「坊っちゃん」気分を満喫する、松山・道後の楽しみ方

2016.12.10

夏目漱石は明治28(1895)年、愛媛県松山市の松山中学校(現在の松山東高等学校)に英語教師として赴任しました。その経験や松山の地をモデルに書いた小説が『坊っちゃん』です。小説に登場する列車や団子は、「坊っちゃん列車」「坊っちゃん団子」として現在も市民に愛され、そして松山を代表する名物のひとつになっています。今年(2016年)は『坊っちゃん』が発刊されて110年、夏目漱石没後100年という節目の年。坊っちゃんゆかりの松山・道後を、存分に楽しんでみませんか?

「坊っちゃん列車」に乗って、いざ出発!

坊っちゃん列車は“松山市民の足”路面電車(地元では「市内電車」と呼ばれます)の線路を走ります。ただし乗車駅は限られていて、JR松山駅前・古町(こまち)・松山市駅・大街道(おおかいどう)・道後温泉、合計5つの電停からのみ、乗ることができます。

今回はJR松山駅から、道後温泉へ向かうことに。
「ポッポーーー!」と可愛い汽笛の音が聞こえてきました。
▲右側の煙突がある機関車が「坊っちゃん列車」。左の電車は通常の市内電車

小説の中で坊っちゃんが「マッチ箱のような汽車」と形容した姿そのままに、ガタゴトとやって来ます。

車掌さんに料金を払っていざ乗車。
乗車券は松山市駅や道後温泉駅などにある乗車券販売窓口でも買うことができます。
▲料金は大人(中学生以上)800円、小児(6歳以上12歳未満)400円、ともに税込 ※料金は2016年8月に変更。写真は2016年4月の料金の乗車券

ポッポーー、と汽笛を鳴らして出発。
車掌さんが要所要所で楽しくてためになる解説をしてくれます。
解説によると、この坊っちゃん列車、明治当時は石炭を使った蒸気機関車でしたが、現在は環境問題に配慮したディーゼルエンジンの機関車。でもそれ以外は、限りなく忠実に復元しているそうです。
「明治時代にタイムスリップした気分でお楽しみください」と車掌さん。
その言葉通り、車内は木造、丸みを帯びた天井のフォルム、窓枠、ドア、どれをとっても明治の風情が漂います。車掌さんの制服も、当時のものを復元しています。

いっそう味わい深い、車窓から見る松山の風景

お堀のそばを通り、曲がった先の山の上に松山城が見えてきました。
松山城は、「金亀(きんき)城」とも呼ばれていたそうです。昔、お堀か二の丸に金色の亀がいたことが由来だとか!これも車掌さんが教えてくれました。

車窓から街を歩く人たちと手を振り合ったりしながら、のんびり列車に揺られること25分間、道後温泉駅に到着です。

到着後にもお楽しみがあります。それは、列車の方向転換。先頭の機関車と後ろの客車を切り離して、車掌さんたちが力を合わせて押して回して、手動で方向転換をするのです!なんともいじらしく、可愛らしい光景なので必見ですよ!
▲奥のほうで、先頭の機関車を押して回しているのが見えます
▲方向転換が終わったら、道後温泉駅を背景にしばし停車。記念撮影のベストスポット

坊っちゃん列車をもっと好きになれる場所

そんな坊っちゃん列車の魅力にさらに迫った「坊っちゃん列車ミュージアム」が、2016年12月、松山市駅前にオープンしました。ここには「初代坊っちゃん列車」とも呼ぶべき伊予鉄道1号機関車の原寸大レプリカが展示されています。機関室や車輪の様子までも、じっくりと間近で見ることができます。
▲可愛らしいイメージの坊っちゃん列車ですが、目の前で見ると迫力があります
▲レール幅の遷移がわかる展示。このほか古い切符や冊子、車両図面などの展示も

館内では様々な資料や写真パネル、年表などを使って、明治20(1887)年創立以来の伊予鉄道の歴史を紹介しています。これまであまり公開されることがなかった車両部品や資料の展示は鉄道ファン垂涎。もちろん鉄道ファンならずとも、見ておいて損はありません。古き良き時代に想いを馳せながら楽しんでみましょう。

道後で「元祖 坊っちゃん団子」を食す

さて、道後温泉駅を降りて目の前にあるのが、商店街「道後ハイカラ通り」。飲食店やお土産屋さんなど、たくさんのお店が軒を連ねています。
今や松山の多くの店で作られている「坊っちゃん団子」ですが、「元祖」はここ、「つぼや菓子舗」さん。明治16(1883)年創業の老舗菓子舗です。坊っちゃん団子をいただきながら、お話を伺いました。
▲坊っちゃん団子と抹茶のセットは540円(税込)
▲お店の奥にあるイートインスペースは落ち着いた雰囲気

松山赴任時代の夏目漱石は、道後温泉の湯上りにこの店で団子を食べるのがお気に入りのコースだったそう。「湯晒(ゆざらし)団子」という名前の、いわゆる「あんころもち」で、上新粉のお餅を小豆の餡でくるんだ団子がお皿に7粒、盛られていたそうです。それを2皿食べていたというのですから、「漱石さん、甘いものがお好きだったんでしょうね」と、つぼやのおかみさん。

小説『坊っちゃん』では、主人公が漱石と同じようにこの店の団子を食べています。それを読んだつぼやの二代目が、『坊っちゃん』にちなんだ団子を作ろうと、餡を小豆色1色から3色に増やし、3つ並べて串に刺す現在の形を考え出したのだそうです。

材料にこだわり、小豆餡に使うのは北海道産の小豆だけ。白い餡はインゲン豆より上質の、やはり北海道産の手亡豆(てぼまめ)。緑の餡も、抹茶だけでその色を作り出すので深い色と香りが際立ちます。
餡にくるまれるのはお餅ではなく求肥なのでとても柔らかく、洗練された餡がとてもやさしい上品な味わいです。
▲夏目漱石が書いた原稿をプリントした素敵な箱の、坊っちゃん団子5本入り(540円・税込)

お土産に一箱購入してお店を後にしました。

9倍サイズの巨大な坊っちゃん団子

もう一つ、お土産にもぜひオススメしたい坊っちゃん団子をご紹介。
それは、「巴堂本舗」の「ジャンボ団子」(1本755円・税込)です!
大きさはなんと通常の9倍!もともとディスプレイ用に大きなレプリカを作ったところ、お客さんから「本物は無いの?」といわれて始めたそう。
見た目のインパクトもさることながら、手にしたときのずっしりとした重量感と串の太さに、「9倍」を実感しました。
▲左が通常サイズ、右が9倍サイズの「ジャンボ団子」
「思い切って挑戦してみて~」とおかみさんにすすめられて、ぱくり!
甘さ控えめの餡なので、意外とどんどん食べられます。1本ぺろりと平らげるお客さんも結構いるそうです。しかし私は今日のところは1個で断念。
▲詰め合わせの「銘菓セット」(2,100円・税込)。大きさの違いが歴然

道後温泉を手軽に楽しむ足湯めぐり

道後に来たならやっぱり温泉を楽しみたい、でも時間がない。そんなときには足湯をどうぞ。多くの旅館やホテルなどの玄関脇に足湯の設備が備えられていて、散策途中に気軽に無料で楽しむことができます。そのいくつかをご紹介しましょう。
▲老舗旅館、「大和屋本店」の湯桁

「大和屋本店」の足湯は清々しい檜造り。広々としていて、通りからも、館内のコーヒーラウンジからも入ることができます。コーヒーラウンジで飲み物を注文して、足湯に浸かりながら喉を潤すことができるのも嬉しい特徴です。
▲木々や花に囲まれた湯桁。椿など季節の花や緑を楽しみながらくつろぐことができます
もうひとつ、「道後・放生園(ほうじょうえん)」の足湯をご紹介。
▲「放生園」の足湯。この日は春のお祭りで紅白の幕が

「放生園」は道後温泉駅前にあり、電車やバスを待つちょっとした時間に足湯を楽しむことができます。お湯が出てくるのは明治時代から昭和初期にかけて道後温泉本館で使われていた湯釜。
そばに「身嗜所(みだしなみしょ)」(写真の紅白幕が一箇所たくしあげられているところの奥)があり、ストッキングなどを脱ぐことができるので、女性も利用しやすく、いつも観光客や地元の人でにぎわっています。
▲「放生園」にあるもうひとつの名物「坊っちゃんカラクリ時計」

「坊っちゃんカラクリ時計」は、坊っちゃんやマドンナなど、『坊っちゃん』の登場人物たちの人形が、1時間ごとに音楽にのって登場します。土・日・祝日のほか、ゴールデンウィークや年末年始などの特別期には30分ごと。時間が近づくと、人形たちの登場をひと目見ようとたくさんの人が集まり登場を待ちます。
足湯につかりながら、可愛い人形たちを眺めて、坊っちゃん三昧の旅をしめくくりました。
小説『坊っちゃん』の時代に思いを馳せながら、「坊っちゃん列車」に乗って、「坊っちゃん団子」を食べて、漱石も楽しんだであろう松山・道後の街を、ぜひ、坊っちゃん気分で闊歩してください。
矢野智子

矢野智子

愛媛県在住。愛媛県出身ながら高校卒業後ほとんどの時間を県外で過ごした後、生活の拠点を愛媛に定めた現在、改めて気付く地元の魅力に感動しきり。 人生を豊かにするものは「食」と「読」と信じ、そこに情熱を傾ける日々。

※本記事の情報は取材時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。最新の情報は直接取材先へお問い合わせください。
また、本記事に記載されている写真や本文の無断転載・無断使用を禁止いたします。
PAGE TOP