私の京都朝観光~京都人が勧めるとっておきの朝~ 鴨川 有斐斎弘道館 館長 濱崎加奈子さん

濱崎加奈子さん

濱崎加奈子(KANAKO HAMASAKI)

兵庫県出身。京都大学文学部(美学美術史学)卒業。東京大学大学院博士課程修了。学術博士。公益財団法人有斐斎弘道館の代表理事であり、伝統文化プロデュース連を主宰。また、専修大学文学部准教授、北野天満宮和歌撰者、京都観光おもてなし大使など、多方面で活躍。著書「ふろしき(PIE INTERNATIONAL)」「京菓子と琳派(淡交社)」

茶室という空間から体で感じ学ぶ
美しくも知恵ある文化を伝える

 江戸時代、京都を代表する儒者・皆川淇園。京都御所の西側に「弘道館」を開いたとされ、私立大学の先駆といわれる学問所だった。二百余年を経て、今、同敷地に日本の伝統文化を学べる「有斐斎弘道館」がある。その館長、濱崎加奈子さんに話を聞く。
 「そもそも学問所敷地跡に建てられていた素晴らしい数寄屋建築を、7年ほど前に取り壊されないよう、守ったことがきっかけです。例えば、最近減ってきている露地庭や炉のある茶室がありますが、これらは今ふたたび建てようとしても難しいと言われています。ただ、いろいろなところに傷みがあり、庭はジャングルのようでした(笑)。庭を再生させるために石を動かし、樹を伐り草引きをして、今は良い庭になりました。庭の手入れをしていると先人の美意識に頭が下がります。来られる方は、庭を見ていると不思議と心が落ち着くといいます。日本家屋は、不便かもしれないけれど、木と土と草でできている空間は、なぜかほっとするとか、床の間があることで美意識を培う豊かさに繋がったりします。床の間は現代的に言えばスペース的には無駄かもしれません。でもそれ以上の、他では得られないものがあるからこそ、今に伝えられてきたと思うのです。
 有斐斎弘道館ではさまざまな伝統文化を、それらのつながりを意識しながらご紹介していますが、中でもお茶は、もともと生活の中にあって、体や心で感じとることが多い、いわば芸術。今の世の中は文字で書いたり、理論的に説明しないと納得してもらえないことが多いのですが、文字で書き表せないからこそ、芸術として伝えられているのだと思います。そこから学ぶべきことがたくさんあります。例えば、お茶から学ぶべきことは、ものを大事にしましょう、相手のことを考えましょう、感謝しましょうということなど。他にも、お茶には効率的に段取りを考えたり、相手に伝えたりするための知恵が、詰まっています。だから、昔から経営者や政治家がお茶を嗜んできたんですね。永く伝えられてきた型や形が、おのずとメッセージを発している。そんな空間は、一筋縄で作り上げられたものではありません。一旦壊すと元に戻らない。これも、一期一会。そんな瞬間の連続が、伝統文化を作ってきたのではないでしょうか。」

鴨川 濱崎加奈子さん

京の日常の風景を見る鴨川の朝
お菓子を食べながらのんびりも!

 神戸市出身という濱崎さんは、京都大学に通い住むことで、京都の素晴らしさを実感したと話す。「とくにオススメしたいのは、鴨川の朝散歩です。学生の頃は良く鴨川で読書をしたり、友人たちとランチをしながら様々なことを語らっていました。とりわけ朝は気持ちの良いものでした。京の街なかの楽しさもありますが、自然の美しさが感じられる川辺の風景は素敵です。鴨川は、桟敷ケ岳付近を源とし、桂川の合流点に至るまで京都市内の南北約33kmに渡り流れていますが、高野川と賀茂川が合流する鴨川三角州、通称「デルタ」と呼ばれる場所のように、くつろげるスペースもあります。昨年下鴨神社で550年ぶりの再興を果たした「糺勧進能」も、この河原での開放的な感じを実感していたからこそ生み出されたアイディアでした。
 そんな鴨川の朝は、そこにいるだけで京都の日常の風景が見えてくるところ。旅人にとっては貴重なスポットと言えるかもしれません。観光するというよりは、観光の合間に一息つくところと思えば良いと思いますし、移動手段として川沿いを歩くのも良いかもしれません。五条から北大路、北山と鴨川は、名前や表記が変わりますが北から南へと続きますから。風景を見ながら歩くと案外早いものです。 鴨川を通って京都の千年の歴史へと思いを馳せてみてはいかがでしょうか。
 京都といえば京菓子の存在を忘れてはいけません。実はおなじお菓子屋さんに見えて、上菓子屋さんと餅やさんとでは明確に違っています。いずれも京都にとって大事な存在です。この鴨川デルタ辺りも例にもれず、上菓子屋さんも餅やさんもたくさんあります。早朝あいているのは餅やさんが多いかもしれません。豆餅で知られる出町ふたば(8時30分~)、加茂みたらし茶屋(9時30分~)、ゑびす屋加兵衛(9時~)も良いですが、私のお気に入りは、大黒屋鎌餅本舗(8時30分~)です。上菓子屋でもある大黒屋さんは、当代で3代目となる老舗。もと街道の代表的な入口である京の七口の一つ「鞍馬口」にあった茶店で、旅人や地元農家の人々に供されて評判だったお餅を初代が復活させた「鎌餅(1個216円)」が、素朴でとても上品な味わい。甘いものが苦手な方もペロリと食べられるのだそうです。  

濱崎加奈子さん

知識を持つことで面白くなる観光
学ぶほど好きになる京都という街

 濱崎さんは、京都の観光について「何事にでもそうですが、ちょっと知るだけでかなり見方が変わってきます。深く知ることで最初は興味がなかったこともどんどん面白くなる。京都は、平安時代から室町時代、江戸時代、明治時代と、各時代の変遷を身近く見ることができますから、まるでバーチャル教室。各時代の履歴が残っているところが他の都市にはない凄いところ。でも知識がないと、その面白さもわからないんですよね。京都観光は、少しでも調べてからそこへ行く。あるいは行ってからでも調べてみる。そして現場では思い切り想像力をはたらかせて観光をする。そうしていると、自分だけの京都のスポットが見つかると思います。」と話す。

鴨川エリア 概要DATA

  • 鴨川三角州(鴨川デルタ)

    鴨川三角州(鴨川デルタ)

    京都市左京区下鴨宮河町
    京阪・叡山電車出町柳駅からすぐ、市バス出町柳駅前からすぐ

  • 大黒屋鎌餅本舗

    大黒屋鎌餅本舗

    075-231-1495
    京都市上京区阿弥陀寺前町25
    市バス葵橋西詰から徒歩8分
    時間/8:30~19:00
    休み/第2・4水曜日

濱崎さんおすすめの「鴨川」朝観光ルート

  • 1市バス 葵橋西詰
  • 2大黒屋鎌餅本舗
  • 3鴨川デルタ
  • 4下鴨神社(賀茂御祖神社)
  • 5市バス 出町柳駅前
下鴨神社(賀茂御祖神社)
075-781-0010
京都市左京区下鴨泉川町59
時間/境内自由、6:00~17:30(季節により変更あり) 休み/無休
料金/500円(大炊殿拝観10:00~16:00)

このページのトップへ戻る