、会津鉄道に乗って約30分、「大内宿」のある湯野上(ゆのがみ)温泉駅に到着しました。
▲湯野上温泉駅。駅の屋根も茅葺屋根だ

駅から10分で昔話の世界へ

駅から大内宿まではタクシーが便利です。4~10月であれば、湯野上温泉駅から大内宿まで1日6本バスが出ていますが、11~3月は運行していないため、タクシーを利用します。
駅前に停まっているタクシーは1台……。しばらく待つかなと思っていると、先にタクシーをつかまえたご夫婦が相乗りさせてくれました。ちょうど大内宿へ観光に行くところだったようです。

タクシーで山道を進むこと約10分。標高約650mの高さにある大内宿に着いたとたん、真っ白な雪をかぶった茅葺屋根の家が並ぶ景色が目に飛び込んできました。
▲幅広い道の両脇に茅葺屋根の家が立ち並びはじめるところから南北約500m、東西約200mが「大内宿」。国の「重要伝統的建物郡保存地区」の指定を受けている
▲江戸時代からほぼそのままのかたちでのこる家々。いちばん古い家は築400年にもなるそう

取材した日は大雪の翌日で、屋根には雪が積もっていました。真っ白な雪が目を細めるほどまぶしく、キーンと澄んだ空気がおいしい!

「ここはもともと宿場町で、家々はみんな宿でした。明治18(1885)年に国道ができると、大内宿を通る下野(しもつけ)街道を通る人がいなくなり、すっかりにぎわいが消えてしまいました。それでも、ひっそりと残っていたんですよ」

そう教えてくれたのは、大内宿ガイドの山名田(やまなだ)久美子さん。
昭和42(1967)年、武蔵野美術大学の相沢韶男(つぐお)教授が、同大学の学生だったときに、大内宿に足を踏み入れ、建物や人々の暮らしぶりに感動。何年も通って文化や建築を研究し、大内宿の名を世に広めたそうです。
▲山名田さん。下郷町観光ガイド協会に申し込めば、ガイドが大内宿を一緒にめぐりながら、歴史や見所を教えてくれる
▲夏の大内宿。夏から秋がもっとも観光客が多い(写真提供/下郷町観光協会)

いまも人々が暮らしつづける生活の場

家は48軒あり、そのうち3軒が宿。ほかは食事処や土産店などを営んでいます。驚いたのは、すべて住居もかねていて、実際に人々が暮らしているということ。
現在の人口は約130人。ここは観光地であり、人々が暮らす場所なのです。
▲縁側を店舗にしている家がほとんど。冬は営業していない店も多い
▲食べ歩きにぴったりの団子を発見!
▲大内宿の郵便局。室内には観光客の人から届いたという絵葉書がびっしりと貼ってあった

住人みんなで守ってきた祭にも訪れてみたい!

「どこからいらしたんですか?」「いやぁ、雪かきが間に合わないよ~」など、住人の方々が気さくに声をかけてくれるので、こちらも「こんにちは~」と自然と声が出ます。

「ここに暮らしてみたいなぁ」ともらすと、ガイドの山名田さんが、大内宿のさらなる魅力を教えてくれました。

「大内宿では年間を通していくつものお祭りがあります。そのすべてを住人たち全員で守っているんですよ。祭りの日は、子どもから大人まで集まって大賑わい。大宴会がつづきます」と、山名田さん。

お正月は、大内宿にある高倉神社のわき水を汲み、その水を沸かして皆でお茶を飲むことから新年がはじまるそうです。2月の第2土・日曜は雪まつり、7月には半夏(はんげ)まつり、ほかにも子安観音のお祭りなど盛りだくさんです。
▲2月の雪まつり。雪灯篭に火が点され幻想的な世界が広がる(写真提供/下郷町観光協会)
▲7月の半夏まつり。高倉神社の祭礼で、神社で神事を行ったのち、白装束に黒烏帽子(えぼし)姿の村の男たちが神輿を中心に行列をつくる。家内安全、五穀豊穣を祈願し、毎年7月2日に開催される(写真提供/下郷町観光協会)

「大内宿という名が知られる前から、人々は、こうして祭りなどの文化を大切にしながら粛々と暮らしてきました。今は観光客も増えましたが、何よりも“大内宿に住んでいる”ということを大切にしています。テーマパークではなく、生活している場所として、昔からの生活風景を見てほしいと思います」(山名田さん)
道の両脇には山からの自然水が流れていて、清らかな水の音がなんとも心地いい……。冷たく新鮮な空気もあいまってリフレッシュ効果抜群です。
▲道の両脇に流れる水
▲生活用品は自家用車で湯野上温泉駅にある店まで買いに行くこともできるが、週に2回、移動販売の車が来てくれる
大内宿は火災対策に力を入れていて、道の両脇に14基ずつ、計28基の「防火水そう」があります。火災が起きた際には、防火水そうから防水銃を使って屋根より高く水をあげ、大内宿に雨のように水を降らして消火するそう。年に一度の防水訓練は欠かしません。

「これ、なんだかわかりますか?」と山名田さんが指さす方を見てみると、茅葺屋根の下に、何やら小さな米俵のようなものが……。聞けば、これはマメコバチという小さな蜂の巣箱。大内宿は、日本でも数少ないマメコバチの生息地で、4月上旬にこの巣箱を果樹園に設置。蜂たちが受粉活動を行うことで、おいしい果物が生産されるのです。
▲マメコバチの巣箱。米俵のような納豆を包むワラのような……小さくてかわいい
屋根に使用される茅葺の材料は、大内宿の近くにあるススキ畑から採っています。茅葺屋根の葺き方を伝えていくため、大内宿にある分校(現在は廃校)に茅葺屋根の模型を作り、ここに住む青年たちに茅葺屋根の葺き方を教えているそう。

長ねぎが箸がわり!?大内宿名物「ねぎそば」

おなかがすいたので、大内宿名物の「ねぎそば」を食べに「三澤屋」へ。
▲三澤屋。11月頃から毎年恒例の冬囲いをしている。

その名前から、ねぎがたっぷり入ったそばかな?と考えながら待っていると、出てきたのは長ねぎが1本まるごとのったそば。一瞬、冗談かと思うほどインパクトがあります。
▲長ねぎが1本、器を飛び出した状態で出てきてびっくり!ねぎそば1,080円(税込)

この不思議な料理は、もともとは信州のお殿様が食べていた大根おろしそば「高遠(たかとお)そば」になります。三澤屋の初代店主が箸のかわりに長ねぎを用い、薬味をかねてみたところ名物として広まったということです。
つゆは大根おろしの汁と削り節、秘伝のしょうゆで作られています。冷やしそばです。
長ねぎでそばをほぐし、ねぎの先端でそばをたぐり寄せるようにして、そばをすくって食べます。口に入れたらそのままねぎをかじり、薬味として一緒にいただきます。
▲ねぎでそばをほぐす。ねぎの先端が曲がっているのでそばをひっかけやすい
▲意外と簡単にたっぷりすくえる
▲そばと一緒にねぎをがぶり!ねぎの辛味がアクセントになり、おいしい

そばはコシがあり、甘めのつゆと薬味の辛さが絶妙です。新鮮なねぎはシャキシャキと歯ごたえもいい。ねぎ(箸)がすすみます!
「長ねぎは、会津若松にある契約農家で育てたものを使用しています。ひと口めだけにはなりますが、そばをひっかけやすいように先端が曲がるように育ててもらっています。青い部分まで食べることができますよ。お箸も用意していますので、食べにくい方はお箸で食べてくださいね」(三澤屋スタッフ)
▲そば湯を注いでくれた。ねぎの香りとともにいただく
▲ねぎが余ってしまった……

ねぎが余ってしまい、もったいないなぁと思っていると、ねぎ袋をくれました。取材後、自宅に持ち帰って食べたところ、まだまだシャキシャキ!みずみずしいままでした。
▲まさかねぎ袋をもらえるとは……余すことなく味わえてうれしい

食後に「とち餅」をいただきました。つき立ての餅はやわらかく、とちの実の香りと風味をしっかりと感じることができました。餡はつやがあり、しっとりとしていてコクがあります。
▲手作りの「とち餅」。とちの実を採り、苦味をとるなど手間隙かけること2週間。風味豊かなとち餅が出来上がる。餡ときな粉の2種648円(税込)
▲三澤屋のスタッフのみなさん
▲隣には、三澤屋が営業する酒屋もある

「大内宿町並み展示館」で、昔の生活道具を見学

大内宿にある「大内宿町並み展示館」では、大内宿で使用されていた農具や生活道具を見ることができます。また、会津藩主が参勤交代の道中に使っていた部屋も再現されています。
▲約1,300点の農具や生活道具を所蔵している展示館。入館料250円(税込)

中に入ると、囲炉裏で火を熾していました。囲炉裏の前でパチパチと鳴る火の音を聞きながら、どこか香ばしい匂いに包まれて暖をとります。

「茅葺屋根は、囲炉裏から上がる煙でいぶされることで、茅の乾燥を防ぐことが出来たり、防虫効果が高まったり、塗料がコーティングされて長持ちするんです。これを『煙出し』と言います。今は、囲炉裏のある家が減ってしまって『煙出し』がめずらしくなりました」(山名田さん)
▲町並み展示館の中

晴れていれば、見晴らし台から大内宿を一望できる

大内宿のいちばん奥にあるのが「浅沼食堂」(冬のシーズンはお休み)。ここまでが大内宿の敷地です。その突きあたりの山のふもとには見晴らし台があり、大内宿を一望できます。この日は雪のため足場が悪く上がることができませんでしたが、このあたりは大内宿の入口より標高が20メートル高いので、それでも十分に見渡すことができました。
▲茅葺屋根の家はどこかふっくらとしていてかわいらしい。大内宿のまわりは、ぐるりと山に囲まれている
▲小高いところに三仏堂があった

「全国の田舎で過疎化が進む中、大内宿は人口が増えています。新しく家を建てることはできないので、家族や親戚しか住めませんが、息子さん夫婦が子どもを連れて帰ってきたりしています。湯野上温泉駅のほうに小学校や保育所もあるので、子育てにもすごくいい環境なんですよ」(山名田さん)

のんびりめぐること約2時間。観光地を訪れたというより、人々の暮らしの中にやさしく迎え入れてもらったようなあったかい気持ちでいっぱいになりました。
帰りは予約していたタクシーで湯野上温泉駅まで戻ります。
▲湯野上温泉駅から会津若松駅までの電車は本数が少ないのでご注意を。電車の発車時刻に合わせて大内宿の滞在時間を決め、タクシーを予約しよう

湯野上温泉駅のすぐ近くには足湯があったり、駅の待合室にはストーブや漫画などがあったり、時間をつぶすこともできるのでご安心を。
▲湯野上駅から徒歩15秒くらいのところにある足湯
▲駅の中には、まるで誰かの家のような本棚がある

日常に戻っても、大内宿のことを思い出すだけで、どこかほっとこころが落ち着くような気がしました。忙しい日常をしばし忘れ、昔ながらの町並みの中でのんびりと過ごしてみてはいかがでしょうか。
齋藤春菜

齋藤春菜

編集者、ライター。女性の美容・健康・ライフスタイルに関する書籍、雑誌を多数編集・執筆。文芸、料理、アート本の編集も行う。全国各地へと取材に訪れたさいには地元のおいしいお店を必ずチェックする。編集を担当した本に『お灸のすすめ』『瞑想のすすめ』(ともに池田書店)、『足もとのおしゃれとケア』『わたしらしさのメイク』(ともに技術評論社)、『はじめてのレコード』(DUBOOKS)、『顔望診をはじめよう』、『月の名前』、『健康半分』などがある。

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