熊野化粧筆作り体験/クリエイター女子が行く!Vol.19

2016.04.15

こんにちは。フリーでイラストレーターをしています五島です。「ものづくりに興味はあるけどどこで体験できるのか分からない、なかなか行動に移せない……」この企画は、そんな悩めるあなたのために、クリエイター女子を代表してわたくしが全国各地で「ものづくり」を体験しまくります。そして、ものづくり体験の思い出を描き下ろしのイラスト付きでお送りします!前回は倉敷でオリジナルジーンズ作りを体験してきました!さてさて今回は……?

どうも、こんにちは。
本日は広島県の熊野町にやってまいりました。
広島、初上陸じゃけえ~!

女子ならだれもが知っているアレ

今回はここ熊野町で、化粧筆の手作り体験をしたいと思います。

女子の身だしなみを整える必需品、化粧筆。
私もいくつか持っているのですが、その作り方や使用方法はいまいち理解できていません。
ということで、今回は体験をしながらそもそも化粧筆がどういうモノなのか、わたくし学びにいってきまーす!
▲立派なたてもの

こちらは、「晃祐堂(こうゆうどう)」さん。
元々は書道筆の技術を汲んだ、伝統ある熊野のメイクブラシを取り扱っており、細部にまでこだわった製品を製造しているんですって。
そしてここ熊野は、化粧筆製造の国内シェアがなんと約80%!そんな「筆の本場」で化粧筆の手作り体験ができるなんて素敵!
▲KOYUDOさん、名前もかっこいい!

こちらの建物内では製作体験だけでなく、実際に職人さんたちが化粧筆の製造を行っています。
展示スペースも併設されており、定番商品から新作まで、商品の購入も可能です。
▲こ、神々しい

化粧筆の存在はもちろん知っているし持っているけれど、普段なんとなくで選んでいるんだよなあ……。
今日はどんな筆を作ることができるんだろう?
▲まずは先生にご挨拶

本日お世話になる関岡先生です。
どうぞよろしくお願いいたします。

先生「はい、こちらこそよろしくお願いいたします。今日はチークブラシをおひとつ作っていただきますよ。途中で工場見学もできるので、ぜひ楽しんでいってくださいね」

作る工程もあとで見られるんですね、楽しみにしておきます!

そもそもなぜ熊野町で筆が有名になったかというと……。
さかのぼるは江戸時代末期、当時熊野の人々は農業で生計を立てていました。
しかしそれだけでは生活を支えきれず、奈良や和歌山に出稼ぎに出ていたそうです。
その出稼ぎの帰りには奈良や大阪、兵庫で筆や墨を手に入れて、行商しながら帰っていたのが、熊野と筆を結びつけるきっかけになったと言われています。

なるほど、出稼ぎ先で学んだ技術を、地元に持ち帰っていた、ということなんですね!
深い歴史を持つ熊野筆、ますます興味が湧いてきました。
▲作るのはこちらのブラシ

今日作るのは、毛先がバラの形をした化粧筆。
植木鉢に植えられたようなデザインが女性らしく、とっても可愛い!
見本を見ただけじゃぜんぜん作り方が分からないけれど、型にはめたりしているのかな……?

先生「惜しいですね。型には入れるのですが、それを振動する機械の上に置いて、指でそっと形を整えていくんです。言葉じゃ伝わりにくいと思うので、まずは私が手本をお見せしますね!」

振動する機械!?
なんだなんだ、ぜんぜん想像していたのと違う気がする。

ブルブル震えて整えて

▲一体何が起こるのでしょう

機械の上に型に入った毛束を置きます。
すると、ブルルルルルルル~ッという音と共に、機械が振動しはじめました。
わあわあ、筆の毛が上下している!こんなに揺れて大丈夫なのでしょうか。

先生「型に毛束をはめ、こうして振動させると形が浮き上がってきます。それを指で優しく整えるんですよ」
▲慣れた手つきで形を整える先生

最初は何が起こっているのか分かりませんでした。
しかしじっくり見つめているとバラの形が浮かび上がって、毛束が美しい筆へと姿を変えていきます。
……すごいすごい!マジックみたい!

こうしてできた毛束を糸で束ね、ワイヤーを巻き付けたら筆部分の完成です。
▲バラが咲きました

先生「通常の体験は毛束を整えるまで。糸で束ねる工程はかなり崩れやすく難しいので普段は私たちが行っているんです。しかし今日は特別に五島さんがやってみますか?ぜひ、この難しさを体感してみてください(笑)」

なんと!貴重な体験をさせていただけるんですね。
先生のやった通りにやれば上手くできそうな気がします。
まずは綺麗に形を整えられるかが心配だなあ……。
▲最初はなんでもない毛束の状態です
▲機械に置いて、スイッチオン!

ブルルルルルルル~ッ。
あわわわ、思ったよりも振動が強くてびっくり!
ちゃんと型に手を添えていないと、毛束ごと倒れてしまいそうです。
指先までしっかりと伝わる振動に、どうすれば良いのか分からずあたふた。
押さえていない方の手で形を整えないといけないのですが、あっけにとられて何もできません。

先生「結構揺らして大丈夫ですよ。毛が飛び出してきたら抜いても良いので。そっと手を添えてまあるくバラの形を作ってください」

できあがるまでの時間は、およそ3~5分。
ぼーっとしていると形が崩れてしまうので、素早く丁寧に人差し指を当てていきます。
▲ちょんちょんちょんと優しく触れます

なんだろう、このちょっとしたパニック状態。
はじめて陶芸をした時の感覚に似ているかもしれません。
機械の動きに慣れて、丁寧に丁寧に成形する。
陶芸も、焦ると一気に形がくずれてしまいます。

見ているときはとっても簡単そうだったのに、先生はやはり凄腕なのだ~!
短くてなが~い5分間が終わりました。

▲なんとかバラになりました

ここからが、先生の言っていた難しい作業。
器用なところを見せて挽回したいところです。

先生「毛束が崩れないように、慎重にくるっと糸で結びます。その上からさらにワイヤーを巻いたら、ひとまず完成です!軸付けの仕上げはこちらで行うので、そこまでがんばってください」
▲そーっと、そーっと……

ワハハ!あのね。めっちゃ難しいですこれ。笑っちゃうほどに。
ちょちょいのちょいで結んでやろうと思っていたんですけど、細くて繊細な糸の扱いは一筋縄ではいきません。
あんまり力を入れすぎると、せっかく綺麗に整えた毛束がギュッとズレてしまうんですよね。毛が散らばってしまうんです。
ふわっふわで柔らかい毛を糸でまとめるって、こんなに大変なのか~!
▲先生もお手上げのようです
▲違いの差は歴然!

左が先生が作った筆、右が私。
言うまでもありませんが、私の筆はぴょんぴょん毛が飛び出し、せっかくのバラの形が崩れてしまいました。
一方先生の筆には、ぴたっと平行にワイヤーが巻き付いているのが分かります。

くううううう!
完全敗北、不器用の極み。
驕ってすみませんでした、出直します!

先生「やはり、少し難しかったですね。でもはじめてで簡単にできてしまったら、僕達の仕事が無くなってしまいますよ(笑)。何年も手を動かし、最高の技術で最高の製品を提供できるように、日々つとめていますから」

先生、かっこいい……!
その通りでございます。仕事にしようと思ったら楽しいだけじゃない、ものづくり。
日々の積み重ねの大切さは、どんなことにも通じます。
▲仕上げは先生にお任せ

先生の素早い手さばきは、いつまででも見ていられそう。

ていねいな気持ちが筆になる

▲ずらっと並んだハート型の化粧筆は晃祐堂さんの人気商品

体験後は工場見学をさせてもらいました。
均等に作られた美しい化粧筆に、うっとり!
顔に直接当てて使うものだけに、工場内はとっても清潔感があり衛生的。
こんな風に人の手で作られたブラシを使ってお化粧したら、明るい表情が作れそうだなあ。

ひとくちに化粧筆と言っても、その種類は様々。
洗顔ブラシ・フェイスブラシ・チークブラシなど、使用用途によって少しずつ形状も変わってくるんです。
また、今回の体験ではヤギの毛を使用しましたが、他に灰リスの毛や人工毛を使うことも。
どんな人にも満足してもらえる筆を作るべく、職人さんたちは丁寧に正確に、作業を繰り返しているんですね……。
勝手に想像して胸が熱くなってきた~!
▲なんと、こんな製品も

たくさんの化粧筆を製造している晃祐堂さんですが、中にはくまモンとのコラボ製品もあるんです。
なんといってもスゴイのがこのくまモン、上から色を塗っているのではなく、型に一本一本色付けされた毛をはめて作られているんです。
なかなか大量生産が難しい商品なんですって。すごいなあ~~!

工場見学を終え、先ほど作った化粧筆の軸部分に名入れする瞬間を今回は特別に見せていただきました。
▲持ち手になる「鉢植え」を機械にセットしてプリント

今はレーザーで一瞬にしてプリントできちゃうんですね……!
歴史ある化粧筆と現代技術の融合、お見事です。
▲きれいに名前が入りました

この鉢植えに軸付けしてもらい、ついにオリジナル化粧筆、完成~!
▲じゃじゃじゃ~ん!

うわ、うわ、うわ~!
ピンクのグラデージョンがなんとも美しい。
使うのがもったいなくて、ずっと飾っていたくなっちゃいそう。
その触り心地もバツグンで、柔らかすぎないコシのある毛が、肌を優しくつつみます。
ほんっとに、ぜんぜんチクチクしないの!
これなら肌への負担なく、毎日使えそうです。
明日から最高級の化粧筆で、とっておきのメイクをしたいと思います。

手取り足取りサポートしてくださった関岡先生、今日はありがとうございました!

先生「はい、本日はおつかれさまでした。こうして体験と共に、化粧筆の歴史や作り方も学んでいただけてこちらも嬉しいです。またぜひ、いらしてくださいね」
▲先生と記念のツーショット

外に出るのが楽しくなるね

後日、ピカピカの化粧筆を持って、ある人に会いに行きました。
▲こんにちは~!

おしゃれな雰囲気漂うこちらの方は、いつもお世話になっている美容室のオーナーである、間島さんです。
実は間島さん、メイクさんとしての顔も持っています。

そう!今日はそんなプロである間島さんに、私が作った化粧筆を使ってメイクをしてもらいにやってきました。
▲プロも納得の使い心地

間島さん「柔らかくて気持ちいいブラシだね。粉も綺麗につくし、優しい感触だよ」
▲チークを綺麗に乗せてもらいました

すごい!ふわっとしていて、いつものお化粧品じゃないみたいな色づき。
肌が痛くならないし、なんだか顔色も明るくなりました。

間島さん「やっぱりメイクするにあたって、良い道具を使うのはとても大事だと思うよ。とくにブラシは仕上がりをすごく左右するからね。その点で言うと、この化粧筆はとても使いやすいです」

プロの方にも褒めていただき、私も嬉しくなりました。
これで、外に出るのがまた楽しくなりそうです!
女子になれちゃう、素晴らしい体験でした。
▲間島さん、ありがとうございました!

(おしまい)

きょうのいちまい

五島夕夏

五島夕夏

桑沢デザイン研究所卒業。学生時代ロシアの絵本に大きく影響を受け、絵本画家を志す。現在はサロンのレセプションをしながら、イラストレーターとして活動中。

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