大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ。豪雪地の大自然を美術館に見立てた芸術祭の魅力に迫る!

2015.06.22

日本有数の豪雪地帯として知られる新潟県中越地方。その中でもさらに山間部に位置する「妻有(つまり)」と呼ばれる地域(十日町市、津南町)は、厳しい自然環境ながらも縄文期から人が住み続けている土地です。現在は、過疎化、高齢化の進む妻有ですが、実は世界最大級の国際芸術祭が行なわれる舞台なのです。

大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレとは?

草間彌生_花咲ける妻有
▲草間彌生「花咲ける妻有」(撮影:中村脩)
越後妻有で3年に一度行なわれるのが「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」です。基本理念は「人間は自然に内包される」。日本屈指の米どころでもある越後妻有の大自然すべてを美術館に見立てて、アートを道標に里山を巡る点が特徴です。およそ200の集落を手がかりに、地域に根ざした作品をアーティストと地域がコミュニケーションを取りながら、協働してつくり上げていきます。2000年に始まった大地の芸術祭は、アートによる地域づくりの先進事例として国内外から注目を集め、さまざまなアートプロジェクトのモデルとなっています。
キナーレ作品カールステン・ヘラー_RollingCylinder_2012
▲キナーレ作品カールステン・ヘラー「Rolling Cylinder,2012」(撮影:中村脩)

芸術祭を支える縁の下の力持ち、公式サポーター「こへび隊」

大地の芸術祭のもうひとつの特徴に、多数のボランティアが、首都圏を中心に全国からサポーターとして集まり、「こへび隊」というサポーター制度を確立した点があります。世代もジャンルも、地域も超えた多様なメンバーが、アーティストや地元住民と連携して芸術祭のサポートをしています。
こへび隊拠点_旧川西中学校寄宿舎
▲こへび隊の拠点。川西エリアにある「旧川西中学校寄宿舎」
大地の芸術祭に魅せられて、ボランティアとして手伝うようにまでなっている彼らこそ、大地の芸術祭の魅力をたくさん知っているはず!そこで今回は、会期中にこへび隊のメンバーが寝泊まりする宿舎にお邪魔して、大地の芸術祭の楽しみ方をインタビューしてきました。
掃除や障子の張替え
▲この日は十数名が集まり、掃除や障子の張替えを行っていました。
こへび隊の様子
▲霧吹きがないので、ホースの水で障子紙を濡らして伸ばすこへび隊

こへび隊隊員がオススメする大地の芸術祭の楽しみ方

2003年から大地の芸術祭に一般客として参加していた山田さん。それまでアートのことはわからなかったけれど、大地の芸術祭の魅力にとりつかれたといいます。
こへび隊山田さん
▲山田さん(32)新潟県上越市在住/会社員
「作品が広域に点在しているので、自動車で地域をグルグルまわりました。その道中に、山の緑の深さ、トンネルや山道、信濃川、橋、美しい棚田など、この土地の情景が目に飛び込んできました。アート作品を見に来たつもりが、自然と地域の魅力も体感でき、この芸術祭が大好きになりました」と山田さん。

まとまった時間が取れるようになった2012年から「こへび隊」に参加。サポーターとして手伝うようになってからは、作家さんやほかのサポーター、そして地元の人との関わりが生まれ、ますますこの土地の良さを知っていったそうです。

そんな山田さんがオススメするのは、まつだい「農舞台」。「農舞台」は松代地区の拠点として、複数のアート作品もあり、ギャラリー、食堂、ショップを併設した雪国農耕文化とアートのフィールドミュージアムです。そのなかでもおすすめは「棚田」という作品だそう。
イリヤ_エミリア・カバコフ_棚田
▲イリヤ&エミリア・カバコフ「棚田」(撮影:中村脩)
もともと耕作放棄されそうになっていた棚田を使った作品で、アート作品となったことで棚田を続けられることになりました。
「作品がきっかけで棚田が続いたという面と、棚田が続いているから作品として成立しているという両面があります。生きた作品を楽しめるのが、大地の芸術祭の魅力です」(山田さん)
一方、東京都在住の牧さんが大地の芸術祭に関わるようになったきっかけは、2012年に旅行で十日町市の廃校を活用した宿泊施設「三省ハウス」に泊まったこと。その時に、スタッフさんの話を聞き「自分も芸術祭のガイドをやってみたい」と、ガイド研修と「こへび隊」宿舎の整備に参加。その合宿や会期中のボランティアの中で、地元の年配の方々や、作家さん、ボランティアの学生や社会人など様々な人とつながっていき、会期後も継続的に地域に通うほどになりました。
「地域に通えば通うほど、人とのつながりがより深くなっていきました。また、最初は楽しかっただけでしたが、やがて地域の問題や、こへび隊の役割なども考えるようになりました」と牧さん。さらに、「東京では実感できなかった社会の問題がこちらでは肌感覚でわかります。それに私たちが対応したことが、目に見える形になったり、効果が実感できることもこへび隊に参加する楽しさです」と語ってくれました。
こへび隊市橋さんと牧さん
▲左)市橋さん(73)千葉県 右)牧さん(24)東京都/サービス業
そんな牧さんのおすすめは「地元の人が積極的に出てきている作品」だそう。
「クリスチャン・ボルダンスキーの作品を管理しているおじいちゃんは、毎回よく顔を出してくれます。そのほかにも“うぶすなの家”や、“三省ハウス”、“上鰕池名画館(かみえびいけめいがかん)”、“夢の家”など地元の方が積極的に出てきてくれる作品がたくさんあります」と牧さん。
作品を見に行った際には、年配のスタッフを見かけたら「地元の方ですか?ごくろうさまです」と話しかけてみると、住民ならではの土地の歴史や説明を聞くことができるそうです。
地元の方と交流
▲うぶすなの家
こへび隊の中でも年長組の市橋さんは、知人に頼まれ、2003年から大地の芸術祭に関わるようになりました。もともとアートには詳しくなかったそうですが「都会で育ったからか、越後妻有は土地の食べ物も空気も美味しく、自然に囲まれて気分が爽快になります。この土地に惚れてしまったんです」と、積極的に関わるようになりました。「地元の人が本当に付き合いやすく良くしてくれました。こへび隊のメンバーも多様でとても勉強になります。私はもうずいぶん年長で、最年少のこへび隊とはなんと60歳差なんです」と、市橋さん。
Fourseasons
10年以上も越後妻有に関わっている市橋さんは、大地の芸術祭を楽しむポイントを「時間に余裕を持ってくること」と言います。
例えば、1泊2日でルートを決めて参加するのではなく、もっとゆっくりと自然を満喫しながら作品を楽しんで欲しいと考えています。

「この土地に来て、この大自然の中、くねくねした山道を車に揺られてアート作品を見に行くのがいいんです。例えば同じ絵画でも、東京の美術館に飾ってあるものを見るのと、越後妻有の廃校に展示してあるのを見るのでは、全然違いますよね。自然環境はもちろん、この土地に刻まれてきた歴史や、背景にある集落のストーリーも作品のひとつになるんです」。
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(撮影:中村脩)
ほかにも、作品の近くで地元のおばあちゃんが野菜を売っていたり、地域内でも食べ物や景観、温泉などそれぞれ違う魅力があります。それらを感じるがままにゆっくり楽しんで欲しいと市橋さんは言います。

「作品も朝、昼、夕方、夜とそれぞれ違う表情を見せてくれます。もちろん天気によっても変わってきます。作品はこの土地とともに生きているから、見るたびに変わってきますよ」(市橋さん)

2015年の会期は7月26日(日)-9月13日(日)

2015年の大地の芸術祭では、『人間が自然・文明と関わる術こそが「美術」』というテーマのもと、人間が自然の中で生きていくためにつちかってきたさまざまな創意工夫、技術、それを理解する仕組みとしての作品に焦点を当てます。
磯辺行久_土石流のモニュメント_イメージ
▲磯辺行久「土石流のモニュメント」イメージ
過去5回の芸術祭と約20年にわたるアートによる地域づくり活動によって蓄積されてきた、約200点のアート作品。これに加え、地域住民のおもてなし、他地域とのネットワークを活かした、より地域に根差し、地域の資源や課題に寄り添う新作約100点で芸術祭を展開。
蓬莱山
▲蔡國強「蓬莱山」イメージ
これまでの概念を超えた、21世紀の新しい「美術」が生まれる越後妻有の地で、アートを道しるべに、五感を開放する里山の旅を楽しんでみてはいかがでしょうか?
唐澤頼充

唐澤頼充

編集・ライター。新潟をもっと楽しくするWEBマガジン「にいがたレポ」編集長。農学部卒業後、マーケティング会社に勤務後、独立。現在はNPO職員として勤務する傍ら各種媒体で執筆活動を行っている。「情報流通量の多さが地域の豊かさ」をモットーに、地域に眠る資源をコンテンツ化し、発信する活動を行う。

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