富山で錫のぐい呑み作り体験/クリエイター女子が行く!Vol.16

2016.03.04 更新

こんにちは。フリーでイラストレーターをしています五島です。「ものづくりに興味はあるけどどこで体験できるのか分からない、なかなか行動に移せない……」この企画は、そんな悩めるあなたのために、クリエイター女子を代表してわたくしが全国各地で「ものづくり」を体験しまくります。そして、ものづくり体験の思い出を描き下ろしのイラスト付きでお送りします!前回は富山で細工かまぼこ作りを体験しました。さてさて今回は……?

あたたかな春が待ち遠しい今日このごろ、皆様いかがお過ごしですか?
今回は、まだまだ寒さが残る富山県で、富山の伝統産業と言われている“アレ”を作ります!

佇まいに、ときめいて

こちら本日お世話になる、モノづくりを軸にしたお店「HAN BUN KO(はんぶんこ)」さんです。
▲外観はこんな感じ

レトロでお洒落な雰囲気ですね。
はんぶんこ、っていうネーミングも日本らしくて可愛いなあ。

元々この建物は金物屋さんだったそうで、約150年前に建てられた建物なんですって。
歴史を感じる作りに、ときめくこと間違い無し!

中には、ものづくり体験を行うための「FABスペース」と呼ばれる図工室や、さまざまなカルチャー本が並ぶ図書スペースも。そして奥には蔵をリノベーションしたセレクトショップも併設されています。
▲ひょえー!
▲ひょえええー!

なんてこった。ハイセンスな空気が満ちあふれまくっている。
「作り手さんの顔がきちんと見えるもの」にこだわってセレクトされた商品が並ぶショップスペースは、風格ある蔵の存在感も相まって、圧巻の美しさ。

外観も可愛らしかったけれど、中はも~っとお洒落!
乙女心を超くすぐられます。

こんな素敵な空間で、今日は何を作るのでしょう?
▲まずは、先生にご挨拶

本日ものづくりを教えてくれる、北(きた)先生!よろしくお願いいたします。

先生「はい、こちらこそよろしくお願いいたします。今日は富山の伝統産業である、鋳物(いもの)作りを体験していただきます。作るのは、錫(すず)のぐい呑みです!一般の方にはあまり馴染みが無い製法なので、楽しんでいただけると思いますよ」

い、いもの?すず?
なにがなんだかさっぱり分からない。
この連載もかれこれ十数回目になりますが、まだまだ世の中知らないことだらけのようです。
ものづくりの世界は底なし沼だああ!

先生「今日は、生型鋳造法という方法でぐい呑みを1つ作ります。鋳型(いがた)用の砂を押し固めて成形していくんですよ。まずは木枠の中に型を置き、上から砂をかけましょう」

言葉で聞いているだけだとチンプンカンプンです。
でも本格的であることはなんとなく分かります。緊張してきた。

先生のお話をしっかり聞いて、いっちょやってみっかー!

へんてこな触りごこち

▲こちらがぐい呑みの元となる型
▲木枠の中に型を置いた状態
▲鋳型用の砂は赤みがかった色

ちょっとちょっと、みなさん。
驚きです。戸惑いです。
まだ戸惑うポイントどこにもないだろう、と思われているでしょうけど、あるんですよ。

そう、この砂!!!!
なんかもう、めちゃくちゃ面白い触り心地なんです。
サラサラなんだけど、ギュッと握ると固形になるの。変なの。

先生「あはは、確かにみなさん最初は砂の感触に驚かれますね。少し油を混ぜてあるので、押すと形が残ります。そうやってしっかり固まることと砂の粒子が細かいことが、鋳物作りには重要なんです」

へええ、鋳物作りにバッチリ適している砂なんだ。

ぼーっとしながらずっと握っていたくなる中毒性がありますね、この砂。
上手く伝えられないけれど、片栗粉のようなギュイッとした感じに近いかも。
▲サラサラの砂を
▲ぎゅ~っと握ると
▲ハイ、固形!

ついつい砂で遊びすぎてしまった。作業、作業!
まずはザルのような道具で砂を濾(こ)して、サラサラな砂を型の上に振りかけます。

お菓子作りでココアパウダーをふるっているような感覚です。
▲ごしごしこすります
▲なんだか美味しそう

お次は埋もれた型に優しく手をそえて、砂を押し固めていきます。
少し押しただけでしっかりと砂が固まる感覚があるぞ~、楽しい!

先生「基本的には砂を敷き詰めていくのが今日の最大の工程になるので、続けての作業になりますが頑張ってくださいね」

ふむふむ、なんとなく状況がつかめてきました。
木枠いっぱいになるまで、砂をかけては押し固める作業を繰り返せば良いんですね。
▲ひたすら砂を敷き詰めまくる

気持ちいいから飽きないの

砂をふりかけては固め、かけては固め。
先生の言う通り繰り返しの工程です。

普通、単純作業って飽きてきますよね。
でも砂が気持ち良いからか、まったく嫌にならないんですよこれが。
人間って不思議なもので、手触りが良いものはいつまででも愛でていられるんですよ、多分。
赤ちゃんのほっぺたとか、猫のお腹とか。
「ものづくりをしている」というよりは「頭の中を真っ白にして癒されている」といった方が近いです。ぼけ~……。

ああ、いかんいかん!しっかりと作業に集中しなくては。
▲しっかりしっかりトントントン

砂の粒子がとても細かいので、手で押さえただけでかなり埋まっていく。
そこにさらに砂を足して、道具でさらにグイグイ押し込みます。
▲エイヤッ
▲際までしっかり敷き詰めて

なんとか埋めきったぞー!いえーい!

先生「お疲れさまでした!と言いたいところなのですが、あとひと頑張り。その木枠をひっくり返して、上に木枠を重ねてもう少し砂を詰めていきます」

なあるほど。
いつもなら、ええー!? と言っているところですが、砂が気持ちいいのでまだまだがんばれそうです。
▲うおおお

ひっくり返そうとして、びっくり!
最初に置いた型の周りに、ちゃんと砂が敷き詰められて固定されています。
この型を外して、錫を流し込むということか。
ここまで黙々と作業をしてきてやっと理解しました。(おそすぎる)

ひっくり返した木枠の上にもうひとつ木枠を重ね、先程までと同じように砂をかけていきます。
砂に触っていられるのもあと少し……。砂、持って帰りたい……。
▲あとあと錫を流し込むための流し込み口も設置

上に重ねた木枠にも砂を敷き詰め、ふたつの木枠をそーっと離すと……。
▲おおおおああああ

め、めちゃくちゃ綺麗に砂型がとれているではありませんか!

なんかもうこれで満足な気分なんですけど、ここからが本番ですよね、おそらく。

先生「そうですね。このあと型を取り出して、また木枠を重ねて、穴に溶かした錫を流し込んでいきます。木枠を重ねる時はズレて砂が崩れないよう、慎重に、を心がけてください」

もし今、ヤンチャな子供とかが現れてこの砂型を握りつぶしたら、またイチからやり直しってことですよね。
固まっているとはいえ、砂は砂。丁寧にゆっくりと扱わなければ!

トロトロなのに、ずっしり重い

▲型を取り外し、先生が微調整をしてくれます
▲重ねる瞬間の緊張感ヤバイ

息をするのも忘れ、集中!
砂の重みを感じます。
おそらく、ピタッと重なったのではないでしょうか。

それにしても緊張したあああ。手がプルップル震えてしまいました。

先生「けっこう体力を使いましたよね。ひとまずお疲れさまでした!さあ、ここからもはじめての経験だと思います。これから使う、溶かした錫をおたまですくってみてください」
▲!?!?

なにこれ、すっごく重い。
鉄のカタマリ!といった感じです。
お湯とか、せめてシチューくらいの重さだと思っていました。
今日は何回びっくりさせられるんでしょう。

先生「錫は232度と、鉱物の中では低温度で融けるので、もちろん質量は重いままですが、こんな風にお鍋の中でもトロトロになります。これを今から、木枠に作った流し込み口に注ぎます。この作業は私が行いますので、よく見ていてくださいね」

先生、かっこいい……。
わくわくしてきたぞう~!
▲たらららら~

本当に一瞬の出来事でしたが、キラキラの不思議な液体が注がれる様子は、もはや神秘的。
同じ女性ですが、先生の慣れた手つきには思わず見とれてしまいます。

あとは冷めるのを待つだけ!
ショップを見たり、本を読んだり……。
まだかなまだかな~。そわそわ。
▲まぶしいくらいに輝いている

まぶしくって直視できない

5分程まったところで、いよいよ木枠を取り外します。
ちゃんとできているかなあ~。
▲よいしょ、ほれっ!

……おおおおおおお!
できてる、できてるー!
ぴっかぴかのぐい呑みが顔を出しています。
本日3度目のびっくりがここに極まりました。
▲なんだか発掘しているみたい

周りの大きな砂を落とし、ぐい呑みについた砂も筆でそっと落としていきます。
残すは仕上げの作業のみ。
▲余分なところは、先生が削り落としてくれます
▲ヤスリで表面を整えて……

仕上げに紙ヤスリでしっかり磨いたら、ついに完成~!
▲どどんっ

うう、直視できないくらいピカピカだよお。
コロンと丸いフォルムに、クールな輝き……このギャップがまた愛くるしい!

富山が誇る日本の伝統産業である鋳物ですが、現代的な雰囲気を感じることもできる、不思議な佇まいですね。

先生「お疲れさまでした!すごく綺麗にできましたねー。錫は水を腐りにくくすると言われているので、お酒だけでなくお花を生ける花器としても使えますよ。あとはアイスクリームを入れても溶けにくくて良いですね。これからもものづくりの楽しさをお伝えしていきたいので、多くの方に遊びにいらしてくれると嬉しいです」

たくさん助けていただいた北先生、HAN BUN KOさん、ありがとうございました!
▲富山県は、いいところだぞー!

それにしても、びっくりだらけの1日でした。
最初はなぜ砂を詰めるのかも分からないところからはじまって、最後は中から美しい器が出てきて。
こんな製法を考えついた先人は、もう超天才ですよね。

手間をかけて、最高の材料を見つけて、単純な作業を繰り返して……経験して見えるモノの形は、知らない頃と大きく違って見えます。

どうしてこんなに値段が高いのか?
どうしてこんなに時間がかかるのか?

モノに対して疑問を持ったその瞬間が、ものづくり体験へ出かけるべきサインなのかもしれません。

そんなところで今回は、真面目に締めさせていただきます。
ドロンじゃー!

きょうのいちまい



五島夕夏

五島夕夏

桑沢デザイン研究所卒業。学生時代ロシアの絵本に大きく影響を受け、絵本画家を志す。現在はサロンのレセプションをしながら、イラストレーターとして活動中。

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