函館カツカレー/全国カレー巡礼の旅Vol.18

2016.03.18

今や世界中で愛されるカレー。しかし、カレーの世界というのは奥深いもの。この企画では、カレーの第一人者・井上岳久先生と、私、カレー初心者ライター・井上こんの“ダブル井上”で全国の名店カレーを食べ歩き、先生の解説とともに地域性や歴史背景も交えてさまざまなカレーを紹介していきます!

前回は、北海道函館の老舗西洋料理店「五島軒」の、明治と大正それぞれの時代を再現したカレーを食べられる「あいがけカレー」を紹介しました。さて、今回はどんなカレーが登場するのでしょうか。

【Contents】

1.世界中にファンを持つ函館の古株
2.三日三晩煮込んだブイヨンも。時間と愛情をかける舞台裏
3.味の決め手はスパイスの後からやってくるブイヨンの旨み
▲前回に引き続き、函館からお届けします。う~寒さが身に沁みる!早く熱々のカレーをいただきましょう!

1.世界中にファンを持つ函館の古株

JR函館駅から車で5分ほど、電車通りから細い路地を入ったところにある「元祖インドカレー小いけ」へやって来ました。
▲看板といい外観といい、潔ささえ感じる山吹色……いえ、カレー色に塗られています
▲「元祖」の味を求め、1日200人ものお客さんが訪れるそう

出迎えてくれたのは「うちのカレーを食べたら絶対に病みつきになるよ!私は毎日これを食べているおかげで元気でいられるし、ほら見て、お肌もツヤツヤでしょ!」とユーモアたっぷりなご主人。
▲とにかくエネルギッシュなご主人
▲地元の人から観光客、有名アスリートまで幅広く愛される同店。創業から変わらない、肩の力が抜けるようなアットホームな店内も魅力なのかも

ご主人の元には、同店の味に感動したという人たちから時折手紙が届くそう。中には海外から送られてくることも。北海道の小さなお店と侮るなかれ。同店のカレーは国境を越え外国の方をも魅了してきたのでした。こう聞くと、ますます期待が高まります。
▲昔から一番人気はカツカレー(税込980円)

「カレーは時間をかけた分だけおいしくなる」とご主人。曰く「絶対に病みつきになるカレー」とは、どのように作られるのでしょうか。その秘密は、創業から変わらない3つのこだわりの手法にありました。

2.三日三晩煮込んだブイヨンも。時間と愛情をかける舞台裏

まずはルーから。独自ブレンドの小麦粉と20種類の香辛料を炭火で炒めること、なんと4時間(!)。隠し味に北海道産生クリームやマンゴーチャツネを加えます。続いて、味の決め手となるブイヨン。鶏ガラや豚骨など、三昼夜かけて骨が溶けるまで煮込むスープには得も言われぬ濃厚な旨みが染み出るそう。
▲「小いけ」のカレーにとってブイヨンはいわば心臓のようなもの。小さな厨房では常に寸胴鍋がフル稼働!

極めつけは、ごはん。固めに炊いた北海道産米をさらに蒸篭(せいろ)で蒸し上げるのが、昔から変わらない「小いけ」流です。こうすることで、ルーと相性のよいサラッとした口あたりになるそう。
▲ごはんの二段仕上げにはさすがの井上先生も驚いたそうです
▲厨房の奥でジュウア~と軽快な音と香ばしい香りを放つカツ。ん~たまりません

それでは、一番人気のカツカレーをいただきましょう。
▲いただきま~す!

3.味の決め手はスパイスの後からやってくるブイヨンの旨み


北海道産ポークをじっくり揚げたカツは、スッと歯が入る柔らかさ。きつね色の衣が薄く、ザクザクとテンポよく食べ進められます。
井上「ふむふむ。口に入れた瞬間、まず唐辛子の辛さがダイレクトに来るね!次に追いかけてくるのは……これはクミンだな。なるほど、これは意外とスパイシーな構成だぞ。それと、ルー全体の口あたりが良い意味でやや粉っぽさがある。それだけスパイスをふんだんに使っているということだね」

こん「たしかに、唐辛子感がガツンと来てからジワジワとほかのスパイスが効いてきます。口の中がスパイスの集中パンチを受けているみたい!」

井上「こういう王道系カレーはとにかくブイヨンが味の決め手になってくるもの。『小いけ』のカレーはたしかにスパイシーだけれど、そのあとにブイヨンの旨みがグワ~ッと広がります。具材は豚肉と玉ネギのみでシンプルだけどまったく飽きが来ません」
井上「ほら、こんさん。ごはんだけ食べてみて。固めに炊いているからといって決してパサパサしていないよね。蒸篭で蒸すことでお米の表面にツヤとうるおいが出て、噛むたびに口の中に甘みが広がりますよ」

こん「本当、ごはんってここまで甘くなるのですね!」

井上「カレーは飲み物、なんてフレーズも耳にするけど、こうやって食べてみると、よく噛んで味わうものだなぁとしみじみ感じますね」

それでは、カレー格言を発表します!
井上「気合、気力、気迫が一皿にみなぎるカレーはすごし!!」

こん「世界中にファンを持つ!函館の三昼夜カレー」

創業から70年近く、地元の方から国内外の観光客、ひいては有名アスリートまで魅了してきた「元祖インドカレー小いけ」。カレーが好きで好きで仕方がない――、カレーを心から愛するご主人の実直な姿勢と情熱が詰まったひと皿を召し上がれ!
▲「元祖インドカレー小いけ」さん、ありがとうございました!

井上岳久(カレー大學学長/株式会社カレー総合研究所代表)

カレー業界を牽引する、業界の第一人者。横濱カレーミュージアム責任者を経て現職に至る。カレーの文化や歴史、栄養学、地域的特色、レトルトカレーなど、カレー全般に精通。レトルトカレーは全国から2,000種類を収集し試食している。著書に『一億人の大好物 カレーの作り方』『国民食カレーに学ぶもっともわかりやすいマーケティング入門』など多数。


井上こん

井上こん

1986年生まれのフリーライター。「Yahoo!スポーツナビDo」「SPA!」「nomooo」「ウートピ」などのWEBメディアや雑誌「散歩の達人」などで執筆。

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