新潟で「へぎそば」を堪能!米処の美食は、米と酒だけじゃなかった

2016.03.24

南北に長い新潟県の中心に位置する中越地方。この地域にある十日町市と小千谷(おぢや)市、長岡市は、コシヒカリの産地として知られています。しかし、米どころでありながら、昔から「へぎそば」と呼ばれるこの土地ならではの蕎麦が親しまれてきました。この名物を新潟県民だけのものにしておくなんてもったいない!全国に「へぎそば」の魅力を伝えるべく、取材しました!

普通のお蕎麦と「へぎそば」は何が違うの?

▲「へぎそば」4人前(越後長岡小嶋屋)

新潟県ではポピュラーな「へぎそば」ですが、その最大の特徴は、つなぎに「布海苔(ふのり)」という海藻を使うこと。織物の産地として有名なこの地域で、織物の仕上げの糊付けとして使われていたのが「布の糊=布海苔」でした。いつからかこの布海苔が蕎麦のつなぎに使われるようになったそうです。この布海苔がつるつるしこしこしたへぎそば独特の食感を生み出しています。

そして、名前の由来となっている「へぎ」は、蕎麦を盛り付ける蒸篭(せいろ)のこと。へぎの語源は「剥ぎ」と言われていて、剥ぎ板で作った器をへぎと呼びます。サイズは大きく、3~4人前の蕎麦がおなじ「へぎ」に盛りつけられ、それを皆で囲んで食べるのもへぎそばの特徴です。

さらに、盛り付けも独特!蕎麦を手で一口サイズにまるめて盛りつけるのです。手を振りながら、水から揚げ、へぎに盛りつける特有の動作から、「手振りそば」とも呼びます。この独特の盛り付けは、織物の縦糸と横糸をイメージしたものだとか。盛り付けにも一手間加えるのは織物の地ならではの感性なのかもしれませんね!

伝統と文化を守る小千谷市の「わたや 平沢店」

「わたや平沢店」は関越自動車道小千谷ICを降りてすぐにある、木のぬくもりを活かした作りのお店。小千谷のへぎそばを代表するお店のひとつで、大正10(1921)年創業の老舗です。平沢店は現代建築に和のしつらえを融合。内装には特産の麻布や、独特の形が特徴の盃凧(さかずきたこ)などの小千谷文化も取り入れてデザインしたそうです。
▲「へぎそば」4人前 2,800円(税別)。天ぷら2人前 1,540円(税別)

「わたや」のへぎそばは、腰の強さとしなやかな喉越しが特徴!この地で長年食べ続けられてきた、へぎそばらしさを味わうことができます。

また、薬味にも特徴があります。
▲薬味の和辛子とわさび、ネギ。奥は「きんぴら」250円(税別)

この地域ではわさびではなく和辛子でそばを食べる人が多いそう。もともとわさびが採れる土地ではなかったことが理由ですが、食べてみると和辛子のマイルドな辛みが意外なほどよく合います。「わさびのように刺激が強すぎず、そばの風味を引き立ててより楽しめるのが和辛子」というのは地元の声。

そして、「わたや」の三代目が薬味として考案した「きんぴら」もオススメ。
蕎麦と一緒に箸でつかみ、つゆにつけて豪快に頂きます。蕎麦に合わせて細切りにされたごぼうとにんじんは、ピリ辛で甘みがあり、蕎麦の旨みを引き立てます。あまりの食べ合わせの良さに、他のお店でも続々とメニューに載るようになったのだとか!

もう一つ、お店でおすすめされたのが「ピリ辛鶏つけ汁」で食べるつけそばと、「みどりのラー油」。
▲ピリ辛鶏つけ汁 単品480円(税別)。お持ち帰り用みどりのラー油680円(税別)

つけそばは、熱々のつけ汁に蕎麦をつけて食べる楽しみ方。あまり定番の食べ方ではないのですが、最後までへぎそばの食感を楽しめ、蕎麦の新しい可能性を広げます。

「みどりのラー油」は、さわやかな辛さで独特の風味があるラー油で、蕎麦との相性も抜群です。使われているのは「かぐら南蛮」と呼ばれる古くからこの地域で栽培されてきた唐辛子。肉厚でピリリとした爽やかな辛みが特徴の伝統野菜です。
実は、この「みどりのラー油」はわたやのオリジナル商品。「中越地震で被災した小千谷市の復興を手助けしたい」という想いから、かぐら南蛮の種まきから収穫・加工まで、地元の人たちでたっぷり手間と愛情をかけて、みどりのラー油を完成させたそうです。

文化を守り、伝統を守り、地域を守る。そして常に新しいチャレンジをする。地元・小千谷を愛して、地元のために頑張る姿勢が小千谷で老舗として愛され続けている秘訣だと感じました。

へぎそば打ち体験するなら、十日町市の「そば処 田麦そば」

▲孫娘2人も加わり、三世代で営業する「田麦そば」

続いて紹介するのは「雪と着物とコシヒカリ」そして「そばの町」十日町市の中心街にあるお店「田麦そば」。創業者の福崎平八郎さんは、創業以前から、近所に頼まれてよく蕎麦を打っていたそうですが、お店を出したのは30年ほど前の昭和61(1986)年。というのも、十日町市の人にとって「へぎそば」は各家庭でそば打ちをするものだったので、お店で食べるという習慣がほとんどなかったそうです。なので、商売としてお店ができはじめたのは、実は近年になってからなのだそう。
その中でも「田麦そば」はお食事だけでなく、蕎麦打ち体験ができる数少ないお店です。
▲そば打ち体験の先生であり、お店の創業者の福崎平八郎さん

福崎さんは、昭和7年生まれのそば打ち名人。各家庭でそば打ちをしていた時代を経験している大ベテランです。今でもお店のお蕎麦は福崎さんの手打ち。平均で1日に200食分は打つそうです。

「この辺では、布海苔と蕎麦粉だけで打つへぎそばの蕎麦打ちを教えることができるのは、自分だけになってしまった」とのこと。福崎さんとの会話を楽しみながら蕎麦打ち体験の始まりです。
▲材料は北海道産の布海苔と蕎麦粉のみ。舌だけでなく触って蕎麦を感じられるのは体験ならでは

今回は蕎麦粉と布海苔を混ぜる「水回し」と、生地をこねる「練り」、そして「のばし」と「切る」作業の体験です。事前予約は必要ですが、手ぶらで来て体験ができるので安心です。蕎麦の香りを楽しみながら作るので、ついついお腹の虫が鳴りそうです。

やはり、最大のポイントはつなぎの「布海苔」!
▲つなぎ用に煮た布海苔

普通のそば打ちでは「水回し」は、蕎麦粉に少しずつ水を入れながら手早く水と蕎麦粉を混ぜあわせる難しい工程です。しかし、つなぎに布海苔を使うときには水は一切使いません。蕎麦粉100%の中に、豪快に茹で上げた布海苔を入れて混ぜ合わせます。福崎さん曰く「布海苔を煮る加減がすごく難しい。すこしでも煮過ぎたり、時間が足りなくても、つなぎの役目を果たせなくなるんだよ。ちょうどいい加減じゃなれば、蕎麦がボロボロちぎれてしまう」とのこと。
▲ひとつひとつの工程を丁寧に指導してくれます

水回しも、練りも大切なのはスピード。蕎麦に体温がなるべくうつらないように手早く作業しなくてはいけません。ひとつひとつ福崎さんが手本を見せてくれるのですが、なかなか上手くできませんでした。
特に難しかったのはやはり切る作業。最初はどうしても太くなってしまうので悪戦苦闘でした。「太く切っても蕎麦の味が濃くなるだけ、不味くはならない。心配せずに楽しんで体験して」と福崎さん。
「俺の兄さんはそば切りが上手でなぁ~。目隠しして片手でやっても細く切れた名人だったんだよ」と教えてくれました。
出来上がった蕎麦は、お店でお孫さんが茹でてくれました。太い麺を見て普段よりタイマーの時間を長くしていたのを私は見逃しませんでした(笑)。
そば切りで苦戦した分、見た目は悪くなってしまいましたが、やっぱり自分で打った蕎麦は美味しく感じられます!初めての蕎麦打ち経験でしたが、ちゃんとできて一安心でした。
ここでも薬味はもちろん「和辛子」。お孫さんも「東京に行ってそばを食べた時にはカラシが緑色で驚いた」と和辛子とわさびを間違えるほど食べ慣れた楽しみ方です。

そば打ち体験は1人2,000円(税込)~、4名から受付(3、4日前までに要予約)。大人数の場合は別会場を確保するので早めに予約を。明るくて人当たりの良い福崎さんが丁寧に教えてくれ、お腹も胸もいっぱいになる蕎麦打ち体験ができます。

現在、福崎さん自身は蕎麦打ちを専門にしてお店に立つことはまれだそう。実際にお店に立つのは、福崎さんの娘夫婦、そして2人のお孫さんの4人です。提供される蕎麦は福崎さんが打ったもの!蕎麦打ち体験をしなくても、気軽に「へぎそば」を楽しみに行ってみて下さい。

そばもデザートも酒の肴もオールタイム楽しめる、長岡市の「越後長岡 小嶋屋」

「越後長岡 小嶋屋」本店は、JR上越新幹線長岡駅からアーケードを通れば雨にぬれずに歩いて行ける好立地。2016年に創業51周年をむかえる、長岡で愛され続けているお店で、木造の店構えが懐かしいたたずまいを今に伝えています。

また、新潟駅・長岡駅の駅中に支店があり、気軽に「へぎそば」を楽しめる旅行者にも嬉しいお店です。
▲へぎそば1人前730円(税抜)※写真は4人前

越後長岡小嶋屋の「へぎそば」の特徴は何と言ってもその色!「薄緑色」に見えるのは、銅鍋を使って茹でているからだそうで、布海苔を強く感じさせてくれます。また、そばつゆの出汁は鰹節の一級品「本枯れ節」と北海道産の「羅臼昆布」を贅沢に使っています。食べるときは、たっぷりつゆに浸けて食べるのがおすすめだとか。

越後長岡小嶋屋は、日中も休まず通し営業。さらに甘味もあるので和カフェのような使い方をする女性も多いのだとか。
▲焦がし蕎麦粉のあんみつ390円(税別)

甘味も凝っています。
人気のあんみつは、蕎麦粉を煎ってきな粉のような風味にしてふりかけています。黒蜜をたっぷりかけて頂くと、そば粉のいい香りが口のなかに広がります。さすがお蕎麦屋さん!
▲お汁粉430円(税別)

お汁粉は温・冷いずれかから選べ、十勝産あずき「豊祝(ほうしゅく)」の粒を残した甘すぎない上品な味わいです。あんみつにも使われている団子は白玉と山菜の「オヤマボクチ」を使ったお餅。オヤマボクチはヨモギの代わりに草団子として使われることがあり、新潟の定番お土産「笹だんご」でもオヤマボクチを使うことがあります。しっとりした食べごたえのある団子に、お口直しの塩昆布もグッド!

さらに、夜のメニューも充実。各種地酒に、本干し身欠き鰊(にしん)と国産ぜんまい、新潟名物の車麩をそばつゆで味付けしたロングセラー商品「鰊とぜんまい煮盛合せ 800円(税別)」や、長岡市栃尾の名物「じゃんぼ油揚げ700円(税別)」など、新潟ならではの居酒屋メニューも加わり、蕎麦に負けない魅力的なラインナップとなっています。
▲新潟の日本酒も充実のラインナップ

「へぎそば」もデザートも酒の肴もオールタイム楽しめるお店なので、ぜひ立ち寄ってみてはいかがでしょうか?
今回は小千谷市・十日町市・長岡市とそれぞれから「へぎそば」の名店をピックアップしてご紹介しました。

どのお店の方にお話を伺っても「へぎそば」への愛情や、それを育んだ地元への愛情が滲み出ていました。その愛情がおいしい「へぎそば」をつくっているのだと感じることが出来ました。まだまだ紹介しきれない名店がたくさんありますので、ぜひ、皆さん美味しい「へぎそば」を食べに新潟を訪れてみてください!
大島健

大島健

新潟をもっと楽しくするWEBマガジン「にいがたレポ」参加ライター。長岡市をPRする長岡市民リポーターむすび隊メンバー。全日本丸太早切選手権実行委員会副代表でもあり、大島鉄工所のせがれ。とにかく美味しいものを、美味しく食べる人。 編集:唐澤頼充

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