石川の風土が生み出した伝統工芸の美にふれる

2015.06.23

色鮮やかな石川県の伝統工芸品に惹かれて「石川県立伝統産業工芸館」に向かった。石川県の伝統的工芸品といえば、輪島塗や九谷焼、加賀友禅などが有名だが、ほかにもたくさんある。山中漆器、牛首紬(うしくびつむぎ)、桐工芸、七尾和ろうそく……など、現在では36業種が伝統的工芸品として国や県から指定されている。「石川県立伝統産業工芸館」は、それらが一堂に集まる場所だ。正面入口だけでなく、兼六園の敷地内にも入口があるので、園内をめぐる途中に立ち寄れるのもうれしい。

▲金沢和傘。傘の中心部に和紙を四重に張るとともに周辺部を糸で二重、三重に巻いて補強してあるので丈夫。展示されている傘は93歳の現役の傘職人が作ったもの。

伝統的工芸品を身近に感じ、毎日使いたくなる!

伝統的工芸品として、長いあいだ受け継がれているものには、日常の中で使いやすく、丈夫であることが大切だと副館長の竹中良子さんが教えてくれた。

「伝統的工芸品と聞くと、貴重なものだからとタンスの中に大切にしまったり、家の中に飾って愛でる方もいらっしゃいますが、日常の中で使ってこそ、機能性やデザイン、耐久性を実感できるものなんです。ぜひ気軽に使って、使いやすさを実感していただきたいですね」

釘に引っ掛けても反対に釘が抜けてしまうといわれるほど丈夫な「牛首紬」、薄くて丈夫な「山中漆器」、耐久性があり軽くて扱いやすい「加賀竿」など、日常の中でぜひ使ってみたい工芸品の数々に、伝統的工芸品の魅力を再発見できた。
▲第1展示室。着物、バッグ、食器、鍬(すき)、火鉢など衣食住に関する伝統的工芸品を紹介している。
▲金沢漆器の文鎮。

作り手の思いや人柄を想像してみよう

ひとつひとつの工芸品をじっくり見ていると、作り手の表情が浮かんで愛着がわいてくる。
「職人さんにお会いすると、お人柄が作品にあらわれているなぁとつくづく感じることが多いんですよ。温かさや、まっすぐなところ、繊細なところ……本当に素直に出ているんです」と竹中さん。
郷土玩具の面や人形などを見ていると、表情がなんともキュートで買って帰りたくなった。そんな感想をスタッフの方に伝えると、なんと、ほかの来場者からも、同じリクエストが多いという。
そうした声に応えて、石川県立伝統産業工芸館では、展示物の販売も行っている。伝統的工芸品を実際に使用してもらい、より身近に感じてもらいたいという、職人さんの思いでもある。
▲加賀水引細工。水引は贈り物の飾りとして主に祝事に用いられた。
▲「張子加賀だるま」(上)や「犬張子」(下)など愛らしい郷土玩具たち。子ども用の玩具だが、縁起をかついだり、誕生祝いや病気見舞いに使われるものもある。
▲第2展示室。石川県の風土に根ざした信仰や文化にかかわりの深い伝統的工芸品を紹介している。冠婚葬祭に関するもの、玩具、釣り道具、楽器、花火、祭に関するものなどが並ぶ。

伝統的工芸品作りにチャレンジ! 職人技の奥深さにふれる

「石川県立伝統産業工芸館」には、来場者が気軽に伝統工芸の技術を体験できるプログラムがある。さっそく、水引をあしらったポチ袋作りに挑戦してみた。
▲水引の基礎の結びになるという「あわじ結び」を習う。赤と白の紐がきれいに並ぶように注意しながら結んでいく。
▲中央に見える、無限大の形があわじ結び。スタッフの方の指導のもと、完成!

実際に自分で作ってみると、素材の和紙にも興味がわいたり、技の奥深さを実感したりと工芸品を身近に感じることができた。水引を使ったポチ袋は15分ほどで完成。伝統工芸の技をちょっとの時間で習得できたことがなんともうれしい。
土・日・祝の伝統工芸士による実演・体験のほかに、さまざまなワークショップも行われているので、ぜひホームページでプログラムスケジュールを確認してトライしてみよう。
▲土・日・祝のプログラムの様子。子どもから大人まで楽しめると人気。20人以上の場合には要予約(HP参照)

若い作家による斬新な作品にも注目

石川県立伝統産業工芸館ではユニークな企画展も開催している。
「九谷焼の絵付け職人にオルゴールの絵柄を描いてもらったり、『一ヶ月の朝ごはん』というテーマで、作家さんに朝食に使いたい器を並べてもらうなど、さまざまな企画展を開催しています。本館に訪れるお客さんに、伝統的工芸品の魅力を再発見していただけたらうれしいですね」(副館長 竹中良子さん)
▲企画展「静寂の森」。一見紙で作ってあるように見えるが、じつは薄い磁器のパーツを組み合わせたもの。磁器の性質や美しさを新しいかたちで表現する。作家:出和絵理 期間 2015年6月3日~7月30日

館内にずらりと並んだ伝統的工芸品を見ていると、土地それぞれの風土や文化、暮らしが見えてくる。金沢を訪れたら、まずはここに立ち寄ってみよう。石川県独自の文化を知ることで、金沢の旅がよりおもしろくなるはずだ。
▲ミュージアムショップ
▲1階のミュージアムショップではここでしか買えない工芸品がたくさん。(右手前から時計まわりに)加賀毛針のピアス(4,860円)や、加賀繍が美しい収納箱(5,940円)、作家・森岡希世子さんの白い磁器(3,456円)、輪島塗のぐい呑み(2万8,000円)。
※価格はすべて税込みです。
写真・奥田晃司
齋藤春菜

齋藤春菜

編集者、ライター。出版・編集プロダクションデコ所属。女性の美容・健康・ライフスタイルに関する書籍、雑誌を多数編集・執筆。文芸、料理、アート本の編集も行う。全国各地へと取材に訪れたさいには地元のおいしいお店を必ずチェックする。編集を担当した本に『お灸のすすめ』『瞑想のすすめ』(ともに池田書店)、『足もとのおしゃれとケア』『わたしらしさのメイク』(ともに技術評論社)、『はじめてのレコード』(DUBOOKS)、『顔望診をはじめよう』、『月の名前』、『健康半分』などがある。

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