神戸中華カレー/全国カレー巡礼の旅Vol.23

2016.05.13

今や世界中で愛されるカレー。しかし、カレーの世界というのは奥深いもの。この企画では、カレーの第一人者・井上岳久先生と、私、カレー初心者ライター・井上こんの“ダブル井上”で全国の名店カレーを食べ歩き、先生の解説とともに地域性や歴史背景も交えてさまざまなカレーを紹介していきます!

前回は、ドイツ名物「カリーブルスト」の日本初の専門店を訪ねました。さて、今回はどんなカレーが登場するでしょう?

【Contents】

1.「中華料理屋なんだけどね」お客さんの半数以上が頼むカレー
2.中華の基本技法が生む抜群の食感!


横浜中華街、長崎新地中華街とともに日本三大中華街の1つに数えられる神戸の中華街、その名も神戸南京町。元町通と栄町通にまたがる一帯に約100軒もの中華料理店がひしめくにぎやかなエリアです。
▲見ればみるほどじわじわくる像と一緒にこんにちは!
もうお気づきですよね。今回のテーマは、ずばり「中華×カレー」。中華料理店では鶏ガラや豚骨を炊いたスープを使った激ウマカレーを出すところも多く、近年グルメ雑誌やテレビで中華街カレーが取り上げられることもしばしば。

1.「中華料理屋なんだけどね」お客さんの半数以上が頼むカレー

本日お世話になるのは、広東料理のお店「香美園(こうびえん)」さんです。
▲井上先生「南京町でもカレーを出すお店は増えているけれど、その中でも『香美園』は古くから地元に愛されています」

お話を伺ったのは、初代店主の藤原容就(やすつぐ)さん。「『香美園』っていうのは、もともとこの場所にあったお店の名前をそのまま引き継いだだけ。48年前のことかな。看板にある『民生支店』の由来?あぁ、それは私の兄が近所で『民生(みんせい)』という中華料理店を営んでいるので、じゃあうちは民生の支店という立ち位置でいこう、となったんです」
▲現在は2代目店主である息子さんが鍋を振っていますが、この日は容就さんもお店にいらっしゃいました

広東料理を軸に日本人が食べやすいようアレンジした中華料理が中心で、青椒牛肉に麻婆豆腐、餃子にワンタン麺……そのラインナップは「さすが中華料理店!」といった具合。その中でもランチで6割以上のお客さんが注文するメニューというのがこちら、「中華カレー(小650円・税込、大800円・税込)」です!
▲中華カレー(小)。小でもなかなかのボリュームです

欧風カレーでは見られない、黄色いルウが特徴。
「中華料理屋なのになぜかカレーが人気なんだよねぇ(笑)」と初代。

中華カレーの歴史は古く、1945(昭和20)年、「民生」創業当時から存在するそう。「香美園」をオープンさせた際も、この中華カレーはメニューに加えられました。さて、70年続く中華料理店のカレーとは一体どんな味なのか?その秘密を探るため、厨房をのぞかせてもらいました。

具材は農家から直送される淡路産玉ねぎと、赤身と脂が好バランスな鹿児島産豚、そしてラーメン用スープで湯がいたジャガイモ。いたってシンプルな構成です。「カッカッカ」と軽快な音を立てながら、お玉を鍋に叩き付けるように素早く具材に火を通し、そこへ香味野菜とともに半日炊いた鶏ガラと豚骨のダブルスープを投入します。それぞれの旨みをコトコト煮出したスープを一口飲ませていただくと……角や雑味がないこの上なく優しい味。
▲さらにこだわりのカレー粉をひとさじ、片栗粉でとろみをつけて完成

中華ならではの高火力で一気に仕上げるさまはダイナミックなライブのよう。心もお腹もワクワクしっぱなしです!

2.中華の基本技法が生む抜群の食感!

それでは、中華×カレーのコンビをじっくりと味わいたいと思います。(中華らしく円卓でね)
▲いただきま~す!
▲まずは一口
▲お?あとから辛さが追いかけてくるぞ

こん「鶏ガラと豚骨の旨みを中心に構成されている感じ。さすが中華のプロ!スパイスを使いこなすだけがカレーじゃない、出汁でこんなにも違うんだという発見がありました」
▲「たしかにこの中華出汁は見事だね。家庭ではなかなか真似できないよ」

井上先生「カレー粉・出汁・具材。一見セパレートされているようで、口内で初めて調和されるね。香辛料を多用せずシンプルに仕上げてあるからこそ、食材が持つ本来の甘みや旨みをストレートに感じられるわけだね」

こん「それに、カレーといえば無条件に煮込むものだと思っていましたけれど、中華カレーの場合、注文を受けてから具材を炒めるのが大きな違いですね」

井上先生「そうだね。煮込んでいないから、玉ねぎもシャキシャキとしていて歯ざわりがいいね」

こん「そういえば以前、『中華は野菜自身が炒められていることに気がつかない速さで炒める』といった話を聞いたことがあります」
▲井上先生「それ、ほんと……?」こん「ほんとです!」
井上先生「こちらで使うのは熱に強いタイプのカレー粉。中華の火力に負けることなく、しっかりスパイスを感じられるよね」

最後にもう1品ご紹介します。3年ほど前にメニューに仲間入りしたという「カレー麺(小670円・税込、大930円・税込)」は、先ほど登場したダブルスープを使った塩ラーメンにカレーあんをかけた、香美園ファンにはたまらないメニューです。
▲カレー麺(小)

実はこれ、もともとはまかないとして食べられていたもの。初代曰く「ある日偶然、常連さんに見つかっちゃって(笑)」正式メニューになったとか。
▲「仕上げのゴマ油が食欲をそそってgood!」
▲「先ほどより塩が効いていてパンチ力高め。夏に汗をかきながらハフハフすすりたいですね」
▲2種類の国産小麦粉を独自にブレンドしたしなやかな細麺に、とろとろのカレーがよく絡むこと!
▲「それにしてもよく食べるな……」と思われていたかもしれません

それでは、本日のカレー格言を発表します!
井上先生「中華の調理技法を活かしたカレー 神戸のザ・ロ加哩飯だ」

こん「70余年の味!ノスタルジックに食すべし!」
▲最後は2代目・良明さんと。香美園さん、ありがとうございました!

井上岳久(カレー大學学長/株式会社カレー総合研究所代表)

カレー業界を牽引する、業界の第一人者。横濱カレーミュージアム責任者を経て現職に至る。カレーの文化や歴史、栄養学、地域的特色、レトルトカレーなど、カレー全般に精通。レトルトカレーは全国から2,000種類を収集し試食している。著書に『一億人の大好物 カレーの作り方』『国民食カレーに学ぶもっともわかりやすいマーケティング入門』など多数。

井上こん

井上こん

1986年生まれのフリーライター。「Yahoo!スポーツナビDo」「SPA!」「nomooo」「ウートピ」などのWEBメディアや雑誌「散歩の達人」などで執筆。

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