伊勢志摩アワビカレー/全国カレー巡礼の旅Vol.19

2016.04.01

今や世界中で愛されるカレー。しかし、カレーの世界というのは奥深いもの。この企画では、カレーの第一人者・井上岳久先生と、私、カレー初心者ライター・井上こんの“ダブル井上”で全国の名店カレーを食べ歩き、先生の解説とともに地域性や歴史背景も交えてさまざまなカレーを紹介していきます!

前回は、北海道・函館で70年近く愛される「小いけ」の絶品カツカレーをご紹介しました。さて、今回はどんなカレーが登場するのでしょうか!?

【Contents】

1.これぞ職人!仕込みに次ぐ仕込み
2.志摩名物、黒アワビ!その驚きの食感とは?

今回の舞台は三重県志摩市。全域が伊勢志摩国立公園に含まれる同市は、伊勢エビやアワビ、宝彩(ほうさい)エビなど豊かな海の幸に恵まれ、古くはこれらを都に献上していたと推定されることから「御食の国(みけつのくに)」としても知られます。
▲志摩市の観光スポットのひとつ、横山展望台。背後には美しい海岸線を描く英虞(あご)湾が広がります

そんな志摩市ならではの贅沢食材を使ったカレーを出すお店がある、という情報を聞きつけやってきた私たち。しかも、あの志摩観光ホテルで13年間勤務されていた方のお店だというじゃありませんか。志摩観光ホテルといえば、2016年5月に開催される伊勢志摩サミットの会場になることが決定している、格式高いホテル。豪華食材×一流ホテル出身シェフの組み合わせに、我らの期待値も急上昇です!
▲ということで「プティレストラン宮本」さん、本日はよろしくお願いいたしま~す!
▲淡いピンク色を基調とした店内は、家族や友人とちょっぴりおしゃれして訪れたくなる空間
こちらがオーナーシェフの宮本しげるさん。志摩観光ホテルで13年間勤め、伊勢市内のレストランなどを経て、2005年に「プティレストラン宮本」をオープン。「ひとつひとつを丁寧に」がモットー。

こん「よろしくお願いいたします!」

宮本シェフ「いらっしゃいませ!こちらこそよろしくお願いいたします」

こん「さっそくですが、こちらには志摩市ならではの食材を使ったカレーがあるそうですね」

宮本シェフ「はい、これです!」
▲どっひゃぁ~!出た、泣く子も黙る“黒アワビ”~!しかも手の平が隠れるほどの大きさ。強烈なビジュアルに脳内メーターも振り切り寸前!

そうです!本日のカレーは、高級食材の代名詞・黒アワビ入りの「シェフおすすめカレー」であります!では、宮本さんにお話を伺いながら調理風景を拝見とまいりましょう。

1.これぞ職人!仕込みに次ぐ仕込み

宮本シェフ「志摩の黒アワビは三陸やほかの地域のものと比べ、格段に大きいですね。うちでは大体300~400グラムのものを使います」

黒アワビの下ごしらえは、白ワイン、大根とともに3時間ほどじっくり茹でるのがポイント。こうすることで繊維が柔らかくなり、特徴的なアワビの弾力を残しつつもプリッと噛み切れる絶妙な食感に仕上がるそう。
▲注文が入ってから、アワビとルウを合わせます。さらにフランベしたホタテやエビ、カニなど海の幸をどんどん投入。いずれも生で食べられる新鮮なものばかり

ルウのベースとなるのは、湯煎したバターの上澄み部分の油で丁寧に炒めた玉ねぎ。1時間ほどかけて飴色に仕上げていきます。ここにリンゴやニンジン、ニンニク、ショウガ、独自ブレンドのカレー粉を加えます。そしてここからが驚き!オーブンで7分加熱、取り出して撹拌……の作業をなんと3時間以上(!)続けるのだそう。

そうしてルウが完成……と思いきや、まだまだ全工程の半分ほど。長く険しき宮本シェフのルウ道!(大丈夫?みなさん、ついてきてる?)

オーブンで水分を飛ばしたルウはパラパラの粉末状になります。ここにトマトやココナッツ、チャツネを加え、さらに加熱。

次に、ブイヨンの紹介をば。鶏モモ肉と香味野菜から3時間かけて旨みを抽出したチキンブイヨンを使うのが宮本シェフ流。これでルウをのばしながら1時間ほど加熱し、味を落ち着かせるために2日間の“睡眠タイム”を経て……ようやく完成です!「フレンチの手法が巧みに使われていて、とにかく手間のかけ方がすごい!職人ですね」と井上先生。

ここで話を戻しましょう。アワビやホタテなど魚介類をルウに投入したところでしたね。
▲仕上げに生クリームをプラスし、まろやかに
▲「シェフおすすめカレー」の登場です!待ってたよ、アワビちゃん~!

2.志摩名物、黒アワビ!その驚きの食感とは?

▲いっただきま~す!
▲まずは何からいこうかな~って、そりゃあもちろんアワビ一択です!
▲伊賀米のサフランライスに豪快にかけちゃう
▲ゴロゴロのアワビにニヤニヤが止まらない~!

まずは豪快に一口でいっちゃいます。肉厚な身に歯を立てると……しなやかな弾力を感じた次の瞬間、難なく噛み切れちゃいました!加熱されたと思えないほど驚異的な柔らかさ。噛めば噛むほど口いっぱいに広がる濃厚な旨みも本場モノならでは。
▲一度に頬張りすぎて喋れないけれど、感動してる最中
▲「本当に大きいな……」
▲パクリ

井上先生「びっくりするくらい柔らかいね!まるで刺身みたいだ。それに臭みもまったくない。プロ中のプロならではの丁寧な下ごしらえと絶妙な火の入れ方だなあ。すごい!」

こん「アワビって加熱すると固くなると思い込んでいましたが、印象が180度変わりますよね。それに、ほかの魚介もおいしい~。ホタテはしっとり、エビなんてプリプリ!」

井上先生「いやぁ驚いた。次にルウを見ていこうか。全体的にクリーミーでマイルドな仕上がりだよね。ブイヨンとチャツネの甘みが折り重なるように広がる感じは分かるかな?」

こん「たしかにルウの深いところに複雑な甘さがあるような……」
▲「老若男女に好まれる優しい味だよね」(井上先生)
▲食べている間、シェフが厨房で黙々とルウを仕込む姿が目に浮かびます
▲と、ここで井上先生があるものに注目!
▲それは、サフランライス!

井上先生「このサフランライス、すごく香りがいいでしょ?これは本物のサフランのめしべを使っている証拠。サフランは高価なので、一般的には粉末状のものが使われやすいんだけど、こちらはライスにもこだわりが見えるね。魚介類によく合っていると思います!」

ここらで現実に戻ります。これだけ豪華な魚介類を使っているとなると、おのずとお値段の方も気になるのですが……宮本シェフ、おいくらでしょうか?
▲「税込3,400円です」

井上先生「それは驚きだな~!もし都内でこれだけのものを出そうと思ったら、1万円超は間違いないですよ!」

こん「黒アワビの本場だからこそ成せるわけですね……ありがたや、ありがたや」

それでは、本日のカレー格言。いっきまーす!
井上先生「カレーを再発見!原点原流を見つけた!!スパイシー、チキンではなく流行に左右されないカレー」

こん「下ごしらえの鬼が作る絶品海鮮カレー」
▲先生、解説をお願いします

井上先生「最近のカレー事情は、インドカレーやスパイスを強く効かせたものが多いけれど、こちらのカレーは古き良きマイルドさで……昔の豪華客船で出てくるようなイメージだね。シーフードカレーって全国的に見ても少数派で、それはつまり、ここまで手をかけないと生き残れないってことなのかもしれない。すばらしい仕上がりです!」
▲仕込みの鬼×志摩の豪華食材=忘れがたき感動の味でした
▲宮本シェフ、ありがとうございました!

井上岳久(カレー大學学長/株式会社カレー総合研究所代表)

カレー業界を牽引する、業界の第一人者。横濱カレーミュージアム責任者を経て現職に至る。カレーの文化や歴史、栄養学、地域的特色、レトルトカレーなど、カレー全般に精通。レトルトカレーは全国から2,000種類を収集し試食している。著書に『一億人の大好物 カレーの作り方』『国民食カレーに学ぶもっともわかりやすいマーケティング入門』など多数。


井上こん

井上こん

1986年生まれのフリーライター。「Yahoo!スポーツナビDo」「SPA!」「nomooo」「ウートピ」などのWEBメディアや雑誌「散歩の達人」などで執筆。

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