日光東照宮、平成の大修理で生まれ変わった世界遺産でパワーチャージ

2018.08.21 更新

栃木県日光市といえば「日光東照宮」。周辺の寺社を中心とした「日光の社寺」は世界文化遺産にも登録されています。そのシンボルである国宝「陽明門(ようめいもん)」が2017年、44年ぶりの大修理を終えて公開されました。美しくよみがえった彫刻の数々を鑑賞するなら今がおすすめ!パワースポットとしても名高い日光へ、大人旅に出かけてみませんか。

▲表参道から奥に見える石鳥居をくぐり、神域へ。遠近法で鳥居が高く見えるよう、石段は上に行くほど幅が狭く、一段の高さも低くなっている

日光東照宮は、江戸幕府初代将軍・徳川家康公を神格化した東照大権現(とうしょうだいごんげん)を祀るお宮です。
死後も江戸の真北にあたる日光から幕府の行く末を見守ろうとした家康公の社は、当初は小さなものでしたが、三代将軍・家光による造替(ぞうたい)により、現在のような豪華絢爛な姿になったといわれています。境内にある国宝8棟、重要文化財34棟を含む55棟の建築物には、どれも芸術作品のように見事な細工が施されています。
▲生まれ変わった「陽明門」(写真提供:日光東照宮)

2017年3月、国宝「陽明門」が44年ぶり、4年間をかけた大修理を終え、色鮮やかによみがえりました。これほどの大修理はこの先100年はないと言われていますから、美しい姿が見られる今が拝観のベストタイミングです。

東照宮を護る神獣たち

境内を歩くと、日光東照宮の細工の多くが不思議な動物、「神獣」であることに気づきます。
石鳥居を抜けるとまず左手に見えるのが「五重塔」です。高さ35mのこの塔の初層の軒下にさっそく動物が。
▲この「五重塔」の揺れを逃す耐震構造は、「東京スカイツリー」にも応用されている
▲初層の軒下には、右から家康の干支である「寅」、二代将軍・秀忠の「卯」、家光の「辰」が彫られている

五重塔から少し進んだところに拝観受付所があります。赤い「表門」の先が、拝観券が必要なエリアになっています。
▲「表門」の両側には仁王像が立つ

表門をくぐると、右前方に「音声ガイド」の貸出(500円/日)ブースがあるので、興味がある人はぜひ借りてみてください。35項目にわたってわかりやすく解説してくれますよ。

表門の先の石畳の参道は、鉤(かぎ)の手状に曲がっています。これは敵の侵入を防ぐ知恵なのだとか。
前方には3つの棟が並ぶ「三神庫(さんじんこ)」が。これも、本殿を見せないための仕掛けです。戦国時代を勝ち抜いた徳川家らしい造りですよね。
▲「三神庫」。校倉(あぜくら)造りの建物には、春秋の祭事で使われる馬具や装束類がおさめられている

ここでぜひ注目していただきたいのが、一番奥の「上神庫(かみじんこ)」の屋根下にある象の彫刻。
実物を知らない江戸時代初期の絵師・狩野探幽(かのうたんゆう)が下絵を描いたため、「想像の象」といわれているのですが、ふさふさの毛や尖った爪、それに不思議な目がユーモラスですよね。

上神庫の向かいにあるのが、「神厩舎(しんきゅうしゃ)」と呼ばれる神馬の厩(うまや)です。そしてこの屋根下に、あの有名な「三猿」の彫刻があるんです!
▲東照宮に仕える神馬が今でも雨や雪の日を除く10時から12時の間、ここへ出勤する

それにしても、なぜ厩に猿なのか?それは、猿が馬の病気を治したというインドの故事にならってのことだそう。
「見ざる・言わざる・聞かざる」が有名な三猿の彫刻ですが、実際には正面と側面合わせて8枚の彫刻が施され、人の一生を描いているといいます。そう言われてじっくり見ると、子を思う親の気持ちがにじみ出ていたり、山あり谷ありの人生を表していたりと、感慨深いシーンばかりで、ジーンときてしまいます。
▲「見ざる・言わざる・聞かざる」。悪いことは見ない、言わない、聞かないという、親から子どもへの躾を表しているそう
▲子猿を抱いた母猿が手をかざし、遠くを見詰めている。子どもの将来の幸せを願う親の心を表現している

修理を終えた三猿は色鮮やかで美しく、まるで生きているような躍動感に満ちていました。

豪華絢爛!平成の大修理を終えた「陽明門」へ

御水舎(おみずや)で心身を清めたら、いよいよ「陽明門」へ向かいます。
正面に銅鳥居、奥に陽明門、その奥に拝殿・本殿があるのですが、それらが重ならずに一直線に見える位置が、一説にはパワースポットといわれています。ぜひ探してみてください!
▲背後に伸びる直線の先には、かつて「江戸城」があった

そしてそびえる「陽明門」にやってきました。高さ約11m、幅約7mの門は圧倒的な存在感!
▲遠くから見ると、白と金色の印象が強い

近づくと、おびただしい数の極彩色で精緻な彫刻に思わず言葉を失います。その数なんと、508。建築様式、工芸、彫刻など、江戸時代のあらゆる文化が凝縮されているといいます。日がな一日見ていても飽きないことから別名「日暮(ひぐらし)の門」と呼ばれるのも納得の見事さです。
▲複数のパーツを組み合わせた軒下細工「出組(でぐみ)」の下には、家康公が敬愛した中国の道徳思想を表現した人物の彫刻が。この囲碁をする人々は「知恵」を表しているといわれる
▲聖域を守る神獣はここにも。赤と白の「唐獅子(からじし)」がびっしり
▲門内部の天井には、「昇り龍」と「降(くだり)龍」(狩野探幽作)が描かれている。こちらは別名「四方睨みの龍」と呼ばれる「降龍」

繊細で荘厳な彫刻の嵐!「唐門」と「本殿」

陽明門をくぐると、正面に現れるのが「唐門(からもん)」です。
▲左右には植物や鳥が彫り込まれた全長160mの透塀(すきべい)が

この唐門は奥にある本社を守る重要な門で、江戸時代には身分の高い幕臣や大名しかくぐることが許されなかったといいます。施された彫刻がこれまたスゴイ!
▲門の両側の柱には、昇龍・降龍が彫られている。その細工の細かさに驚く
▲門の上部に彫られた「舜帝朝見の儀(しゅんていちょうけんのぎ)」は、中国神話に出てくる君主・舜帝が、元旦に役人たちから挨拶を受けている場面。中央の舜帝の顔は家康公に似ているのだとか

唐門の奥には「本殿」があります。こちらへは靴を脱いで上がります(撮影禁止)。
本殿も、白い龍、鳥、うさぎ、その他想像上の生き物など、神獣の彫刻に彩られています。細密な彫刻たちは、芸術品として第一級の出来栄え。まさに江戸初期の工芸技術の集大成がここにあります。そしてその一つひとつには物語や思いが込められているのです。

平成の大修理以降、拝観者が急増中の日光東照宮。常に大勢の人がいますが、少しでもゆっくり拝観するには、朝早い時間帯がおすすめです。拝殿の左右にある「将軍着座の間」や「法親王着座の間」なども一見の価値がありますよ。

207段を上りきった先にある「奥宮」

▲「奥宮(おくみや)」への入口を守る「眠り猫」も美しく修理された

日光東照宮でもうひとつ有名なのが、この「眠り猫」。家康公の眠る墓所「奥宮」に通じる「東回廊潜門(ひがしかいろうくぐりもん)」の上部に刻まれています。
家康公の御遺骸が納められている大切な場所で、何をのんきに眠っているの?と思いますが、実は「猫がのんびり眠っていられるほど平和な世の中になるように」との願いが込められているのだそう。それを証明するのが、眠り猫の裏側にあるスズメの彫刻です。
猫が眠っているからスズメも安心して遊んでいられる。徳川の世の天下泰平を祈願しているのですね。

そしてこの眠り猫は、見る角度によって表情が一変するんです!
斜めから眺めると……ほら、獲物を狙っているような、今にも飛びかかりそうな顔に見えませんか?心なしか前傾姿勢にも感じられます。なんとも不思議な彫刻ですね。

さて、奥宮へと向かいましょう。
杉の木立の中を進みます。ひんやりとして、澄んだ空気が気持ちいい。
全部で207段もある石段。その踏み石は全て大きな一枚石でできていて、石柵も一枚石をくり抜いて造られています。美しい石段ですが、最後まで上るとやや息切れが。鳥居の先が、奥宮です。
▲「鋳抜門(いぬきもん)」。門の軒下には「蜃(しん)」という伝説の生き物の彫刻が(右上)。守護神として墓を守っている
▲「御宝塔」(御墓所)

鋳抜門の先にあるのが、家康公の神棺をおさめた5mの御宝塔です。しんと静かな空気があたりを包んでいます。御宝塔の周りをぐるりと歩くと、大きな杉の木があります。こちらは願い事を唱えると叶うといわれているご神木「叶杉」です。静かな気持ちで手を合わせてみてはいかがでしょうか。
▲「叶杉」

400年前の行列を再現!春季例大祭の「百物揃千人武者行列」

毎年、家康公の命日の1カ月後にあたる5月17・18日には春季の例大祭(れいたいさい)が開催されます。
初日の見所は、「神事流鏑馬(やぶさめ)」です。午前中、徳川御一門など来賓が参列して祭儀が執り行われた後、13時から小笠原流の「神事流鏑馬」が奉納されるのです。馬上から矢が放たれる様子は迫力満点!夕方には、東照宮の神が3基の神輿に分乗し、「日光二荒山(ふたらさん)神社」に出向く「宵成祭(よいなりさい)」も行われます。
▲美しい馬が一気に駆け抜ける「神事流鏑馬」(写真提供:日光東照宮)

お祭りのハイライトは、何と言っても2日目18日の11時に始まる神輿渡御祭(しんよとぎょさい)「百物揃(ひゃくものぞろい)千人武者行列」。家康公の霊が静岡県の久能山から日光に改葬された際の行列を再現したものです。日光市民による神輿や鎧武者など1,200名ほどが境内の御旅所(おたびしょ)に向かいます。豪華絢爛な大行列はまさに歴史絵巻のよう!タイムスリップ気分を味わえますよ。
▲過去の「百物揃千人武者行列」の様子。圧倒的なスケール感!(写真提供:日光東照宮)

日光といえば、関東随一の紅葉の名所でもあります。10月半ば頃からは美しく色づいた木々も楽しめます。徳川の栄華を今に伝える、幽玄な美の世界を味わいに出かけてみてはいかがでしょうか?
▲栃木県のデスティネーションキャンペーンの一環として開催された陽明門のライトアップ。今後の開催は未定(写真提供:日光東照宮)
髙松夕佳

髙松夕佳

編集者、ライター。茨城県つくば市のひとり出版社「夕(せき)書房」代表。『家をせおって歩いた』(村上慧著)、『山熊田 YAMAKUMATA』(亀山亮著)、『宮澤賢治 愛のうた』(澤口たまみ著)が好評発売中。ふるさと、茨城の魅力を再発見する日々。

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