秋の気配を感じる北志賀高原で味わう「山の実」の絶品蕎麦

2015.09.15 更新

蕎麦処として知られる長野県の山村地域では、昼夜の寒暖の差が大きく、平地が少ないなどの理由から稲作が不向きな地域があり、代わりに蕎麦や小麦などの穀物が栽培がされてきました。かつては各家庭でもお母さんが蕎麦を打つなど、昔から長野県の郷土食として親しまれています。

▲「山の実」を営む数土さん夫婦。おだやかな人柄に惹かれる

美味しい蕎麦を求めて模索した日々

北志賀高原にある蕎麦屋「山の実」は、北陸新幹線飯山駅から車で20分ほどの場所にあり、竜王スキー場ゲレンデの目の前にあります。春から秋にかけては爽やかな自然が楽しめるものの比較的静かな印象ですが、実はこの店を目指して遠方からたくさんの人が訪れる人気店なのです。
「山の実」は、スキーシーズン以外の春から秋の週末のみ店を開いて、蕎麦を提供しています。店の前には豊かな自然が広がり、車から降り立った瞬間に空気が違う!と感じる、何とも気持ちがいい場所です。
▲窓からはのどかな自然が見える。外の景色を眺めるだけで癒されるよう
富山県出身の数土哲(すど てつ)さんは、結婚を機に夫人の美保さんの実家がある長野県へ移り住みました。

「富山県は米文化だったので、蕎麦になじみが無かったんです。そのせいか、最初は蕎麦を美味しいとあまり思えなかったんです」

そういった背景から本当に美味しい蕎麦とはどういうものかが気になり、いろんな店を訪ねる中で出合ったのが「ふじおか」(長野県長野市上ケ屋)の蕎麦でした。木の実のような初めて出合う味わいや、噛むごとに広がる甘みと香りに感動し、「自分もこんな蕎麦を作りたい!」と勉強し始めるように。
哲さんが蕎麦作りで一番こだわったのは、蕎麦の実の鮮度でした。11月に収穫した蕎麦の実は、皮がついたままの玄蕎麦を真空にして冷蔵庫で保管し、使う分だけを毎朝自家製粉。そうすることで蕎麦本来の香りを逃がさずに保管できます。

「蕎麦は素材がとてもシンプルです。蕎麦粉の鮮度をいかに保つのか工夫をすることのほかに、志賀高原の山からの恵みともいえる水の美味しさが重要なんです。毎朝蕎麦の実を挽く時のフィーリングを大切に、太さや茹で加減を調節します」

数土さん夫婦は、見た目のやわらかな雰囲気から想像できないほど、蕎麦に向かう姿勢はストイックです。

「同じ日が1日も無いように、蕎麦も毎日変化します。遠方からわざわざ訪れてくださるお客様のために、いつでも最高のパフォーマンスをしたい。蕎麦と向き合う時は、今でも緊張しますね」

長野県の大地の豊かさを感じる蕎麦

数土さんご夫婦の蕎麦愛を伺ったところで、お通し、手挽きそばがき、生粉(きこ)打ち蕎麦、須賀川そばピッツァがセットになった「山の実」(2,100円・税込)をいただきましょう。
▲もちもち感がたまらない「そばがき」は、シンプルに塩で味わう
この時の「お通し」は根曲がり竹、キュウリ、ひたし豆の盛り合わせでした。丁寧に盛りつけられたお通しはどれも野菜本来の味が楽しめます。

爽やかな黄緑色をした「手挽きそばがき」は、初めて食べる人もいるのではないでしょうか? 「そばがき」は、十割の蕎麦粉と水のみを練って団子状にしたものです。山の実の「そばがき」は、弾力性のあるもっちりとした食感の中に、粗挽きの蕎麦粉がアクセントとして際立っています。岩塩を少し付けて味わえば、甘みが増して見た目の素朴さからは想像できないほど深い味わいです。
▲わずかに黄緑色をした蕎麦は、つるっとした喉ごし
いよいよ数土さん夫婦の自信作の「生粉打ちそば」です。“生粉打ち”とはつなぎを使わない十割蕎麦のことを言います。「ボソボソしている」「すぐに切れてしまう」イメージがある十割蕎麦ですが、おどろくほどにみずみずしく、味わうごとに感じる蕎麦の香りがたまりません。
▲サクサクと軽い食感で、そばとは異なる味わいに「また食べたい!」と思わせる美味しさ
最後は店入口にある石窯で焼く、蕎麦粉を生地にした「須賀川そばピッツァ」です。パリッとした食感の薄い生地に、信州味噌をベースに塗った上にチーズと野菜をトッピング。香ばしい味噌の香りが食欲をそそるピッツァは、日本酒やワインとの相性も抜群です!
▲蕎麦屋を始める前からあった石窯を活用している。お店に入った瞬間「イタリアンのお店?」とおどろく人もいるそう
全ての料理を通して感じたのは、長野県の食の魅力です。3,000m級の山々が連なる長野の大地で育まれた蕎麦や野菜、山から流れ出る豊富で清らかな水が、この「山の実」セットに凝縮されています。これから紅葉シーズンへと向かうにつれ、あたたかな色を織りなす山の景色が楽しめます。紅葉ドライブと合わせて、こだわりの蕎麦を食べに来ませんか?
くぼたかおり

くぼたかおり

エディター・ライター。長野県長野市の出版社でタウン情報誌、観光ガイドブックの編集者として経験を積み、2009年に独立。現在は長野県内外問わず観光関係の仕事を中心に、郷土、グルメ、暮らし、映画などさまざまなフィールドで活動する。2012年から11の事業者と「権堂パブリックスペースOPEN」という複合施設を作り、元呉服問屋の建物を改修。いかに心地よく共有し合いながら働けるのかを日々模索している。

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