春を告げる富山の「ホタルイカ」を刺身・しゃぶ鍋・釜飯…と地元ならではの会席で味わい尽くす!

2016.04.02

ホタルのように青く幻想的に光り、見る者を神秘の世界へと誘うホタルイカ。富山では毎年3月1日に漁が解禁し、旬を迎えます。そこで、今しか食べられないホタルイカ料理を味わい、ホタルイカ観光船のお話も伺ってきました。

仁右衛門家のホタルイカしゃぶしゃぶ皿
富山のホタルイカ漁は漁期間が3月上旬から5月までに定められ、また養殖が極めて困難であることから、とれたてを味わえるのは春だけ。そのため「ホタルイカを食べると春が来たと感じる」と地元で愛されています。身が大きくふっくらしているのも富山県産ならではの特徴です。

ゆったりとホタルイカづくしの料理が味わえる湯宿へ

ホタルイカの単品料理は町のあちこちで見かけるけれど、せっかくならとことん味わいたい!そこで、ホタルイカづくしの会席がいただける湯宿「元祖 仁右衛門家(にえもんや)」を訪れました。
仁右衛門家の外観
▲漁港から車で約15分の山の中にある「元祖 仁右衛門家」

慶応3(1867)年創業の老舗湯宿「元祖 仁右衛門家」は、館内に入るとゆったりと落ち着く雰囲気で女性に人気。滑らかでクセがなく、芯からよく温まる湯は昔から「子宝の湯」と呼ばれて親しまれてきました。

こちらでは1泊して夕食でゆったりとホタルイカ会席を楽しみます。
仁右衛門家の部屋、こたつ
▲1階の露天風呂付のお部屋「りんどう」は15畳と広々
仁右衛門家の部屋、露天風呂
▲「りんどう」の露天風呂

夕飯の時間になったら、お食事処もんじゅ亭へ。
仁右衛門家のお食事処「もんじゅ亭」
▲館内には奥様が筆で書いた看板や絵がそこここに。この行灯も奥様の作品

山の中の湯宿なのに、ホタルイカづくしが味わえるのはどうして?とたずねると、「この辺りの土地は平地が少なく、山と海の距離が近いんです。そのため明け方に揚がったホタルイカが、午前中に厨房に届くんですよ」と8代目ご主人の清河(きよかわ)さんが教えてくれました。
仁右衛門家のご主人
▲あたたかい笑顔でもてなしてくれた清河さん

「この辺りの人にとって、ホタルイカはとても身近で日常的な春の晩御飯。冷凍すると一気に味が落ちてしまうから、生のホタルイカを味わえるのは漁港近くの町ならではなんですよ」とも話してくれました。

現在のように富山のホタルイカの周知度が高くなかった15年以上前は、冬にブリを求めて訪れる人が多かったそう。春先にもブリを求めてくる観光者に、「ブリの時期は終わりましたが、春なのでホタルイカはいかがでしょうか」とすすめたのがきっかけで、ホタルイカ会席を作るようになったそうです。
仁右衛門家のホタルイカ会席全景
▲ホタルイカを味わい尽くせるホタルイカ会席

前菜、炊合わせ、刺身、焼物、温物…とホタルイカ会席(1人前)で用いられているホタルイカはなんと合計約60匹。ボイルや沖漬けのイメージが強いホタルイカが、生、釜茹で、焼きなどバリエーション豊かに味わえるなんて驚きです!
仁右衛門家のホタルイカ会席「炊合せ」
▲「炊合せ」ホタルイカと若竹と菜の花(一例)

ふっくらと上品に炊かれたホタルイカは、わた(内臓)まで味わえて深みがあるおいしさ。ホタルイカの甘みをじんわり感じられます。
仁右衛門家のホタルイカ会席「強肴」
▲「強肴(しいざかな)」ホタルイカ刺身

わたを全て取り、胴と足に分けて。甘く柔らかい胴もおいしいのですが、足の部分も人気。胴とは異なるこコリコリとした食感がクセになります。
仁右衛門家のホタルイカ会席「焼物」
▲「焼物」ホタルイカ昆布焼き

昆布の上にホタルイカを乗せて焼く名物料理。ほどよく焼けたホタルイカは昆布の香りと相まって、むしゃぶりつきたくなるほどいい香り。昆布文化を持つ富山ならではの組み合わせ、あつあつをほおばると思わず笑顔がこぼれます。(熱しすぎると身がはじけてしまうのでご注意!)
仁右衛門家のホタルイカ会席「温物」茹でる前
▲「温物」ホタルイカしゃぶ鍋
仁右衛門家のホタルイカ会席「温物」茹でた後
▲さっと昆布出汁の湯にくぐらせるだけで、耳が開き手足がくるんと丸まります

ホタルイカしゃぶ鍋は、ホタルイカを茹でる前後の変化が楽しく、ワクワクしながらいただける一品。これもわたごといただけるので、うまみがダイレクトに伝わります。

刺身に焼物、温物と生のホタルイカをここまで堪能できるのは、地元宿ならではの醍醐味です。
仁右衛門家のホタルイカ会席「油物」
▲「油物」ホタルイカ天ぷら

サクサクの衣の中に、しっとりしたホタルイカが丸ごと1匹。ホタルイカのコクがあるので、何もつけずにいただいてもおいしい!
仁右衛門家のホタルイカ会席「酢物」
▲「酢物」ホタルイカと分葱(わけぎ)の酢味噌和え

地元の食卓にもよく登場するホタルイカの酢味噌和え。分葱とホタルイカを合わせて酢味噌に付け、一口でいただくのが地元流。舌の上で絶妙な甘みがしっとり、後味さっぱりでペロリといただけます。
仁右衛門家のホタルイカ会席「釜飯」開けた直後
▲「お食事」ホタルイカ釜飯
仁右衛門家のホタルイカ会席「釜飯」しゃもじによそって
▲ふくらんだホタルイカがたっぷり入っています

シメにはもちろん、目の前で炊き上げられる釜飯を。ホタルイカの煮干しを使うことで味わい深く炊き上げられています。食べると口の中でホタルイカのわたがはじけてあふれ、ますます風味豊かに。
仁右衛門家のホタルイカ会席ライター実食
▲ホタルイカのおいしさがぎっしりと詰まった会席に大満足!

一品ずつ違った甘みや食感を引き出されたホタルイカ会席に、心もおなかも満たされました。「一度食べると来年も」と虜になるのも納得です。これほどホタルイカを存分に味わえてゆったりできるお宿は、ちょっとほかにはありません。

真っ暗な海でホタルイカの魅力を見学

そんな富山はホタルイカ漁獲量1位かと思いきや、実は全国では2位。理由はその漁法にあります。富山では昔から定置網漁を行い、産卵のために浅瀬に上がり、卵を産んで帰っていくホタルイカがかかるように網を仕掛け、乱獲を防いでいるからだそうです。

そして富山湾に面する滑川(なめりかわ)から魚津(うおづ)の沖合いは世界的にも有名なホタルイカの生息地であり、群游海面(ぐんゆうかいめん)は特別天然記念物に指定されています。

滑川では青く光るホタルイカを間近で見られる「ほたるいか海上観光」を体験できます(大人/税込5,000円・小中学生/税込3,000円※幼児は乗船不可、事前予約制)。

2016年は3月20日~5月8日の開催で、毎年3月1日の予約開始後、すぐに満席になってしまうほど人気。運良く予約が取れても自然が相手のため、当日の天気や海の状態、不漁などによって見られないこともあるとか。それだけに「ホタルイカの発光を見られる人は幸運である」と言われています。
ほたるいか海上観光の観光船
▲2016年から新しくなった観光船で漁場まで。写真は2015年のもの(写真提供:滑川市観光協会)

安全のため救命ジャケットを着用し、夜中3時頃に滑川漁港を出航。ホタルイカの定置網が仕掛けてある漁場へと向かいます。
ほたるいか海上観光のホタルイカ発光(弱)
▲網を揺らすと一斉にホタルイカが青く光ります(写真提供:滑川市観光協会)

定置網を引き上げる際に網を揺さぶり起こすと興奮して光り出し、何千、何万ものホタルイカの腕の先が青く光るのが見えるそうです。
ほたるいか海上観光のホタルイカ発光(強)
▲さらに強く光るホタルイカ。目の前で見られると感動もひとしお(写真提供:滑川市観光協会)

ホタルイカが発光するタイミングや理由はまだよく判明されていませんが、一説には威嚇や護身時とも言われています。体長5~6cmの小さな体が暗黒の中から青く光る様子は、身震いするほど感動的!
ほたるいか海上観光の漁港でのホタルイカ水揚げ
▲滑川漁港に水揚げされたホタルイカ(写真提供:滑川市観光協会)

水揚げされると、ホタルイカはほとんど発光していません。写真の通り、通常、光っていない状態のホタルイカ本来の色は赤色なのだそうです。

深海200mから訪れる春の使者、ホタルイカ。その光の群れを体験すれば、きっと海の奇跡に感謝してしまうはず。

刺身やしゃぶ鍋などとれたてならではの料理が味わえ、海上観光もできる富山のホタルイカは、春だけのお楽しみ。ぜひ食べに、観に行ってみてください!
SARYO

SARYO

石川県の温泉地として名高い南加賀在住のライター・エディター、時々シナリオライター。北陸の地域情報誌に10年勤めていた経験と、国内も国外も興味津々な好奇心をフル活用し、さまざまな情報をお届けします。歴史、神社仏閣、旅、温泉に強く、利用者と同じ目線を重視するスタイル。

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