炭火で炙った干物は絶品!下田の海辺の干物店「万宝」で旬の魚を堪能しよう

2015.06.17

伊豆・下田市に行ったら、やはり新鮮な魚介類を食べて帰りたいもの。刺身はもちろんおいしいけれど、ぜひ干物でも堪能して欲しいのです。その理由は、下田の海辺の小さな集落に、知る人ぞ知る干物の名店「ひもの万宝(まんぽう)」があるから。万宝は、干物を炭火で焼いてその場で食べることができるというユニークな店。鮮魚店から始まり、干物の製造・販売に転じたのですが、初めは現在のような形態の店ではなかったのだそうです。試食用に干物をコンロで炙って出していたところ人気を呼び、いつの間にかイートインが大評判になったのでした。

店先には店主の奥様が育てた花が咲いている

魚が大好きで始めた店だから、たくさんの人に食べてもらいたい

「子どもの頃、囲炉裏の火で焼いた魚の味が忘れられなくてね。お客さんにも同じようにおいしく味わってもらいたくて、炭火で焼くようにしたんですよ」
と、店主の平井恭一さん。魚が大好きで魚屋になったというだけあって、素材へのこだわりは人一倍。どの干物も、刺身で食べられるくらい新鮮な素材を使っています。
初めは鮮魚店だったので、魚市場のセリに参加する権利をお持ちとのこと。だから、鮮度抜群の魚はもちろん、珍しい種類の魚も仕入れることができるのです。
5人座れる大きなテーブル
▲テーブルは2つ。定員各5人なので席予約は不可

まずはショーケースから好きな干物を選びます。
季節によって変動はありますが、毎日約20種類ほどの商品が並んでいます。オススメはもちろん、旬の地もの。下田産の地キンメを使った味噌漬けもありますよ。地ものだけでなく、日本各地から選りすぐった「今おいしい魚」を干物に加工。作り置きはせず、翌日に並べる商品は前日に開いているそうです。

「二人で作っているからたくさん量は販売できないけど、出来る範囲の品揃えで、旬のおいしい魚をそろえています」

塩辛くない干物を目指したという平井さん。素材の持ち味を引き出すため、徹底的に手作りにこだわっています。天然塩を使い、「魚より前に出ない塩加減」を調整しながら、脂・甘み・おいしさを引き出すのだそうです。試作して、少しでもおいしくなければ作り直す。その厳しさの中から、究極の干物が生まれるんですね。
キンメダイとムツを焼く店主
この日は禁漁期間中(5月15日頃~9月中旬ごろまで)だったため、名物・イセエビの干物はありませんでした。残念!
下田港であがった活きのいいイセエビだけを使い、平井さんが独自に研究を重ねて、約20年前、干物への加工に成功。さまざまなメディアで取り上げられた、万宝の看板商品でもあります。冬になったら、ぜひ食べてみたい一品です。漁ができる期間でも時化(しけ)などで漁に出られない時があるので、来店前に必ず問い合わせを。
さて、好きな干物を選んだら、さっそく焼いてもらいます。この日選んだのは下田港からのキンメダイとムツ。そして駿河湾であがったメヒカリ。お店の方が焼いてくれるので不器用な人でも安心です。大きくて身が厚いので、焼きあがるのに10~15分はかかります。
「うまく焼くコツはね、遠火の強火で焼くことと、焼けてきたら何度も裏返しをしないこと。動かし過ぎると身が崩れてしまうんですよ」(息子の平井勇一さん)
炭火で焼くと、遠赤外線効果でふんわりとした身に焼きあがります。また、脂が落ちた時に出る煙が、魚の身をほどよくスモークして香ばしさを加えるのです。
干物の香ばしい匂いが鼻をくすぐる
身が崩れないように、網の間にはさんで干物を裏返します。
焼けるにしたがって、何とも言えない香ばしい匂いを放ちながら上がる煙。ほらほら、魚の脂が表面でプツプツとにぎやかな音を立てているのがわかりますか? ああ、写真だとわかりにくいですよねえ。これはもう、現地で実際に聴くしかないですよ!
干物が苦手な人もここでなら食べられると評判
▲干物以外のドリンク類やご飯はお客さん自身が持参するシステム

あまりのうまさに絶句。もう、ほかの干物は食べられなくなるかも!?

さあ、焼きあがりました!
干物に加工するのが難しいと言われる白身魚のギンムツ。箸で身をつまむと、あまり力を入れずにほぐれます。ふんわりとした口当たりと優しい塩加減、じんわりと口にひろがる上品な脂と旨みがたまりません。キンメダイにも言えるのですが、普通の干物にありがちな、塩分の強い主張がまったく気にならないのが驚きです。「丸みのある塩味」と表現したらいいのでしょうか。
メヒカリは身が厚く、脂がよく乗っていて、噛むとサラッとした舌触りの脂が流れ出します。骨まで柔らかくまるごと食べることができ、ご飯がどんどん進みます。ああ、ご飯をもう1パック買っておけば良かった!
干物がこんなに食べごたえがあって、リッチな味わいがするなんて!今まで食べてた干物って、いったい何だったんだろう……!?

干物以外の飲み物やお酒、ご飯(白飯か具なしの塩おにぎりがおすすめ)などはお客さん自身が持参します。集落にはコンビニや商店がないので、自宅から持参するか、来店途中で購入してくださいね。お店には電子レンジがあり、ご飯の温め直しができます。また、お湯も用意されているので、カップ味噌汁を持参してもOKですよ。
日本酒にぴったりのイカの塩辛
そして干物に負けないくらい人気なのが、手作りのイカの塩辛。希少なアオリイカと塩だけを使った無添加の塩辛です。手作業で薄皮まで丁寧に取り除き、おひつに似た木の樽で最低1週間は漬け込みます。毎日かき混ぜながら、木の独特な風味を塩辛に纏わせます。塩味が薄いので日持ちはしませんが、なめらかな口当たりと、舌に残る肝の苦味がたまらないほどクセになる、極上の塩辛なのです。持ち帰りもできますが、干物と同じく店内で食べることもできます。

また、干物の購入者には、持ち帰り用に発泡スチロール箱と保冷剤を無料で付けてくれるので、保冷バッグを忘れてしまっても大丈夫ですよ。
平井恭一さん・勇一さん親子
▲店主の平井恭一さん(右)と、息子の勇一さん(左)

万宝の人気の秘訣は、干物のおいしさもさることながら、まるで実家に帰って来たような、家庭的なあたたかさで迎えてくれるところでしょう。「本当においしいものを食べてもらいたい」「楽しんで帰ってもらいたい」という万宝スタッフのみなさんの心遣いが、店のそこかしこに感じられました。
小林ノリコ

小林ノリコ

移動文筆家/伊豆在住フリーランス・ライター。東京・南青山の編集プロダクション勤務を経て2005年からフリーランスとなり、2015年より静岡県熱海市を拠点に執筆活動を開始。「ふらりと出かける、ゆる伊豆」をテーマに、地域の宝を再発見する取材活動と、伊豆地域を拠点に活動するフリーランス・クリエイターのネットワーク作りを行っている。

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