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B級グルメコラム

野瀬泰申のたべたび (食べたB)

B-1グランプリを主催する団体、愛Bリーグの顧問としても活躍する筆者による、ひと味もふた味も違う「B級ご当地グルメ」の旅コラム。全国津々浦々のディープなグルメたちを独自の視点で紹介していきます!

野瀬泰申(のせ・やすのぶ)

「B-1グランプリ」の主催団体「一般社団法人B級ご当地グルメでまちおこし団体連絡協議会」(愛Bリーグ)顧問。日本経済新聞特別編集委員。著書に『全日本「食の方言」地図』『眼で食べる日本人』『天ぷらにソースをかけますか?』など。現在、日経電子版で「列島あちこち 食べるぞ! B級グルメ」(食べB)を連載中。

Vol.33(大分県日田市)日田の焼きそば

大分県の日田市に行く機会があった。ふるさとの久留米で前泊し豆津橋渡さんの車で向かう。道は久留米と大分を結ぶJR久大線に沿っている。

私たちが走った道路は旧豊後街道の宿場町、吉井の古い町並みを通る。私が久留米に住んでいたころは吉井町といったが、いまは合併してうきは市になった。

近くに住んでいながら一度も訪ねることがなかった吉井は、白壁の家々が軒を連ねる重厚なたたずまいを守っていた。一帯は常用伝統的建造物郡保存地区に指定されている。

車窓を流れ去る町並みを見ながら、さらに東へ。筑後川の水を受ける夜明ダムを遠くに望む位置までくると日田の市街は目の前である。

下流で筑後川と名前が変わる三隅(みくま)川が豊かな水をたたえている。そのほとりに何軒かの温泉旅館が建っている。川と日田駅を結ぶ道路の歩道には石が敷き詰められ、街路樹が美しい。

ちょうどお昼時。私たちは「三隅飯店」という店に入った。ここはラーメン主体の店である。なのに鉄板がある。

日田のラーメン店にはどこも昔から鉄板があった。焼きそばを調理するためである。青森県の焼きそばは、基本的に中華鍋かフライパンで調理するが、日田は鉄板。

この店は人気店で、私たちが入ったときはすでにほぼ満員。客が出て行くと新たな客ですぐに空席が埋まる。そして客の大半は焼きそばを注文する。私たちも焼きそばを食べるのが目的だった。

店の主人、吉田明彦さんは、まちおこし団体「日田焼きそば研究会」の会長を努める。昨年秋のB-1グランプリin姫路に初出展したので、面識があった。

「どーも」

「こんちわ」

と声を交わして焼きそばと高菜チャーハンを頼んだ。厨房の隅のガラスで仕切られた場所で吉田さんが焼きそばを焼いている。ガラス越しに見ようとしたら、吉田さんが手招きした。お言葉に甘えて厨房の中に入る。

鉄板にラードを置く。溶けて鉄板に広がったラードの上に、熱湯に通した麺を均一に広げる。円盤状に広がった麺の中央に豚肉が固まっている。

普通ならここでコテを使って炒めるところだが、日田ではそうしない。じっと待つのである。焼くというよりラードで揚げるといった方が正しい。


ラードで焦げ目をつける(裏返したところ)

麺の下に少し焦げ目がついたころを見計らって裏返す。そこに大量のモヤシとネギがばらまかれた。そのモヤシの量の多さに目を見張る。

この段階でソースが加わる。コテの隅の尖ったところをうまく使って、切るように混ぜて炒める。

こうしてできあがった焼きそばに、とんこつラーメンのスープが添えられて出てきた。

食べてみる。麺の焦げたところが香ばしい。しかしソースを吸って硬くはない。モチモチとした食感になっている。


焼きそばにはラーメンスープがついてきた

大量のモヤシはシャキシャキ感を残して、麺と同格の戦い。口の中で麺のモチとモヤシのシャキが合唱する。他のどこにもない日田の焼きそば。

大量のモヤシが活躍する焼きそばというと福島県浪江町のそれを思い浮かべるが、あちらの麺はうどん並の太さ。そしてラードで揚げないから、だいぶ違う。

一緒に注文した高菜チャーハンはドーンと大盛りで、珍しいことにかつお節がかかっていた。高菜と青ネギがしっかりと入っていて、チリメンジャコと言うよりも小さな煮干し(いりこ)と呼ぶのがふさわしいような小魚が、味のアクセントになっている。

隣の客が頼んだ焼きそばセットにはご飯が添えられている。店の人が教えている。

「ご飯をスプーンにのせて、スープに浸して食べると美味しいですよ」

そうなのだ。とんこつスープに浸した白いご飯は、九州人の魂を揺さぶるのである。

⇒次回に続く

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