島の恵みをまるごと!隠岐の島宿「但馬屋」へ

2016.05.14 更新

島根県の離島・中之島「海士町(あまちょう)」の島宿「但馬屋(たじまや)」で提供されるピチピチのアワビや鯛、味わい深い米や卵、鮮やかな野菜は、海士町の自然が育んだものばかり。島の恵みをまるごと味わうことができる宿「但馬屋」を訪れました。

大事なことはすべてここにある「海士町」

島根県の隠岐諸島にある中ノ島「海士町」。本土から60km離れ、面積53平方キロメートルに2,000人余が住む島のあちこちに掲げられている言葉が「ないものはない」。 “大事なことはすべてここにある”という意味を持ちます。
▲豊富な湧き水のおかげで、広々とした田園風景が広がっている

離島にある「海士町」は、買い物をするにも小さな個人商店しかありません。しかし、対馬暖流の影響を受けた豊かな海と、名水百選に選ばれた豊富な湧水によって、魚や野菜、米も育っていれば、1,200頭の「隠岐牛」もいる。様々な業種の専門の小売店があり、生活する上で必要なものは島の中で全て揃うのです。
▲自然の中でのびのびと育つ「隠岐牛」
▲美しい海から四季折々の魚が次々と揚がる

そんな「ないものはない」が凝縮されているのが今回訪れる島宿「但馬屋」。
▲食事処や客室は実家に帰ったような落ち着きがあり、水回りも綺麗で快適です

「自分達が美味しいと感じたものを出したいと思うから、できるだけ自分達でとったり育てたりして提供しています」と、但馬屋の初代・宇野千枝子さんは話します。

自らとり、育て、すべての食材が手に入る

千枝子さんの娘さんの旦那さんで2代目の宇野暁(さとし)さんが、宿で提供する食材の調達に行くと聞き、同行させてもらいました。まずは海へ。
▲夕食に使う食材を捕りに行く2代目の宇野暁さん。気さくに話してくれる
▲「但馬屋」の漁場。アワビにサザエ、鯛やワカメなど、旬の魚介類を自ら捕る

バサッと海から取り出した生簀を開けると、中には大量のアワビが!「全てお義父さんや僕が船上から箱メガネで海底を覗いて、ヤスで突いて捕ったんですよ」と暁さん。高級で滅多に口にできない天然アワビがたくさん捕れるとはすごい。暁さんが持ち上げると元気にうねうねっと動きます。

「12~3月はアワビをメインに出しています。4月からは鯛やワカメ、あとヒラマサ、6月になったらアコウ(ハタの仲間)ですね」と暁さん。

いいなぁ。何度も通って全部食べてみたい。
▲海から揚がったばかりのアワビ。大きくて肉厚!

帰り道は、道中に流れる小川のほとりで野草を採取。「これがセリで、こっちがクレソン」と暁さんが教えてくれました。これも食事に出すそう。
▲小川のほとりに生息するクレソン。この日は他にセリやフキノトウを採取

また、「但馬屋」の裏には自家菜園と養鶏所があります。鶏を育てる目的は「卵」。10年以上前に鶏を飼いだし、産みたての卵の美味しさに惚れ込んで養鶏を続け、今では、50羽弱の鶏を飼い、産みたての卵を食事に出しています。
▲鶏に餌をやる3代目の宇野由華さん
▲卵は割ると、まるでスローモーションのように黄身がゆっくりと落ちていき、箸で混ぜてもなかなか崩れない弾力

少しの時間でしたが、暁さんと海士町を巡ってみて、美しく広がる自然が、海士町の美味しさを生み出しているのだと実感しました。

家族3世代でおもてなし

これらの食材を育てているほか、調理をするのも、そして宿の準備をするのも、宇野さんご一家。仲の良い3世代の夫婦が力を合わせ、旅人をもてなします。
▲宇野さんご一家。縦並びで左が2代目夫婦、真中が次代を担う3代目夫婦、一番右が但馬屋を創業した1代目夫婦

持ち帰ったとれたて食材を2代目と3代目の夫婦で料理します。この日は1代目の茂美(しげよし)さんがその日に捕ったばかりという大きな鯛を捌き、身をとった後の骨も出汁にし、まるごと活かしていました。
▲朝、捕ったばかりの天然の鯛。大きい!「但馬屋」ではその日に捕れた魚で料理が決まる
▲魚の鮮度を保つように、素早く綺麗に盛り付けていく

続いて、2代目の暁さんと3代目の拓巳さんが作った板のりを火であぶり、醤油をつけておにぎりを包みます。このお米も家族みんなで育てたもの。「稲を刈ったら天日で干しています。コンバインは使いません。手間がかかってでも、干した方が甘みが増して美味しいんですよ」と1代目千枝子さんはにっこり。
▲「おむすびころりん」に出てきそうな、まんまるなおにぎりの形が愛くるしい

海士町の実りが食卓に勢揃い!

夕食の時間、宿泊者全員でいただく「但馬屋」の食卓には海士町の実り溢れる料理がずらりと並びました。この日の料理は、左から時計周りに、サザエのバター炒め、鯛とイサキ、アジとアワビの刺身、サラダ。一番右が鯛の酒蒸しのセリ添え、中央がフキノトウのてんぷら、一番下がメカブの酢の物。後ほど他に海苔のおにぎり、お澄ましも出てきました。
▲海士町をまるごと堪能できる夕食の一例(2016年3月撮影)
▲鯛の酒蒸しのセリ添え。品のある鯛の味わいに、爽やかなセリの香りが添えられる
▲フキノトウのてんぷら。サクサクで大地の香りが広がる味!
▲サザエのバター炒め。サザエは磯の香りがとっても豊か!

なんて贅沢な食材だろう。盛り付けも美しく、もてなしの気持ちや、食材を大切にする気持ちが伝わりました。

食事処での夕食中、2代目で女将の貴恵(よしえ)さんが食事処に来て「きよが機おりゃキンニャモニャ♪」としゃもじを持って踊り始めました。海士町発祥の隠岐民謡「キンニャモニャ」です。

「キンニャモニャ」は、元々酒を交わす食事の場で男たちがふいに民謡を歌いだし、食事の世話をする女性たちが料理道具を持ったまま踊り出す、という習慣から始まったもの。陽気な音頭に食事の場がさらに和み、初めて会った人同士でも会話が弾みました。
▲「キンニャモニャ」を踊る「但馬屋」の2代目女将の貴恵(よしえ)さん

「生きているうえで、必要なものがここにはあります。多種多様なものが雑多にあふれているより、必要なものがシンプルに揃っている方が良いなって思うんです。『ないものはない』という言葉はやっぱり海士町にぴったりですね」と貴恵さん。

翌日、島を離れる時、目の前に広がる海士町の景色は、昨日より一段と豊かに映りました。また来よう。美しい自然と、豊かな味わいの食材、そしてあったかい宇野さんご一家に会いに、帰ってこよう。
黒島慶子

黒島慶子

醤油とオリーブオイルのソムリエ&Webとグラフィックのデザイナー。小豆島の醤油のまちに生まれ、蔵人たちと共に育つ。20歳のときに体温が伝わる醤油を造る職人に惚れ込み、小豆島を拠点に全国の蔵人を訪ね続けては、さまざまな人やコトを結びつけ続けている。 (編集/株式会社くらしさ)

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