人々が行き交う那覇市のレトロな市場で「沖縄食材」と「人の温かさ」に出会う

2016.04.16

採れたて新鮮な食材やご当地食材を豊富に扱うお店が集まり、地元の食生活と訪れる人の胃袋を満たしてきた那覇市の「牧志(まきし)第一公設市場」。沖縄を楽しみ尽くすのなら、まずは市場でお腹を満たしてから行動しよう。

「ゆいモノレール」安里、牧志、県庁前、美栄橋駅の各駅から歩いて数分の距離にあるのが、観光客で賑わいを見せる国際通り。そのほぼ中心に存在する「むつみ橋」から続くアーケード街を歩いていると現れるレトロな市場。地元の人をはじめ、県外から訪れる観光客にも愛され続ける那覇市の台所、「牧志第一公設市場」だ。この市場には都会では忘れられかけている人の温かみとふれあいが溢れている。
国内外から訪れる観光客で連日賑わう市場。おじい、おばあが培ってきた古き良き姿を残しながら、若い世代の店主が切り盛りする店舗も並ぶ。この温故知新な雰囲気の独特な心地よさが、世代を問わずに人気を集める理由の一つなのかもしれない。
軒先を覗けば、目にも鮮やかな魚が並ぶ鮮魚店をはじめ、肉や加工品を扱う商店、採れたての野菜やフルーツの並ぶ八百屋など、欲しいものは何でも手に入りそうな品揃えに思わず購買意欲も駆り立てられる。

今回はそんな牧志第一公設市場を散策して出会ったお店をいくつかご紹介したい。

~長嶺鮮魚店~色彩豊かで美味
その日の朝に採れた南国の鮮魚を販売

一軒目にご紹介するのは創業60年以上、毎朝近海で水揚げされた鮮魚のみを提供してきた「長嶺鮮魚店」。目新しい海の幸が並ぶ軒先に観光客の多くが足を止める。
▲地元で水揚げされた魚介類はどれも新鮮!

カラフルな魚が並ぶ熱帯魚店のような光景は、なかなか沖縄以外の鮮魚店ではお目見えしない。そんな珍しさからか、道行く人の視線を一身に集めているこの魚たち、果たしてどんな味なのか。
▲長峰鮮魚店の名物女将

「見た目はカラフルで派手だけど、食べると深みのある味がクセになるんだよ。人も魚も見た目で判断しちゃいけないねぇ」
そう快活に話してくれたのは長峰鮮魚店の女将さん。特におすすめなのは鮮やかな緑の鱗が特徴のイラブチャーという魚。程良く口の中でほどける食感が特徴の白身魚で、見た目の鮮やかさも相まって人気の高い魚なのだという。
▲見た目からしてザ・南国の魚!

この魚がイラブチャー(アオブダイ属ヒブダイ)。値段は大きさや時期により変動。南国の海を想像させる体色は雌と雄で差があるのだとか。生息する地域によっても色彩は違うそうだが、主に黄色が多いのが雌で、青色が多いのは雄とのこと。
イラブチャーの刺身は程良い口当たりと、ほんのり甘さとコクのある味わいが特徴。身が柔らかくなった真鯛という印象が伝わり易いだろうか。新鮮なものほどクセが少ないので刺身のほか、唐揚げや天ぷらなどもおすすめ。
▲ぱっちりした目が特徴のアバサー(ハリセンボン)も観光客に人気

ほかにも、アカジンミーバイ(スジアラ)やアカマチ(ハマダイ)、アバサー(ハリセンボン)などの高級魚も並ぶ。

購入した鮮魚は、食べ方に応じてその場で捌いてくれる。食べ方をお店の人と相談して購入できるのも魅力の一つ。また、この公設市場の2階には、1階で購入した食材を料理してくれる食堂もあり、魚を新鮮なうちに食べたい派にはうれしい限り。女将さんの軽快なトークや魚の豆知識などを聞きながら好みの魚を選ぶ。いつも以上に食べるのが楽しみになることうけあいだ。

~つばめ食堂~市場で購入した食材も調理
多くの観光客が舌鼓を打つ大衆食堂

市場の2階にはレトロな佇まいの食堂が立ち並ぶ。観光客を始め市場内や周辺で働く人の憩いの場として営業してきた食堂はどのお店も人気。今回はその中でも、牧志第一公設市場で購入した食材を調理するサービスを始めた第一人者の「ツバメ食堂」にお邪魔した。
▲「ツバメ食堂」の経営者、張(ちょう)さん。市場の伝統を守る若手のひとりだ

創業30数年。祖母と母親が始めたという「ツバメ食堂」を引き継ぎ、経営を切り盛りする張さん。お客さんが市場で買った食材を調理する通称「持ち上げ」は張さんの祖母が始めたサービスだという。

店舗同士のコミュニケーションが活発な市場において、1階と2階を隔てない「ご近所付き合い」が続いているのも、このサービスがあるからかもしれない。
今回はそんな持ち上げ制度発祥の「ツバメ食堂」おすすめの沖縄伝統料理を頂いた。
ゴーヤーチャンプル税込650円。新鮮なゴーヤーを使用し、手間をかけて下処理することで苦さを抑えたゴーヤーチャンプルは、ほのかにアクセントとなる塩加減がいい。ゴーヤーと豆腐の旨味が存分に引き出されている。ゴーヤー特有の苦味が苦手だという人にもぜひ食べてもらいたい一品だ。
ソーキそば(大)税込650円。ソーキそばに乗っているスペアリブや人気メニューのラフテー(角煮)は、じっくり煮込んで作っているので、箸で崩して食べられるほど柔らかい。絶妙な甘辛具合で頬張るごとに食欲を掻き立ててくれる。泡盛のお供に角煮をつつきながら…というお客さんも少なくないそうだ。
▲創業時から増え続けてきたメニューは50種類以上!

「味の個性というのかな…創業当時から地元の人、観光で来る人、どちらにも満足してもらえる味付けを守ってきました」という張さん。この日も国籍を問わず多くのお客さんで賑わっていたが、それもお店独自の味を守り続ける努力の賜物なのだ。

ちなみに「持ち上げ」で調理をしてもらう場合、まずはお店に「持ち上げ」の希望を伝えてから市場に買い物に向かう。食材によってオススメの食べ方があるので、調理の仕方などに迷ったらお店の方に相談してみよう。ちなみに「ツバメ食堂」では3品の注文を目安に別途1人税込500円で購入した食材を調理してくれる。その他、注文数や調理方法により「持ち上げ」調理の金額は変わるので、まずはスタッフの方に気軽に問い合わせてみよう。

~沖縄自慢(うちなーじまん)~
沖縄食材の珍しい加工品や果物を販売

▲沖縄各地の珍しい加工品や食材を取り揃えた「沖縄自慢」

お土産などに持ち帰るのにおすすめしたいのは加工品食材。公設市場内には沖縄県内で生産された独自の加工品を販売する店舗も並ぶ。真空パックや瓶詰めされた商品が並ぶお店の中で、様々な加工品を取り揃えた「沖縄自慢」をご紹介。
▲扱う商品は全てオーナーのセレクト品。品目数が多くて把握するのが大変そうだ

こちらのお店ではオーナーが独自のルートで仕入れる「豚肉みそ」や「ジーマーミー豆腐(ピーナッツ豆腐)」などが人気。加工品以外にも海ぶどうや、時期によってマンゴーなどの果物も並ぶのだそう。
▲丁寧に商品の説明をしてくれる店長の岩谷さん。明るい笑顔が印象的だ
▲岩谷さん一番のオススメは新鮮な「海ぶどう」
▲「マンゴーちんすこう」、「もずく」も密かな人気商品!

気さくな人柄が素敵な岩谷さん。10年前に沖縄へ引っ越して来たそうだが、その理由を「人の温かさに惹かれたんです。他では薄れている人と人のコミニュケーションがここにはあるから」と教えてくれた。

~平田漬物店~創業70年以上の老舗
長年培った技術で作る絶品の漬物は買いの一品

▲スタッフの軽快な掛け声が飛び交う。お客さんの足を止める商売トークは市場の名物

周りの店舗でおじいやおばあが元気良く切り盛りする中、キレの良い接客でお客さんを楽しませる漬物店がある。公設市場ができる前から創業しているという老舗の平田漬物店だ。
▲試食もやっているので、気になる漬物があれば声をかけてみよう

「この新芽の島らっきょう、絶品だから食べてみて。塩漬け、辛味噌漬け、かつお和え、きくらげ和えはうちのオリジナルだよ」とお客さんに試食のお大盤振る舞いをするのは自らを販売隊隊長という、玉城(たまき)さん。
▲島らっきょう各種100g税込1,800円~(島らっきょうの入荷量により価格変動あり)

試食した島らっきょうの漬物は、柔らかくも歯ごたえが良く、シャキシャキ。これは本当にらっきょうなのかと驚くほど、特有の渋みや臭さがなくとても食べやすい。「おばあの代から70年以上引き継いできた味だからね。自信を持って試食をしてもらってるんだよ。一度食べてもらえばその違いは分かってもらえるもの」
お店に並ぶのは50種類以上の漬物など。和え物も販売していて、おじいやおばあの寄り合いにとても人気なのだという。次の世代、またその次の世代にもこの漬物の味が伝わっていくように、隊長である玉城さんと若手スタッフの今後の活躍にも期待したい。
新鮮食材や、沖縄ならではの加工品が目白押しな「牧志第一公設市場」は、今日も人と人との繋がりを大切にしながら那覇市民や観光客の食を支える。観光の際には是非このレトロな市場の魅力を味わいに立ち寄ってみてはいかがだろうか。
飯塚鉄平

飯塚鉄平

1980年生まれのフリーライター。ファッション雑誌「Fine」や旅行情報誌などの他、WEBメディアや企業系webサイトなどで執筆。

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