富山のふるさとの味「ますのすし」を見て・作って・食べる!

2016.04.19 更新

江戸時代から愛され続けてきている、富山の「ますのすし」。青い竹の葉に包まれ、開けるとピンク色のすしが一面にぎっしりと詰められていて、とっても色鮮やか。県外では駅弁やお土産で親しまれ、地元では数多くの店の中からごひいきの味を見つけたり、家庭で作られたりするほど親しまれているふるさとの味。富山といわず県内外で広く愛される郷土料理の魅力を探りました。

源のますのすし
▲全国的にもファンが多い富山のますのすし(写真提供:ますのすし本舗 源)

300年の歴史を持つ富山の「ますのすし」。ひとくちにますのすしと言っても、作っているお店が富山県内で30軒以上!しかも各店舗でマスの肉厚度、酸味、酢でどれだけしめたか、あるいは生に近いか、ごはんの柔らかさなどの違いがあり、それぞれのこだわりがあると言われています。
そこで、ますのすしの老舗「ますのすし本舗 源(みなもと)」が運営する「ますのすしミュージアム」を訪れました。

ますのすしの工場を見学して、体験して、実食できるミュージアム

源のますのすしミュージアム入口
▲ミュージアム入口では、公式・見学案内人「ますまる」がお出迎え

数あるますのすしの中でも、こちらは「源」のますのすしの伝統を紹介している施設。パネルや映像で歴史を学べたり、工場で職人たちが作る様子を実際に見学できたり、予約制でますのすし作り体験ができたりします。

ますのすしの起源は、平安時代までさかのぼり、春、産卵のために神通川(じんづうがわ)を上ってくるマスを、鵜坂(うさか)神社の春の祭礼に供えられたことから。最初はそのままお供えされましたが、やがてごはんの上に塩漬けのマスの切り身を添え、青葉に包んで供えるようになりました。この形で平安京の都へも献上されたと伝えられています。
やがて神通川にかかる橋のたもとの茶屋で「鱒の早すし」という名で現在のますのすしの原型となるものが提供され、神通川を渡る旅人を中心に地域の人々から愛されました。江戸時代の享保2(1717)年に徳川8代将軍吉宗公に献上すると、絶賛されて富山の一名物となりました。
ますのすしミュージアムのパネル、富山支店
▲「ますのすし本舗 源」の前身「富山ホテル」のパネル

かつて神通川の本流であり、現在も富山市内を流れる松川沿いには、何件ものますのすし店ができ、その中で「ますのすし本舗 源」の前身となる「富山ホテル」は明治41(1908)年に誕生しました。
しばらくは旅館業一本の経営だったそうですが、後に北陸富山鉄道富山停車場(現在の富山駅)ができた際に、駅構内で営業許可を受け、駅弁部門を開始しました。当初の駅弁はサンドイッチやおにぎり、あんころなどの販売でしたが、4年後の明治45(1912)年に、はるばる富山に訪れたり帰郷する人々の心を癒すふるさとの味として、駅弁の「駅弁ますのすし」が販売されました。
ますのすしミュージアムのパネルを眺めるライター
▲歴史はもちろん、これまでの駅弁の包装紙も展示されている
ますのすしミュージアムの初期駅弁ますのすしパッケージ
▲年代を感じる「駅弁ますのすし」の初期包装紙
ますのすしミュージアムの現在のますのすしパッケージ
▲中川一政画伯による現在のパッケージ

昭和に入ると全国駅弁大会など県外で紹介される機会が増え、全国的に有名になっていった「ますのすし本舗 源」のますのすし。長い年月の中で、よりおいしく食べてもらうために、通気性と機能性を兼ね備えた新感覚のパッケージが追及されていきました。
昭和30年頃、現在のパッケージが考案され、合わせてイメージの一新を図るために日本洋画界の最高峰である中川画伯にパッケージ画を依頼。シンプルで力強く親しみやすい絵と文字が描かれました。

ますのすしの製造工程を間近で見学

ミュージアム内の「ますのすし伝承館」では、明治時代から変わることなく伝えつがれてきたますのすし作りを実際に見ることができます。
ますのすしミュージアムでマスを切る様子
▲職人が3枚におろしたマスをさばいていきます

全身真っ白な衛生服に身を包んだ職人が約4kgにもなる脂がのったマスを3枚におろし、骨を手作業で抜き、背の部分、腹の部分と分けて一枚ずつ丁寧にさばいていきます。衛生管理も徹底されており、見学はガラス越しになります。
ますのすしミュージアムで塩をふる様子
▲切ったマスに塩をふります

続いてマスの切り身に塩がふられます。かたよらないようにまんべんなく、塩の濃度やふる高さなども考慮して手早く行われ、一晩寝かせてから酢でしめられます。酢でしめる時間もお店によってさまざまなのだそう。
ますのすしミュージアムの工場内
▲新しい方法が取り入れられた広い工場で、次々と作られるますのすし

ミュージアム内の奥に広がる工場では、製造工程の一端をガラス越しに見学できます。丸いわっぱに手際よく熊笹の若葉が敷かれていく笹付けや、ますのすしを押す様子、パッケージ詰めなど、1日数千個ものますのすしがここで作られ、その日のうちに出荷されていくそうです。
抗菌作用のある熊笹を用いて、マスを酢でしめた押し寿司なので多少日持ちしますが、こちらのますのすしは製造から48時間以内がおいしい食べ頃とのこと。

特に押し器ゴンドラは、ますのすしに均一の圧をかけ、品質と味わいの良さを一定にするために重要なもの。一日にたくさんのますのすしが作られる「ますのすし本舗 源」ならではの技術です。
この先ではふたをされたわっぱを竹棒ではさみ、固いゴムをかけて仕上げる工程が続いています。固いゴムが使われているのは、出荷後も竹の棒で強くはさむことで圧をかけ続け、食べる直前まで味をなじませるために必要なのです。

ますのすし手作り体験で、さらに魅力に迫る!

このミュージアムでは、ますのすし手作り体験(1名税込1,000円、所要時間 約60分、予約制)ができます。作るものは小ぶりなわっぱながら、マスが肉厚の「特選ますのすし」。世界にひとつだけの自分の味を作ることができます。

体験中は工場内と同じ衛生環境を保つため、髪帽子、マスク、エプロン、手袋、靴カバーを付けます。
ますのすしミュージアムの体験、マスの酢しめ
▲スタッフが体験用のマスを酢でしめてくれます
ますのすしミュージアムの体験、スタッフ説明
▲ますのすしの作り方をやさしくレクチャー

からっぽのわっぱに笹付けし、ごはんを詰め、マスを乗せていきます。「まず真ん中からマスの腹の部分を敷きます。その周りは背の部分を敷き詰めてください」と説明を受けて体験者一同オドロキ。食感を追及するために、マスの身が使い分けられていたんですね!
ますのすしミュージアムの体験、マス敷き
▲隙間が空いたらマスをちぎって詰めてもいいそうです
ますのすしミュージアムの体験、蓋閉め後
▲マスを敷いて笹で覆い、蓋をしたら自分のサインを
ますのすしミュージアムの体験、押し
▲少量のますのすしなので40kgの重石を使用。この状態で約5分ほど圧をかけます
ますのすしミュージアムの体験、ゴムかけ
▲固定台を使用して竹の棒できつくはさみ、ゴムをかけて固定します
ますのすしミュージアムの体験、完成品
▲ちょっと小ぶりのマイ・ますのすしが完成!

まさに作り立てのますのすしの出来上がりです。作ってから7時間たった頃がおいしい時間とのことで、こちらはお土産に持って帰ります。食べる前に30分ほど冷やすとさらにおいしいそうですが、冷やしすぎるとご飯が固くなってしまうのでご注意を。

できたてのますのすしを併設のお食事処で味わう

ますのすしミュージアムのお食事処看板
▲予約なしで利用できる「お食事処 さくら亭」

併設の「お食事処 さくら亭」ではやわらかな光が差し込む落ち着いた雰囲気の中、工場直送のますのすしをはじめ、季節の味わいをいただくことができます。
ますのすしミュージアムのすしづくし御膳
▲すしづくし御膳(税込800円/写真提供:ますのすし本舗 源)

ますのすしは当日工場で作られたものなので、マスが柔らかくてごはんがふわふわ!ぶりのすしも2切れあるので味の違いも楽しめます。ちなみにぶりのすしは40年続くオリジナル商品。北陸のかぶらずしをヒントに、薄切りされたかぶらに人参、昆布を用いて脂がのったブリをさっぱりといただけます。
ますのすしミュージアムの季節御膳
▲季節御膳・春(税込1,000円/写真提供:ますのすし本舗 源)

また、5年前に開店した「お食事処 さくら亭」の看板メニューとして考案された季節御膳は、年ごと、季節ごとに内容がガラッと変わるのが特徴。内容が変わるごとに訪れる常連もいるほどの人気なのだそうです。
ますのすしとぶりのすしをはじめ、今春は道明寺(どうみょうじ)蒸し、こごみの含め煮、えんどう豆のエスプーマソースでいただくタケノコの揚げものなど、目にも舌にも華やかな和洋折衷のメニューとなっています。富山駅でおなじみのお店「立山そば」のうどん、デザートまで付いて、食べごたえは抜群です。
ますのすしミュージアムの料理試食
▲ゆったりと味わえるますのすしと料理は格別のおいしさ

もちろんおみやげもお忘れなく

ミュージアム併設の売店「天人楼(てんにんろう)」ではさまざまなますのすしや、ぶりのすし、たいのすしなどをはじめ、ここならではの限定品、地元の地酒、銘菓、海産物、珍味までラインナップ豊かにそろっています。
ますのすしミュージアムの天人楼全景
▲2014年7月に改装され、売り場面積が2倍に広がった「天人楼」
ますのすしミュージアムのますのすし3種類
▲どれにしようか迷うますのすしのラインナップ

上写真左から、数少ないマスの肉厚な高級部位を敷き詰めた「特選ますのすし」(1,800円)、マスが一重のスタンダードな「ますのすし(一重)」(1,400円)、マスが二段重ねになってマスの味わいがとことん楽しめる「ますのすし(二重)」(2,700円)が並びます。このほか女性でもペロリと食べられる「ますのすし小丸(900円)」もあり、種類豊富!(すべて税込)

ふっくらとした食感にほどよい甘さも感じられるますのすし。濃厚な腹の部分から次第にあっさりめの背の部分へと味わいの変化を楽しめるよう、ますのすしは放射線状にカットするのがおすすめとのこと。
ますのすしミュージアムのぶりのすし中身
▲ぶりのすし(税込1,500円/写真提供:ますのすし本舗 源)

昭和32(1957)年に「ますのすし本舗 源」の三代目社長が発案したオリジナルの押しずし「ぶりのすし」。脂がのったブリの身をかぶらではさんだ上品な味わいはクセになりそう。
ますのすしミュージアムのますぶりのすし重ね中身
▲ますぶりすし重ね(税込2,800円/写真提供:ますのすし本舗 源)

ますのすしとぶりのすしをひとつのわっぱの中に重ね入れた、ぜいたくでボリュームたっぷりの一品。マスもブリもどっちも食べたい!と迷った時に選ぶ人が多いそうです。
ますのすしミュージアムのたいのすし中身
▲たいのすし(税込1,600円/写真提供:ますのすし本舗 源)

香りのあるタイの上に薄く白板昆布が敷かれ、それぞれの旨みが調和した風味豊かなたいのすし。タイをふんだんに使っているため、お祝い事など縁起物としても人気。
ますのすしミュージアムの竹ずし中身
▲竹ずし(税込3,700円/写真提供:ますのすし本舗 源)

大量に作ることができない稀少商品「竹ずし」は、ここでしか買えない限定品。竹筒に入ったますのすしは竹と笹のさわやかな香りが付き、酢も塩も控えめにしめられたマスが、やわらかく押されたすし飯と合わさって、まるで握りずしのようです。
ますのすしミュージアムのカップ酒
▲地元の酒造とコラボしたワンカップ酒(税込200円)と合わせて富山の味を堪能して
店舗によって味やこだわりが異なり、奥深いますのすしの世界。その歴史、ストーリーを知ると、他の店舗の味も気になってきませんか?富山に訪れたら、ぜひますのすしの食べ比べを楽しんでみてください!
SARYO

SARYO

石川県の温泉地として名高い南加賀在住のライター・エディター、時々シナリオライター。北陸の地域情報誌に10年勤めていた経験と、国内も国外も興味津々な好奇心をフル活用し、さまざまな情報をお届けします。歴史、神社仏閣、旅、温泉に強く、利用者と同じ目線を重視するスタイル。

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