神戸カリーブルスト/全国カレー巡礼の旅Vol.22

2016.04.29

今や世界中で愛されるカレー。しかし、カレーの世界というのは奥深いもの。この企画では、カレーの第一人者・井上岳久先生と、私、カレー初心者ライター・井上こんの“ダブル井上”で全国の名店カレーを食べ歩き、先生の解説とともに地域性や歴史背景も交えてさまざまなカレーを紹介していきます!

前回は、“台湾ミンチ“ブームに沸く名古屋から刺激たっぷりの「台湾カレー」をご紹介しました。今回はどんなカレーが登場するのでしょうか?

【Contents】

1.ドイツの鉄板おつまみ、「カリーブルスト」との出会い
2.カレーとソーセージ、両者のバランスが味の決め手
異国情緒あふれる石造りの邸宅が残る旧居留地に、洗練されたクラシックな街並み……今回のカレー巡礼旅は関西きってのお洒落タウン、神戸・元町からお届けします。
▲グラスアーティスト・三浦啓子さんが手がけたガラスのアーチが目印の元町商店街入口。村上春樹氏原作『風の歌を聴け』の映画版で、主人公の「僕」が赤のフィアットで彼女を送り届けるシーンが浮かぶハルキストも多いのでは?(ちなみに同行していた編集S氏は大興奮でした)

1.ドイツの鉄板おつまみ、「カリーブルスト」との出会い

元町商店街からほど近い場所でドイツ国旗をたなびかせる1軒のお店。こちらが今回ご紹介する「imbiss(インビス)カリーブルスト神戸元町」さんです。

井上先生「ここの店主は、ドイツ発祥グルメ『カリーブルスト』を日本で根付かせようとされている方で、『日本初のドイツ・カレーソーセージ専門店』といわれる有名な店です。これまで「よこすか海軍カレー」や「台湾カレー」のようにご当地感のあるものやブームのものを紹介してきましたが、今回はまたひと味違いますよ」

こん「名前からはどんな料理かまったく想像できないなぁ。早く確かめに行きましょう!」
▲表通りから一本裏へ入った、バルやカフェなどセンスのいい飲食店が集まるエリアの一角にお店はあります
こん「先生、ドイツといえばビールですよね!」

井上先生「こんさん、それは後でね……」
▲店主の山本喜彦(やまもとよしひこ)さん(の背中)。Imbissとはドイツ語で軽食という意味だそう

山本さんと「カリーブルスト」との出会いは10年前、大好きなサッカー観戦でドイツを訪れたときのこと。ドイツ語でソーセージを指す「ブルスト」とカレーを組み合わせた「カリーブルスト」のあまりのおいしさに衝撃を受けたそう。「そのとき、日本でこのお店を出そうと思いましたね。ソーセージもカレーもほとんどの日本人は好きでしょ?これはいける、と」

もともと趣味でソーセージやベーコン作りの心得があった山本さん。お店をオープンする2010年まで10回以上ドイツへ渡航し、「カリーブルスト」の研究に時間を費やしました。多いときには1週間で60食も食べたこともあるとか。

ちなみに、山本さんのお顔が出ていないのは「顔が公序良俗に反するから(笑)」とご本人が自粛されているためですが、実際は俳優の大和田伸也さん似のとてもフレンドリーな方です。
▲メニューを見ると、まるで外国のお店のよう。取材中、ドイツ出身のお客さんが来店し、山本さんとドイツ語で楽しげに会話するシーンも

「カリーブルスト」とはどんな食べ物なのか?まずはご覧ください!

2.カレーとソーセージ、両者のバランスが味の決め手

まずは、燻製を効かせたソーセージ「ボックブルスト」にポテト、ビールがつく赤カレー ビールセット(税込1,250円、ソーセージ単品は税込600円)から。
▲実はポテト用の自家製マヨネーズにもファン多し。あまりのおいしさに私たちも「お持ち帰りできますか」と聞いてしまったほど

「カリーブルスト」とは、輪切りにしたソーセージにカレーソースとカレーパウダーをかけたもの。諸説ありますが、1940年代にドイツのベルリンで生まれたと言われています。小腹が空いたときや仕事帰りに1杯というとき、必ずそこにはカリーブルストがあるといっても過言ではないくらい、ドイツでは鉄板のおつまみとして親しまれているそうです。

シンプルに見えて、ソーセージの種類だけで1,500もあるといわれるドイツでは、どの銘柄のソーセージを使うか、どんなソースやパウダーを合わせるかで、そのひと皿に店の個性が表れるとか。意外と深いぞ、カリーブルストの世界。たとえるなら……大阪人にとってのたこ焼きや名古屋人にとっての味噌カツのような存在でしょうか。

では私たちもいただきたいと思います。もちろん、ビールと一緒にね。
▲ここはドイツ流に「プロスト!(乾杯!)」といきましょう!
▲まずは井上先生から……

井上先生「これこれ!カレーとソーセージの味のバランスがいいよね。普通、この2つを合わせるとどうしてもカレーの主張が強くなってしまうはず。しかし、これはソーセージの旨みを引き立てながらもカレーの深みもしっかり感じられる。フルーツの甘みやケチャップの酸味も生かされていて、誰もが好きになる味だね」
▲山本さんがこだわりぬいたソーセージはとってもジューシー!後からカレーソースの辛さがやってきます

こん「甘さと辛さが共存した初めての味!このカレーソース、クミンも効いて香りがいいですね~、クセになってしまいます!それとこのソーセージ、燻製してあるだけありますね。噛んだ瞬間、スモーキーな香りが鼻からふわっと抜けていって……それをビールがすぱっと断ち切って……。さすがドイツの二大名物、合わないはずがない!」
▲日本の某食品メーカーとタッグを組み、6ヶ月かけて完成させたオリジナルカレーソース。山本さんも「本場ドイツのどのメーカーのものよりおいしいと思う」と胸を張る仕上がり
▲こちらは白カレービールセット(税込1,250円)。山本さん曰く「初めての方はまず食感に驚く」そう

続いて登場したのは、「ゲシュウォレネ」という絹引きの白いソーセージを使った白カレー。香草が香る上品な味わいで、皮を取ってあるため、なめらかな口あたりが特徴です。先ほどとの香りや食感の違いがまた楽しい!
▲「日本ではあまりなじみがない食感だけど、このなめらかな感じもいいなぁ」
▲「どっちにしてもビールに合います!」
▲そうそう、30種類のスパイスも自由に使うことができるので……
▲チリコンカンにハラペーニョ、ガーリックパウダーと味を変えて楽しむのもおすすめ!意外にもゆず唐辛子と好相性で、カリーブルストの懐の深さに驚きました

いろんな味を心ゆくまで楽しんだところで、恒例カレー格言で締めさせていただきます!
井上先生「世界には様々なカレー文化あり ドイツはカレー+ソーセージ」

こん「ジューシーなソーセージが甘ピリカリーに合う!」
▲マグナムサイズのジョッキと一緒にハイチーズ!

今も年1回はドイツへ行き、新規開拓に余念がない山本さん。カリーブルストが全国区になる日もそう遠くないかも?「imbissカリーブルスト神戸元町」さん、ありがとうございました!

井上岳久(カレー大學学長/株式会社カレー総合研究所代表)

カレー業界を牽引する、業界の第一人者。横濱カレーミュージアム責任者を経て現職に至る。カレーの文化や歴史、栄養学、地域的特色、レトルトカレーなど、カレー全般に精通。レトルトカレーは全国から2,000種類を収集し試食している。著書に『一億人の大好物 カレーの作り方』『国民食カレーに学ぶもっともわかりやすいマーケティング入門』など多数。


井上こん

井上こん

1986年生まれのフリーライター。「Yahoo!スポーツナビDo」「SPA!」「nomooo」「ウートピ」などのWEBメディアや雑誌「散歩の達人」などで執筆。

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