深海の高級魚・キンメダイを使った「室戸キンメ丼」の魅力は、バツグンの鮮度!

2016.05.03

高知県東部のまち室戸市。かつての捕鯨基地、台風銀座、室戸世界ジオパークなど、このまちのイメージはいくつかあるものの、「西日本一のキンメダイの水揚げ地」ということはあまり知られていない。そんな室戸のキンメダイを売り出そうと、2012年に市内10店舗で提供を始めたのが「室戸キンメ丼」だ。「町おこしにありがちなこじつけメニュー」と侮るなかれ。最近ではこれを味わうために、わざわざ室戸へ足を運ぶ人も増えているというほど、魅力と実力を備えた一品なのだ。

漁場に近い室戸だからこそ提供できる鮮度抜群のキンメダイ

水深約200~800mの深海に生息するキンメダイ。その産地としては、静岡県伊豆沖や千葉県銚子沖が全国区で知られている。しかしどちらも漁場が遠い。
室戸沖のキンメダイも水深約360mの深海に生息するが、室戸は海岸近くの海底が急峻な斜面になっており、水深の深い漁場が近い。そのため深夜に出航して午前中には帰港、そして午後にはまな板の上に載る「日戻り」の新鮮なキンメダイを味わうことができる。これが室戸のキンメダイの強みなのだ。
▲キンメダイが水揚げされる室津漁港
室戸ではシケで漁ができない日以外は、毎日のようにキンメダイは水揚げされるものの、あえて釣り針の数を制限することで、持続可能なキンメ漁を行っている。
ちなみにキンメダイは年中楽しめるが、その旬は「冬」と思っている人も多いだろう。しかし実は、梅雨から初夏が産卵前となり身が太って美味しくなる。室戸を訪れる際の参考にしておこう。

統一価格で分かりやすい「室戸キンメ丼」の定義をおさらい

▲奥に並ぶのがキンメダイの照り焼き、一番手前がキンメダイの刺身、真ん中はハガツオの刺身
2016年4月現在、室戸市内10店舗の飲食店で提供されている「室戸キンメ丼」。価格は税込1,600円に統一されている。
その主な定義として、「室戸沖のキンメダイの照り焼きと地魚の刺身を載せる」、「各店独自のキンメダイのアラでとった出し汁をつけること」が挙げられる。この範疇内で各店が個性をどう表現するかがキモとなってくる。
また、「室戸キンメ丼」を味わいに行く場合、漁がなければ提供できないこともあるので、前日までに予約しておくことが必須だ。
今回足を運ぶことにしたのは大正14(1925)年創業の料亭「花月(かげつ)」。
この店を選んだ理由は、店主の山村邦夫さんが室戸の飲食店で作る「むろと海野食の会」の会長であることに加え、普段は足を運ぶことができない老舗料亭のもてなしを1,600円で満喫するという狙いもあった(笑)。

クセがなく淡泊で上品な味わいに納得できるご当地丼

▲室津漁港にほど近い場所にある花月
▲基本的には全室個室だが、混み合う場合は仕切りを設けた相部屋になることもある
いかにも老舗の佇まいを感じさせる花月の引き戸を開けると、出迎えてくれたのが三代目店主の山村さん。客室は主に2階にあり、襖で仕切られた個室になっている。
▲客室には先代が作ったという魚介類の剥製が約50種類並ぶ
山村さんは自ら市場に仕入れに出向き、その日のキンメダイを競り落としてくる。目利きのポイントは「丸く太っている」こと。しかもここで使用するキンメダイは1キロ以上の「大」「特大」に規格されるものにこだわっている。
▲目にも鮮やかな赤色が印象的なキンメダイ(写真:山村邦夫さん)
そしていよいよ「室戸キンメ丼」登場!
同店の丼の特徴は、キンメダイの照り焼きと刺身が味わえることと、最後にキンメダイの出し汁でお茶漬けが楽しめること。

「室戸キンメ丼」の定義として「地魚の刺身を載せる」とはあるものの、その地魚はキンメダイである必要はない。他店では仕入れ原価の理由もあり、キンメダイの刺身が使われないこともある。そこをあえて刺身も提供するのが、この店のスタイル。山村さんの室戸キンメ丼に対する並々ならぬ思い入れを感じる。

おすすめの味わい方としては刺身→照り焼き→お茶漬けの順番とのことで、まずはお刺身から頂くことにする。
キンメダイの刺身は、ほどよい歯応えとクセのない上品な味わい。血合いがないため、生臭さは全くなく、これなら刺身が苦手な人でも食べられる。山村さんの「子どもも喜んで食べますよ」という言葉にも納得だ。
ちなみにキンメダイ以外の刺身は、時期によってハガツオ、カンパチなどが一緒にトッピングされる。この日は柔らかな身に脂がのったハガツオが楽しめた。
続いていただくのが照り焼き。目にも鮮やかな赤い皮と照り焼きのツヤがいかにも食欲をそそる。分厚く切られた一切れを口に入れると、甘辛い照り焼きのタレとキンメダイの淡泊な味わいが絶妙なバランス。ふっくらとしてホロリと崩れる食感もまた良し。
照り焼きとご飯を半分ほど頂いたら、お茶漬けで仕上げよう。
キンメダイの温かい出し汁を好みの量注いだら、ここは老舗料亭であろうと、なりふり構わずかきこたみたい!キンメダイの旨みたっぷりの出し汁と照り焼きのタレが混ざり合い、その味わいに箸が止まらないはずだ。
1,600円でキンメダイの様々な味わいを楽しめる「室戸キンメ丼」。スタート以来、口コミなどで人気を獲得して、提供店舗での注文数は当初の倍になっているというのもうなずける。わざわざ室戸まで行って味わう価値はあり!と断言したい。
藤川満

藤川満

清流・仁淀川流れる高知県いの町在住。出版社勤務を経て「撮って書く」フォトライターに。カヌーやトレッキングなど自然と親しむ一方で、利酒師の資格を有する日本酒党。またジャズライブの撮影はライフワークのひとつ。

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