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B級グルメコラム

野瀬泰申のたべたび (食べたB)

B-1グランプリを主催する団体、愛Bリーグの顧問としても活躍する筆者による、ひと味もふた味も違う「B級ご当地グルメ」の旅コラム。全国津々浦々のディープなグルメたちを独自の視点で紹介していきます!

野瀬泰申(のせ・やすのぶ)

「B-1グランプリ」の主催団体「一般社団法人B級ご当地グルメでまちおこし団体連絡協議会」(愛Bリーグ)顧問。日本経済新聞特別編集委員。著書に『全日本「食の方言」地図』『眼で食べる日本人』『天ぷらにソースをかけますか?』など。現在、日経電子版で「列島あちこち 食べるぞ! B級グルメ」(食べB)を連載中。

Vol.32(仙台市)森は海の恋人

仙台駅で昼間に立ち食いの寿司を食べ、その夜は宴会だったが酒ばかりのんでホテルのベッドに倒れ込んだ。

朝起きてみると、前夜何も口にしなかったせいでお腹が空いている。ホテルの朝食会場をのぞくと、立派な和洋の料理が並んでいた。

ホテルの朝食は当たり外れが大きい。見た目は似ていても中に手抜き料理や業務用をチンしただけのが混じっていることもあるので、気が抜けない。

しかしその朝は安心だった。サラダを見ればすぐわかる。キャベツの千切りがなく、レタスやトマトやブロッコリーやキュウリなどが彩りよく並んでいて、ドレッシングも手づくりらしい。このようなサラダを出すホテルは手抜きがない。

グレープフルーツジュースをコップに注ぎ、ベーコンとラザニアを皿に移す。できたばかりと思われるスクランブルエッグも少々いただこうか。クロワッサンと食パン半分。これに大盛りのサラダとフルーツ、牛乳が加わって栄養バランスはOKである。

その朝は仙台港に用事があった。仙石線に乗って中野栄駅で下車。そこから歩いて港に向かったのだが、日曜のせいだろうか港近くに人影は絶えてなく、雪が残った道路に自分の足音だけが暗く響く。

街中は震災の傷痕も見あたらず、人があふれて「復興特需」などという言葉も聞こえるが、少し海の方に行くと津波に襲われた公共施設が閉鎖されたまま寒風にさらされている。

私が仙台にいる間、日本三景のひとつ松島で「復興かき祭り」が行われ、天橋立や宮島からも殻ガキが寄せられて振る舞いの鍋などを食べられることは知っていた。しかしながら行く時間がない。とぼとぼと仙台駅に戻ってきた。

宮城のカキについては思い出がある。県の北東端の唐桑半島でカキの養殖業を営む畠山重篤さんに会いに行ったのは、もう何年前のことだったろうか。いまでこそ有名になったが、私が出かけたのは畠山さんたち海に生きる人々が、海をはぐくむ森を守るため植樹運動を始めて間もないころだった。

畠山さんの養殖場を前に、白ワインで生ガキを食べながら話を聞いた。

「森は海の恋人」を合い言葉にした運動は大きな広がりを見せ、畠山さんはエッセイストとなり大学の教授にもなった。

しかしあの大津波で養殖場は壊滅的な被害を受けた。いまはかなり復旧が進んでいるらしいが、元の姿に戻ったわけではない。

宮城のカキを食べたいと思った。仙台駅ビルの数ある飲食店を巡ってみるといくつかの店でカキフライを出している。しかしどこ産のカキとは書いていない。

ふと手打ちそばの店が目に入った。店の外のメニューを見たら「せんべい汁そば」というのがあった。八戸のせんべい汁は仙台まで浸透して、そばの世界にも取り込まれている。

「ネタとして食べてみようか」と考えないでもなかったが、やめておこう。

と思ったとき「かきそば」という文字を見つけ、そのまま客となった。


そばを食べながら唐桑のカキを思う

大粒のカキとネギだけが入った温かいそば。この際、宮城産かどうかは問うまい。産地が甚大な被害を受けたのであるから、宮城産を望むのは無理というものであろう。

唐桑のカキを思いながら、黙ってそばをすすった。

新幹線が出るまでの時間、お土産屋などをのぞいて過ごしていたら「復興定食」というセットに出くわした。

チンするご飯にレトルトのサンマかサバの煮物。それにインスタントの味噌汁がついている。およそ旅先の土産としてはふさわしくないような組み合わせであるが、震災後だからこそ意味がある。


復興定食。420円

ご飯も煮魚も味噌汁も、メーカーはすべて被災地の会社。買わないわけにはいくまい。

仙台であった石巻の友人に尋ねてみた。

「刺し身は普通に食べられるようになった?」

「食べられるよ」

震災から三カ月後に訪れた石巻の居酒屋では揚げ物しか出なかった。いまは目の前の海で獲れた魚を食べることができるのだという。

いったん東京に帰って、私は被災地への旅の準備に取りかかった。被災地で被災者とともに何かを食べるために。

⇒次回に続く

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